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CYCLINGTIME.com

2013/2/2 3:56

confession for a life

自転車暗黒時代、時代に呑まれた男の人生の再出発 〜 全てを失い、悔み後悔しながら真実を語り、ようやく心穏やかな日常を取り戻した元山岳王ラスムッセン、そしてラボバンクの疑惑深まる


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ツール・ド・フランス2007、第16ステージで勝利をあげマイヨ・ジョーヌを獲得したミカエル・ラスムッセンのあの姿は今でも脳裏に焼き付いている。2005、2006と2年連続で山岳賞を獲得し、総合は時間の問題と言われていた男の勇姿は世界中の自転車ファンに新たなヒーローの誕生を印象づけた。

しかしこの僅か1時間後、ラスムッセンは大きな謎を残したままツールを去ることとなった。所在地の虚偽報告、それが突然ラスムッセンを解雇したチームの言い分だった。そしてその後すぐにラスムッセンはチームにより半ば強制的に国外退去させられたのだ。余りにも唐突なすべての出来事に、何かがおかしいと思った人は少なくなかったのではないだろうか。通常ドーピング検査に引っかかったとしても、Bサンプルの検査が終わるまでは解雇にはならず、通常は最終的な結果を受けてようやく解雇になるのだ。ところがドーピング検査でもない所在地の虚偽報告という理由での即解雇、これにはなにか裏があると当時も囁かれたのだ。


『”ようやく自分の人生を取り戻せる”』
最近になり、裁判の中で当時ラスムッセンが所属していたラボバンク陣営が、虚偽報告の件を知っていて隠していたことが暴露された。当初はおそらくラスムッセンをよく思わない人間による内部からのリークがあったのだろうと思われていた。そしてその追及の手が自らに振りかかる前にチームはトカゲの尻尾切りをしたのだろう、と思われていた。

しかしラスムッセンの告白で、今回の一件は大きなターニングポイントを迎えるかもしれない。今回ラスムッセンは現役中の12年間、あらゆるドーピングをしてきたことを告白した。またラボバンクは多くの選手やチーム関係者の証言から、チームドクター、そしてチームぐるみでのドーピングが行われてきたことが明らかになってきている。そしてドーピングに対して世間の目が厳しくなり、事実が次々と発覚するこのタイミングでの突然のスポンサー撤退には、多くの人が何か違和感を感じた。

『偽りの栄光を通り過ぎる悲しげな背中』
これらのことから推測できるのが、2007年の真相だ。当時ラスムッセンは一度もドーピングに引っかかったことがなかったが、マイヨ・ジョーヌ獲得となれば詳細な検査が入ることになり、ドーピング問題が発覚しかねない。マイヨ・ジョーヌを獲得したエースがドーピングとなれば、当然のことながらチームぐるみではないかと疑われるのは必死だ。それならば別の理由で首を切り、ドーピング疑惑の目がチームに向く前に、追及のメスが入る前に切り捨ててしまえという判断を首脳陣がしたと考えれば筋が通るのではないだろうか。

「ようやく自分の中に平穏を取り戻せた。」「もう誰にも嘘をつかなくていいんだ。」そう語るラスムッセンには、現役時代がどれだけ苦痛であったかが伺える。嘘をついてまで手にした勝利、そして地位と名声、そしてスケープゴートにされてもなお嘘をつき続けなければならなかった背景、そんなしがらみからようやく 自由になり、”普通の人”に戻れるのだと安堵するラスムッセンの背中はとても小さかった。 デンマーク当局が捜査中の案件のため、詳細は公表できないとされたが、今後様々な事実が表沙汰になることが予測される。そこには12年間にも及ぶドーピング人生の中で、検査に一度も引っかからなったというラボバンクの組織的ドーピングの巧妙さ、そしてザルであったUCI のドーピングテストとコントロール、もしくは隠蔽体質や裏取引なども含まれているかもしれない。

ドーピングが日常化していた自転車界と、それを黙認し隠蔽してきたUCI、そろそろ全てを清算し、次世代のためにもクリーンな自転車界を再構築するのに全力を尽くす時期に来ているのだろう。ラスムッセンも全面的に捜査への協力意思を示しており、これからまだまだ新たな真実が表面化していく可能性は高い。すべての膿を出し切らない限り、傷口はまた化膿してしまう。ドーピングでぼろぼろになった自転車界には、自然治癒に任せられるほどの免疫力も時間的余裕も残っていないだろう。

H.Morine
SRM

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