No.16 「女性専用車両」拡大への異論
JR西日本では4月18日から、それまで曜日・時間帯が限定されていた女性専用車両が全日・終日化された。
私が通勤に利用している阪和線でいえば、これまでは平日は午前9時以降や土日は専用車両でなくなっていたのが、365日とも終日、男性である私は、女性専用車両と指定された車両に乗れなくなったのである。
これまでも、一般の車両は混み合っているのに、女性専用車両では空席が目立ったり、そこでバッグ等を隣に置いて化粧にいそしんでいる女性を見たりすると、とても不愉快な気分になった。
また、間違って乗ってしまったときに、まるで男性であることが悪いことであるかのようにジロジロ見られるときの、あのバツの悪さ、不愉快さは言葉で表現しがたい。
私の、この不愉快さは、法的保護に値しないのであろうか。
例えば、女性は補助的労働しかできないと言って差別することと、本質的に同じではないか。
憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と定めている。男性であるという理由のみで、公共交通機関の利用が一部制約されることが、「性別による差別」に当たることは明らかである。
あくまで「任意」の「ご協力」だから問題ない、というのが建前かもしれない。
しかし、そのような「協力」を、公共交通機関の運営者が積極的に奨励するのは、やはり憲法違反(公序良俗違反)の問題がある。例えば、「外国人の皆さんは犯罪を犯す可能性があるので、この施設への立ち入りはご遠慮ください」とアナウンスしたり、看板に「日本人専用施設」とすることが問題ないかを考えてみればわかる。
もっとも、憲法学上、差別であっても合理的根拠がある場合は許されるとされている。
では、女性専用車両なるものを設ける理由は何だろうか。それは混雑する車両での痴漢行為から被害女性を守るためであり、それ以外にはないというのが私の認識である(間違っていれば教えてほしい。)。
確かに、満員電車の中で痴漢被害が発生しやすいことは事実であり、そのために女性専用車両を設けることが「有効」であることは否定しない。
しかし、①本来痴漢行為は立派な犯罪であり、その防止は、基本的には、駅当局・警察による取締りや、乗客に対する教育・啓発によるべきものであり(それらは今も行われている。)、およそすべての男性を、特定の車両に乗せないことは、手段として「やり過ぎ」である(上記の例でいえば、外国人犯罪が増えているとして、外国人全部を特定の施設に入れないというのと同じである。)。
②また、この制度は、男性という性が、女性という性に対して一般的に加害的・侵害的であるという前提に立っており、その意味で「人間不信の制度」である。
しかし、およそすべての男性に痴漢の危険性があるわけではないし、およそすべての女性が痴漢に会う危険性があるわけでもない。
また、痴漢被害は、厳密に言えば加害者が男性、被害者が女性というパターンばかりとは限らない。例えば少年に対して成人男性が痴漢をするようなケースも、少ないが存在するのである。
さらに、一見すると男性か女性かわからない人もいるし(それはその人の個性だろう。)、いわゆる性同一性障害の人もいる。そのような人たちにも外形による振り分けを強制することになるのである。
お母さんと男子中学生、老年のご夫婦などは、別々の車両に乗るか、お母さんや奥さんが普通車両に乗らざるをえないことになるのも、説明がつかない。
③男女平等の見地からは、女性専用車両を作る以上、同数の男性専用車両も作るべきである。なぜなら、女性はどの車両にも乗れるのに対し、男性は女性専用車両には乗れないから、男性乗客は一般的に女性乗客よりも混み合った車両に乗ることを強制されることになるからである。
もっとも、男性客が女性客よりもかなり多いのであれば、女性専用車両を設けても男性が不利になるわけではないが、そのような統計は聞かないし、少なくとも大阪では、乗客数に男女差がさほどあるとは思えない。
男性だけがそのような混雑率の差異を受忍すべき根拠はないし、他方で、男性専用車両を作ることが不合理とはいえない。
男性の中にも、男性専用車両なんてイヤだという人もいるかもしれないが、痴漢に疑われたくないとか、女性の香水のにおいがイヤだとか、空いているならそちらの方がいいという人もいるだろう。いろんな考えや選択の人がいるのは、男性でも同じなのである。
男性専用車両を作ると、女性は男性専用車両に乗ってはならないという不便を余儀なくされるが、それは現在男性が既に受けている、女性専用車両に乗れない不便と同じであって、「お互い様」なのである。
④さらに、この制度は、男女の相互理解や「共生」の理念に反し、男性と女性の間の表面的・皮相的な対立と憎悪を助長し(「男なんてみんな同じ」とか「女はわがままだ」など)、本当の男女平等の浸透につながらないと思う。
子どもたちへの教育という点からもよくない。男の子は、13歳になると、「自分は女性にとって「危険」と見なされているから、女性専用車両に乗ってはいけない」と自分で納得しないといけないのである。人間社会には男性と女性しかいないのだから、本来「共生」が基本であって、「隔離」や「排除」が基本であってよいはずがない。
このように考えてくると、仮に女性専用車両を設けるとしても、それは必要最小限度にとどめられるべきであり、具体的には、乗客の男女比率や、痴漢被害の動向などを統計的に分析したうえで、痴漢被害の防止に必要最小限と認められる程度の混雑がある路線と時間帯に、限定されるべきである。そして、その場合も、同数の男性専用車両を設けるべきだというのが、私の意見である。
ただし、「女性」に限定するのではなく、「女性・高齢者・障がい者」の専用車両にすれば、社会的共感が得られやすいと思う。
いずれにせよ、今回JR西日本が、混雑もしていない路線・時間帯・曜日まで常時女性専用車両を作るというのは、明らかに間違っている。
女性差別や障害者差別もそうだが、差別というのは、それを受けている人が声をあげないと、なかなか改善されない。
だから、不愉快に感じる男性は、「男らしく」黙って耐えるのではなく、声をあげるべきである。
それを受けて、女性専用車両を疑問に感じている女性も声を出してほしいと思う。心ある女性であれば、女性だけがゆったりと座れることに、多少とも後ろめたさを感じているのではないか。そのわずかな後ろめたさに目をつぶることが、差別を温存するのではないかと思うのである。
また、「あくまで「任意」の「協力」のはずだから従わない」として、強引に乗り込む男性もいるかもしれない。
そこまでしなくても、という人も多いと思うが、もともと強制ではない以上、少数者の主張や行動を尊重するのが民主主義である。そういう人は痴漢などしないはずだ。白眼視するのではなく、柔軟に受け入れる社会こそが、望ましいのではないか。
「女性専用車両は憲法違反だ」という訴訟でも起これば、面白いかもしれない。
しかし、今の裁判所では、「あくまで任意のもので、従うことは義務ではないから、問題はない」と判断する可能性が高いと思われる。
そんな点だけは「ものわかりがいい」のが、現在の裁判所である。
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岩城様、はじめまして。
>しかし、今の裁判所では、「あくまで任意のもので、従うことは義務ではないから、問題はない」と判断する可能性が高いと思われる。
まさにその通りで、以前大阪市交通局を相手取って「女性専用車両は違憲だ」という裁判を起こした人がいました。
それに対する判決が「痴漢対策としてなら妥当な理由」「既に多くの鉄道事業者で女性専用車両が実施されている」といったことと並んで「任意の協力を求めているものであって、強制的に排除しているわけではないから、適法」といったものでした。この方は最高裁まで争ったようですが、万事この調子でした。つまり「いわゆる『白黒バス』のような強制排除を行っているわけではなく、あくまで『本人の意思』に任せているのだから、本人の自由意思に任せていることに差別的要素はない。」ということなのです。
けれども実際問題として、利用者サイドが「専用車は任意だから、ここは進んで協力しよう。」「あそこで一般車両に乗っている男性は、わざわざ専用車に協力をしてくれる善意の人だ。」という認識を持つことはありません。どう見ても鉄道事業者が権限を行使して男性排除活動をやっているようにしか認識できないのです。
これだけ「鉄道事業者による男性への強制排除」が流布してしまうと、多くの人(男女問わず)が「男性というものがそれだけ不安因子・危険因子になっているから」という誤った解釈をしてしまいます。私はそれこそが女性専用車両が生んでいる差別であると考えています。
投稿: Red Bear | 2011年4月24日 (日) 18時50分
難しいことですよね。
私は女性車両に滅多に乗る機会がないのですが、
前職の折には一番混雑する御堂筋線が通勤車両でした。
その事務所に赴く折に“ちかん?”に合いました。
手で触られていないのですが、一度乗れば百年目、詰め込まれた
車内ではカバンの位置さえ押し込まれたままの状態です。
顔の身動きも取れないまま後ろのおっちゃんが発情したらしく
(私のお尻の位置と、おっちゃんの股間の位置が合致していたのでした)
電車の動きに合わせて腰を動かしてました。
私は難波で降りましたが、(強姦にあったことはありませんが)
なんとも(触られていないので)言えない気持ちでした。
降りる折にはおっちゃんを睨みつけました。
その日一日、怒りにもなんとも言えない気持ちで過ごしました。
おとなしそうなオッちゃんやったんで、悪気はなかったのかもしれませんが
“男の性”は女性よりも強いのだと思います。
現に幼女や女性が被害を受けています。
私はそれなりに生きてきた人間ですら、すごく嫌な気持ちになりました。
“強姦”は被害届が少ないです。
裁判になるとセカンドレイプだと言われています。
思い出したくもない事もあります。
年かさもない女子なら親も将来を慮って被害届も出さないと思います。
私の妹も後をつけられ、精液をかけられたこともありました(警察には届けました)。
男性恐怖症の精神的病を抱えれば私は無理もないような気がします。
もちろん、社会全般的にはマトモな男性ばかりと信じております。
独り言でした。
投稿: 五十嵐 環 | 2011年4月24日 (日) 21時17分
Red Bearさん、コメントありがとうございます。
> まさにその通りで、以前大阪市交通局を相手取って「女性専用車両は違憲だ」という裁判を起こした人がいました。
そうなんですか。恥ずかしながら存じませんでした。
探してみますが、もし裁判所と判決年月日をご存知なら教えてください。
> それに対する判決が「痴漢対策としてなら妥当な理由」「既に多くの鉄道事業者で女性専用車両が実施されている」といったことと並んで「任意の協力を求めているものであって、強制的に排除しているわけではないから、適法」といったものでした。この方は最高裁まで争ったようですが、万事この調子でした。つまり「いわゆる『白黒バス』のような強制排除を行っているわけではなく、あくまで『本人の意思』に任せているのだから、本人の自由意思に任せていることに差別的要素はない。」ということなのです。
やっぱりそうでしたか。
裁判所は、権力者や社会的強者がやることに対しては、とても甘いのが一般ですね。
> けれども実際問題として、利用者サイドが「専用車は任意だから、ここは進んで協力しよう。」「あそこで一般車両に乗っている男性は、わざわざ専用車に協力をしてくれる善意の人だ。」という認識を持つことはありません。どう見ても鉄道事業者が権限を行使して男性排除活動をやっているようにしか認識できないのです。
>
> これだけ「鉄道事業者による男性への強制排除」が流布してしまうと、多くの人(男女問わず)が「男性というものがそれだけ不安因子・危険因子になっているから」という誤った解釈をしてしまいます。私はそれこそが女性専用車両が生んでいる差別であると考えています。
そういう「刷り込み効果」は否定できないと思います。それが差別を固定化し、再生産していくことを恐れます。
投稿: 岩城 穣 | 2011年4月24日 (日) 22時32分
五十嵐 環さん、コメントありがとうございました。
> その日一日、怒りにもなんとも言えない気持ちで過ごしました。
> おとなしそうなオッちゃんやったんで、悪気はなかったのかもしれませんが
> “男の性”は女性よりも強いのだと思います。
>
> 現に幼女や女性が被害を受けています。
> 私はそれなりに生きてきた人間ですら、すごく嫌な気持ちになりました。
>
> “強姦”は被害届が少ないです。
> 裁判になるとセカンドレイプだと言われています。
> 思い出したくもない事もあります。
> 年かさもない女子なら親も将来を慮って被害届も出さないと思います。
> 私の妹も後をつけられ、精液をかけられたこともありました(警察には届けました)。
>
> 男性恐怖症の精神的病を抱えれば私は無理もないような気がします。
そうでしたか。
痴漢行為が許し難い犯罪行為であることは、いうまでもありません。
痴漢や強制わいせつ、レイプが侵害するのは、被害者の身体だけではなく、何よりも人間としての尊厳を傷つけるのだと思います。
だから、加害者からすれば「触っただけ」かもしれませんが、被害者は心が深く傷つくのです。そのことをわかっていない加害者が多いし、わかっていながらやる人間は、会社ではセクハラやパワハラを平気でやっている輩が多いのではないかと思います。
> もちろん、社会全般的にはマトモな男性ばかりと信じております。
「ばかり」でもないのが問題なのですが・・。
被害を受けたことがあるのに、そのようにおっしゃっていただけるのは、男性にとってありがたいことです。
私も、女性専用車両をいっさい作ってはいけないという考えではありません。
痴漢被害からの避難のための必要最小限にとどめ、ガラガラの時間帯に女性専用にする必要などないこと、高齢者や障がい者もいっしょにしてはどうかということ、そうでないなら、男性専用車両も設けるべきだという意見なのです。
投稿: 岩城 穣 | 2011年4月24日 (日) 22時52分
全て、男の論理ですね。
日本社会に痴漢はゴマンといますが、痴女に遭ったという話は当職の周りで聞いたことはありません。セクハラ問題にしても欧米では女性の管理職が部下の男性にという判例も見受けられますが、日本では、殆ど皆無です。
日本の女性は大和撫子で、先進諸国の中では信じ難いばかりの女性の社会的地位の評価は、全世界から見て98位です。護民派弁護士を名乗る岩城弁護士から、こういうご提言があるとは思ってもいませんでしたね。明らかに日本では、100%被害に遭うのは女性なので、女性専用車両があるのは、遅きに失したくらいの感であり、当職としては当然であると思っていますが。
人権を語る前に、被害に遭った女性に対しての思いを馳せて欲しい。
所詮、岩城弁護士の論理は、男性としての論理で、弱者である女性の思いを全く慮っていないと思うのである。男性は、被害に遭っていないのであるから。
今回の投稿に対しては、正直言ってガッカリしたのである・・・。
投稿: 久保利子 | 2011年4月24日 (日) 23時15分
岩城先生のご意見に賛成です。女性車両の導入は明らかに痴漢行為より女性を保護する意図以外何物でもございません。確かに、痴漢行為により被害を受けた女性の苦しみは何事にも変え難く、また痴漢行為をする輩は、許しががたいものがあります。一方でそのような輩とは無縁の男性が大半です。冤罪事件で被害に会われた罪もない男性には察するに余りあります。男性と言うことで十把一絡に特定の車両は乗車できないというのは、やりすぎではないでしょうか。ちなみに私も以前間違えて女性車両に乗ってしまった時は、女子高生と思われる女性から差別的白い目で見られ大変不愉快な思いをしました。混み合っている車両に移動しましたが、スカスカの女性車両の中で、彼らは平然と化粧をしたり大声で携帯で話したり、お菓子をほうばる姿を見て憤りを感じたものです。個人的には、体の不自由な方やお年を召した方専用の特別車両なら大いに賛成です。女性専用車両があるなら、あわせて男性専用車両も同じ数作るべきです。本当に痴漢をなくすならこれしかないでしょう。話はそれますが、お店のランチなどもレディースデイと称し、女性のみ特別価格とか理解に苦しむ制度に出会うことが多々あります。また年金制度など、女性優遇な仕組みになっており、おおよそ男女平等とは言い難い制度も見散されます。もちろん、痴漢は重大な犯罪行為であり、もっと罰則を厳しくすべきだと思います。各鉄道会社だけでなく、日本全体が物事を一方的ではなく、対局的大人の視点から見て判断してほしいと切に願います。
投稿: サムライ | 2011年4月25日 (月) 00時38分
当職の掲示板、「久保労務管理事務所 掲示板」で今夜も投稿したのであるが、女性専用車両を拡大することは、男性のためでもある。
掲示板でも投稿しているが、昨今では痴漢冤罪で苦しめられている方々も少なからずいて、それで無罪であるにも係わらず人生を棒に振っている方もいるのである。否認した故に・・・。本当に悪質な事例もあって、痴漢示談金をせしめるために、被害者を装い金銭を得ている者までいるというのである。
だから当職は、「君子危うきに近寄らず」と言っているのである。
女性専用車両が拡大すれば、痴漢男は痴漢をしにくくなるであろうし、美人局ばりの詐欺女もそういう主張は出来なくなるのである。当職は士業者なので、こう見えても痴漢冤罪で苦しんで闘った方の著作本も何冊も読んでおり、一番具体的な解決策は、交わらなければ起こり得ないということなのである。
当職は、士業者として冤罪を掛けられたことがあるから申し述べられるのであるが、冤罪ほど腹が立ち、悔しくて情けないものはないのである。全てのことを総合的に鑑み、当職は意見を申し述べているつもりである。
岩城弁護士は、どうお考えか、心理をお伺いしたいものである。
投稿: 久保利子 | 2011年4月25日 (月) 01時20分
サムライ 様
コメントありがとうございます。
おっしゃるご意見の大部分に同感です。
若干補足させていただきます。
> お店のランチなどもレディースデイと称し、女性のみ特別価格とか理解に苦しむ制度に出会うことが多々あります。また年金制度など、女性優遇な仕組みになっており、おおよそ男女平等とは言い難い制度も見散されます。
前者についてですが、まずは民間企業の営業戦略の問題であり、原則としてその企業の「営業の自由」の範囲が広く、女性をターゲットにした商法として、私は特に問題はないと考えます。女性は男性とは異なった金銭感覚・消費感覚を持っており、これにターゲットをあてて勧誘することは、重要な企業戦略ではないでしょうか。
後者については、問題は単純ではないと思います。出発点として、日本ではまだまだ男女の賃金格差、所得格差が極めて大きいということがあります。その中で、政府は男女格差を抜本的になくすのではなく、年金などで妻を優遇することによって調整を図ってきたのではないでしょうか。
いずれにしても、私は「男対女」という構図でとらえるのではなく、相互理解こそが必要であり、また、男女がいがみあうことによって誰が得をしているのかを、しっかり見据える必要があると思うのです。(これは「正社員対非正規労働者」、「民間労働者対公務員」という対立構図でも、同じことがいえるのではないかと考えています。)
投稿: 岩城 穣 | 2011年4月25日 (月) 01時35分
岩城弁護士の意見に賛成いたします。
勇気を出して主張してくださったことに尊敬の念を禁じえません。
男が悪で、女が全であるというおかしな風潮があるこの時代が不幸です。
「女性専用車が拡大すれば」などという恐ろしい意見が出てきました。
男性は狭いところに押し込んで(当然椅子はなく全員立ったまま)、
女性だけ快適な化粧室付きの部屋を用意しろというのが本音でしょう。
こういうことをいう人は本当の差別主義者です。
女性だけ快適であれば、男性はどうなっても良いと考えている人です。
戦慄を覚えます。
ちなみに女性専用車は痴漢冤罪にはまったく効果なしです。
男性専用車を作ればなると思いますが、
投稿: こういち | 2011年5月 8日 (日) 00時01分
こういち 様
コメントありがとうございました。
ただ、私自身は、「男が悪で、女が全であるというおかしな風潮があるこの時代」とは考えていません。私の時代認識としては、
①社会全体としては、まだまだ女性差別が根強く残っている
②そのことを口実にして、一方では男性の水準を引き下げ、他方で女性も男性なみに働かせる形で「平準化」が進められている
というものです。
そのような状態で男女が「対立」させられ、お互いを攻撃しあうことは、上記を進めようとしている勢力にとって、思うツボだと思います(同じことは、「正社員対非正規社員」、「公務員対民間労働者」などについてもいえます。)。
大切なことは、お互いを理解しあうこと、共通の目標・一致できる点は何かをさぐることではないでしょうか。
そして、そのためにも、おかしいことはおかしい、ときちんと指摘することも必要ではないかと思うのです。
私が、必要のない時間帯まで女性専用車両を広げるという今回のやり方に対して、率直な意見を述べるのも、男女の真の平等と向上を願う気持ちからです。
ありがとうございました。
投稿: 岩城 穣 | 2011年5月10日 (火) 00時15分
初めまして。
的確に指摘されておられますね。
基本的に、おっしゃる通りだと思います。
さて、
「女性“専用”車両」が、もし本当に「女性“専用”」だとして、
「痴漢対策(女性のため)」や「痴漢冤罪対策(男性のため)」になっているでしょうか?。
「女性“専用”車両」に乗る人は助かるかもしれませんが、
一般車両に男女が混在して、かつ、極端に混雑していれば、
痴漢は減らないですね(痴漢冤罪も減りません)。
「心ある人間」なら、お書きのように、生まれつきの性別だけによって、ゆったりと座れることに、
後ろめたさや疑問を持つでしょうね。
あと、「女性“専用”車両」に加えて「男性“専用”車両」を設けても、
両性がイーブンにはなりますが、差別を差別で相殺しているだけではないでしょうか?。
それらを拡大していくと、究極は「男女別車両」ですが、
公共のスペースですのに(更衣室やトイレでもないのに)、
性別ごとに分ける必然性があるでしょうか?。
犯罪対策は、①でお書きの
>その防止は、基本的には、駅当局・警察による取締りや、
>乗客に対する教育・啓発によるべきものであり
が本筋ですね。
混雑の緩和が何よりも有効だと思いますが、なかなか難しいです。
痴漢減少に効果があった策として、埼京線の監視カメラの例が
報道されています。
投稿: sae | 2011年5月22日 (日) 21時42分
sae 様
コメントありがとうございます。
賛同していただけて、大変光栄に思います。
>「女性“専用”車両」に加えて「男性“専用”車両」を設けても、
両性がイーブンにはなりますが、差別を差別で相殺しているだけではないでしょうか?。
>それらを拡大していくと、究極は「男女別車両」ですが、
公共のスペースですのに(更衣室やトイレでもないのに)、
性別ごとに分ける必然性があるでしょうか?
「差別と差別の相殺」という言葉は、なかなか面白いですね。
それが、互いに屈折した感情や憎悪を残さなければいいんですが・・。
公共スペースまで男女で分けるとなると、バスや飛行機も同じだということになり、極端に言えば映画館や夜道まで分けた方がいい、ということになるように思います。
犯罪防止や迷惑対策は、基本的には取締りや啓発の問題であり、最終的にはお互いの人権を大切にするという、民主主義社会の成熟度の問題ではないでしょうか。
混雑時の分離はやむを得ないとしても、とにかく分離を広げるに越したことはないというのは、人間不信の上に立った一種の「事なかれ主義」だと思います。
ありがとうございました。
投稿: 岩城 穣 | 2011年5月23日 (月) 19時17分
はじめまして。私も筆者の先生と同感でございます。
今や女性専用車両は男性差別を象徴したものであり、不便さや混雑といった負担を男性に押し付けて、わがままな意見をうのみにしてしまうという状況です。
社会的背景にある根源をたどれば、痴漢冤罪と全く同じ問題だと思います。
現在は行政や議員さんらに問題指摘の働きかけをしておりますが、この手段で悪質な状態に改善が見られない場合は法的な解決を考えておりますので、ご機会がありましたらよろしくお願いいたします。
投稿: 関東人 | 2011年5月24日 (火) 07時41分
岩城様、始めまして。この記事に共感するところがありますので、コメントさせて頂きます。
報道によれば、先日、在日イスラム教徒の外国人が、(国と)警視庁を相手に訴訟を起こしたとの事です。
先日、パキスタンに潜伏していた、イスラム過激派「アルカイダ」の「親分」ビンラディンを殺した、と米国政府が発表しました。
彼らは、そのアルカイダとの関係を疑われ、公安警察に素行調査をされたり、イスラム寺院への出入りを尾行されるなどされたという事。そして、その個人情報(具体的な氏名や住所まで記載)を警視庁が外部に漏洩した(その情報を元に民間の出版社が本を出した)とされる事。この2点について、「人権侵害である」として、国家賠償法に基づく損害賠償を請求した、というのです。
なるほど、自爆テロをやらかすビンラディンやアルカイダの一味は「敬虔なイスラム教徒」かもしれない。では、イスラム教徒は皆テロリストですか?アルカイダの「仲間」ですか?違いますよね。大部分のイスラム教徒は、そういうテロリスト一味なんかではありません。むしろ、多くのイスラム教徒は、「ああいう連中のお陰で肩身の様い思いをしている」と、アルカイダを「迷惑な存在」と思っているんじゃないでしょうか?
この「イスラム教徒」を「男性」に置き換えれば、同じ事が言えると思います。なるほど、痴漢をやるのはほとんど全てが男性かもしれない。でも、男性は全員が犯罪者ですか?違いますよね。大半の男性は、善良な市民です。ですから、
>外国人犯罪が増えているからと、外国人を特定の施設に入れないというのと同じで、男性客を締め出す「女性専用車」は「やり過ぎ」
と岩城さんが仰る通りです。それだけでなく、今回の在日イスラム教徒の一件のように、その(今回は宗教という)社会的属性だけを理由に一律に「危険分子」扱いして、素行調査や尾行という形で公安当局が「狙い撃ち」するのも問題です。
交通機関は公共の場です。誰が、どの列車、どの車両に乗ろうと自由でなければまりません。「犯罪者と善良な市民の見分けができない」としても、それを理由に(男性という性別のみを理由に)全員を締め出すのは、善良な男性に対する人権侵害です。
コメント欄にある「久保利子」様は、本件記事を「全て、男の(一方的な)論理」と批判されていますすが、この「イスラム教徒というだけで『テロリスト(の仲間)』扱いされた」在日イスラム教徒の気持ちが理解できないのでしょうか?それとも、
「全て、(イスラム国家ではない日本の国民には理解できない)イスラム教徒の(一方的な)論理である」
「公安当局に監視されたくなければ、『君子危うきに近寄らず』で、イスラム教徒は日本から出て行け、なのである」
などと、在日イスラム教徒を「批判」されるのでしょうか?
投稿: 北斗星1号 | 2011年5月25日 (水) 00時51分
◆ 関東人 様
コメントとご賛同、ありがとうございます。
やはり、「いわれなき差別」や「決めつけ」というものは、人の心を傷つけるものだと、改めて感じます。
また、取組みなど教えていただけたらと思います。
投稿: 岩城 穣 | 2011年5月27日 (金) 03時14分
◆北斗星1号 様
コメントありがとうございます。
「アルカイダ」や「ビンラディン殺害」まで話が広がると、ちょっと問題が大きくなりすぎてしまうように思いますが、要は「犯罪者と善良な市民の見分けができない」ことを理由に(男性という性別のみを理由に)全員を締め出すのは、善良な男性に対する人権侵害だ」ということですよね。
その点は、同感です。
投稿: 岩城 穣 | 2011年5月27日 (金) 03時24分
普通電車しかも日中は15分に1本しかなくかつ鶴ヶ丘杉本町上野芝の各駅連続で快速区間快速の長時間の通過待ちを強いられるそんな虐げられてる普通電車に限って終日女性専用車両が連結されているという不条理理不尽しかもその普通電車の車両は快速区間快速が新型電車を使用しているのに国鉄時代それもまだ刑法に尊属殺人罪が存在し大映テレビドラマシリーズ赤いシリーズ第5作赤い激流でその尊属殺人罪のネタが使用されてました1977年昭和52年6月3日から同年11月25日まですでに使用されてました103系というオンボロの古い電車を使用しているというところでしょうガラの悪い言葉で言えば快速通過駅の客をなめているということですworz
投稿: 阪和線が不自然なのは混んでいる快速電車に女性専用車両がなくすいてる | 2011年10月23日 (日) 08時23分
女性専用列車の目的ってなんなんですかね。よく男性が悪く言
われますが、私は痴女に会ったことあります。
こちらが何か言うと逆に痴漢って言われそうで黙ってるだけでし
たが、痴漢対策が目的なら女性、男性、任意とでも車両わけ
ちゃえっていうのが私の意見です。
普通じゃないのがごく少数だし、少数のために窮屈な思いするっ
てのは、それ自体が普通じゃないと思います。
投稿: ・・・ | 2012年2月29日 (水) 22時14分
質問です。
「男性であるという理由のみで、公共交通機関の利用が一部制約されることが、「性別による差別」に当たることは明らかである。」
憲法第14条は国家が基本的人権享有主体に対して差別を禁止するものです。
JR等所謂公共交通機関は営利を目的とする社団法人で乗客とは運送契約で権利義務関係となっているにすぎません。
運送契約上の乗客の権利は鉄道会社の指示に従って目的地まで運送を請求する権利。鉄道会社は運賃請求(パスモ等の清算)及び安全に運送する義務。
大量運送を業務とする以上混雑時に一部特別扱いをすることは当然の鉄道会社の営業方針や配慮にすぎません。
別に男性を排除する訳ではなく他車両への移動を促すだけです。
これに故意に抵抗する輩には車両所有権者である鉄道会社の物上請求権で対応しているにすぎません。
故に、憲法第14条の「性別による差別」問題と捉えるべき問題ではないと考えます。
鉄道会社の営業の自由の反射にすぎないと思うのですが?
都市住民には、「公共交通機関を自由に利用すること」が基本的人権であると考えるならば憲法第14条の問題と捉えることができるでしょう。
投稿: 東大平行線 | 2013年4月19日 (金) 05時21分
◆東大平行線 様
コメントありがとうございます。
おっしゃっているのは、いわゆる基本的人権の私人間効力の問題だと思います。
確かに、憲法の基本的人権の規定は、直接には国と国民の関係を規制するものですが、私人間(市民同士や市民と企業・団体など)には全く適用がないとすると問題が生じるので(例えば会社で思想差別が行われるのを規制できないことになる)、一般的には、私人間における不合理な権利・自由の侵害は、民法の一般条項(信義誠実、権利濫用、公序良俗違反、不法行為)などによって規制されると考えられています(間接適用説)。
したがって、私人たる鉄道会社であっても、性別による不当な差別をしてはならず、違反すれば民事上不法行為として慰謝料請求権を発生させると解されます。
特に公共交通機関は、国民の移動の自由を実質的に保障する役割を負っているので、なおさら人権に配慮した運営が求められます。
私が、「男性であるという理由のみで、公共交通機関の利用が一部制約されることが、「性別による差別」に当たることは明らかである。」と書いたのは、上記の理解を前提とするものです。
投稿: 岩城 穣 | 2013年4月21日 (日) 04時17分
岩城穣弁護士
さっそくの回答ありがとうございます。
しかし、鉄道会社の女性専用車両導入が私人間の不合理な権利自由への侵害があるのでしょうか?
通勤電車の乗客の有している運送契約上の権利は車両選択の権利を有しません。
鉄道会社の提供した車両を利用して目的地に輸送することを請求するだけです。男性乗客が、乗車可能な車両が多少、少ないことで混雑状態での輸送を余儀なくされたとしても受忍すべきで違法な権利侵害はないのではないですか?
従って、権利侵害がない以上不法行為にはなりえないのではないですか
投稿: 東大平行線 | 2013年4月21日 (日) 06時09分
◆東大平行線 様
運送契約上の権利とおっしゃいますが、「平等に取り扱われる権利」の侵害は、他者との取扱いの比較において論じられるべき性質のものです。例えば、同じ仕事をしている男女の従業員で賃金差別をしても、就業規則や賃金規程に「男女平等に支給する」と書いていないから構わないということにはならないでしょう。
貴殿の言葉を使うならば、女性の乗客にのみ「車両選択権」があり、男性の乗客に認めないのは、明らかに差別に該当します。
このことは、逆の場合、つまり、例えば、男性優位思想に立って、男性にだけ専用車両を設ける(選択権を与える)ことを考えれば理解できるのではないでしょうか。
また、男女の問題に限らず、例えば国籍や出身地や年収で優遇車両を設けることも、同じ問題といえます。
貴殿の立論によれば、これらはいずれも鉄道会社の営業の自由の範囲内、ということになるのでしょうか。
もっとも、およそあらゆる差別が違法となるわけではなく、「不合理な差別」が禁止されるというのが通説的理解です。つまり、合理性のある差別であれば許されるのです。
そうすると、どのような場合が合理的な差別で、どのような場合が不合理な差別なのかの判断基準が必要になります。
これも一般的には、①問題となっている権利の性質(つまり人権としての重要性の程度)と、②差別的取扱いを行う必要性(目的)、③差別の方法・程度(手段)などを総合的に評価して判断するとされているように思います。
本件についていえば、①性を理由とした差別を受けない権利というのは、「個人の尊厳と両性の本質的平等」(憲法24条2項参照)の見地から、人権としての重要性は非常に大きいといえます。
問題は②と③であり、これらは関連し合っています。私は、女性専用車両を設ける目的は痴漢などの性的被害の防止であり、それは肯定できます。ただ、男性一般に不便を与えることは事実ですから、その目的の達成に必要な範囲で必要最小限にとどめられるべきだと言っているのです(その範囲内であれば、不法行為上の「受忍限度」に当たるといえます)。
具体的には、女性専用車両を設けるとしても必要最小限の台数に限るべきであり、また痴漢被害が通常起こりにくい閑散な時間帯にまで終日広げるのは問題だと言っているのです。
また、仮に設ける場合でも、車両台数自体が少ない場合には、女性専用車両が空いているのに、共用車両が混み合うこともあるので、同数の男性専用車両を設けることも考えられる、と言っているのです。
ところで、お尋ねしますが、貴殿は、仮に共用車両を2割、女性専用車両を8割にしても、男性乗客に権利侵害はなく、男性は受忍すべきだとおっしゃるのでしょうか。
そうではないということであれば、結局は目的との関係における程度問題であり、上記の②③の検討に帰着するのではないでしょうか。
投稿: 岩城 穣 | 2013年4月21日 (日) 21時16分
> 貴殿の立論によれば、これらはいずれも鉄道会社の営業の自由の範囲内、ということになるのでしょうか。
ご指摘の通りです。
鉄道会社が行政指導に従って女性専用車両を導入したとしても、あくまで営利企業が女性客の鉄道離れを防ぐために、混雑時だけ女性専用車への乗車と言う特権を一部女性に提供(贈与類似の契約)しているだけです。
営利を目的とする鉄道会社が乗客の国籍や出身地、年収に因り優遇又は専用車両を導入することはありえない想定での議論ではないでしょう。
ローザパークスの例は市営バスでの黒人だけに対する差別的待遇(憲法第14条問題)の憲法上の問題です。
市は地方政府として税金でバス経営をしているのですから当然憲法の規制に従うべきでしょう。
私なら、市がそのような差別的取り扱いをするならば、
黒人専用のバス会社を設立するでしょう。
さすれば、市が排除した多くの黒人客を容易に取り込み有利なバス経営ができるからです。
現に市当局は黒人のボイコットで市営バスが経営困難に陥りました。
最後にお尋ねの件
(貴殿は、仮に共用車両を2割、女性専用車両を8割にしても、男性乗客に権利侵害はなく、男性は受忍すべきだとおっしゃるのでしょうかですが)
女性専用車両が女性客の鉄道離れの防止である限り女性専用車両8割なる想定は無視してもいいのではないですか?
ちなみに、
鉄道会社は痴漢防止と言う犯罪対策をとる権限も能力も有しません。
それは鉄道警察隊の職務です。
投稿: 東大平行線 | 2013年4月22日 (月) 04時28分
◆東大平行線 様
>> 貴殿の立論によれば、これらはいずれも鉄道会社の営業の自由の範囲内、ということになるのでしょうか。
>ご指摘の通りです。
>鉄道会社が行政指導に従って女性専用車両を導入したとしても、あくまで営利企業が女性客の鉄道離れを防ぐために、混雑時だけ女性専用車への乗車と言う特権を一部女性に提供(贈与類似の契約)しているだけです。
→貴殿のお考えはわかりました。「男性優位思想に立って、男性にだけ専用車両を設ける(選択権を与える)こと」や、「国籍や出身地や年収で優遇車両を設けること」も、鉄道会社の営業の自由の範囲内というお考えでしたら、ある意味で一貫しているといえます。
憲法の基本的人権規定の私人間効力を否定し、企業の営利活動の自由を重視していけば、そのような理解になるのかもしれません。
ただ、基本的人権規定の私人間効力を実質的に否定する見解は、少なくとも日本の憲法学では一般的な理解ではありません。
>営利を目的とする鉄道会社が乗客の国籍や出身地、年収に因り優遇又は専用車両を導入することはありえない想定での議論ではないでしょう。
→法律の議論ではしばしば、一般にはあり得ないような極端な事例を想定して議論します。なぜなら、法律はどのようなケースにも等しく適用されるものであり、ある事例に適用すると不都合が出てくる場合には、その一般的妥当性に疑問が生じるからです。そのことを明らかにするためには、極端な事例を想定するとわかりやすいのです。
また、実際、時の世論や社会的圧力によって、営利会社であってもそのような車両を導入することは皆無ではないと思います。アパルトヘイトなどもその一種でしょう。
>ローザパークスの例は市営バスでの黒人だけに対する差別的待遇(憲法第14条問題)の憲法上の問題です。
>市は地方政府として税金でバス経営をしているのですから当然憲法の規制に従うべきでしょう。
>私なら、市がそのような差別的取り扱いをするならば、
黒人専用のバス会社を設立するでしょう。
さすれば、市が排除した多くの黒人客を容易に取り込み有利なバス経営ができるからです。
現に市当局は黒人のボイコットで市営バスが経営困難に陥りました。
→この話題は唐突であり、おっしゃる趣旨が理解できません。
また、貴殿は先ほどでは日本であり得ない想定云々とおっしゃっているのですから、ここでアメリカの例を出したり、ご自分ならどういった会社を設立するといった設例を立てるのは、議論として一貫性を欠くように思います。
>最後にお尋ねの件
(貴殿は、仮に共用車両を2割、女性専用車両を8割にしても、男性乗客に権利侵害はなく、男性は受忍すべきだとおっしゃるのでしょうかですが)
>女性専用車両が女性客の鉄道離れの防止である限り女性専用車両8割なる想定は無視してもいいのではないですか?
→前述したように、憲法や法律の射程範囲を議論する以上、当然答えられなければなりません。
これを極端だから無視してよいと言うなら、女性専用車両の割合を8割→5割→3割→1割と下げて行った場合、どこからが「無視」されなくなるのでしょうか。その基準はどういうものでしょうか。
>ちなみに、
鉄道会社は痴漢防止と言う犯罪対策をとる権限も能力も有しません。
それは鉄道警察隊の職務です。
→これも唐突な議論で文脈を理解しかねますが、鉄道会社は痴漢防止策を講じる権限も能力もないという趣旨であれば、そんなことはありません。乗客への啓蒙や呼びかけや、痴漢被害の通報を受けた駅員がすぐに警察と連携しあって検挙することも立派な痴漢防止策であり、これらは現に行っていると思います。
投稿: 岩城 穣 | 2013年4月22日 (月) 11時11分
岩城穣弁護士のお考えはよくわかりました。
さすれば、被害を被ったと称する男性被害者は、
鉄道会社に対して個別に慰謝料等の損害賠償請求ができる限度であると理解してもいいのですか?
又、差別で精神的被害を被ったと称する男性が、故意に示威運動と称して女性専用車両に乗り込むことに付いてコメントを頂けますか。
投稿: 東大平行線 | 2013年4月22日 (月) 11時30分
岩城穣弁護士
私の理解では、最高裁判所大法廷は三菱樹脂樹脂事件で次のように判示していると思います。
憲法の人権規定は、民法をはじめとする私法関係においては、公序良俗違反(民法第90条)、信義誠実の原則(b:民法第1条)、権利濫用(同)、あるいは不法行為(b:民法第709条)などの規定を解釈するにおいてその趣旨を読み込むことも不可能ではないが、人権規定は私人相互間には原則として直接適用されることはない」
憲法の人権規定は鉄道会社と男性客との私人相互間には直接適用されない。
例外として間接的に適用されるとしても、民法の第90条の公序や709条の違法性判断に機能するだけではないですか?
憲法規範は一方的ですから私人間に適用すると他方の私人にとって迷惑極まりないことになるのです。
投稿: 東大平行線 | 2013年4月22日 (月) 17時02分
◆東大平行線 様
>岩城穣弁護士のお考えはよくわかりました。
>さすれば、被害を被ったと称する男性被害者は、
鉄道会社に対して個別に慰謝料等の損害賠償請求ができる限度であると理解してもいいのですか?
→ブログの本文でも書きましたが、私としては、仮に鉄道会社が分離乗車を実力で強制した場合には、裁判所は慰謝料請求を認める可能性があると思います。
しかしながら、現在は鉄道会社が乗客に対して「任意」の「協力のお願い」のアナウンスをしているだけで、乗客が任意にこれに協力しているという形ですので、不本意ながらこれに応じた乗客が慰謝料請求をしても、裁判所は任意性を理由に認めないのではないかと思います。
>又、差別で精神的被害を被ったと称する男性が、故意に示威運動と称して女性専用車両に乗り込むことに付いてコメントを頂けますか。
→これもブログ本文で書きましたが、男性乗客が女性専用車両に乗らないというのが「任意の協力」である以上、これに従わない乗客に対して、実力で排除することはできないと考えられます(もし実力で排除すれば、上記の民事訴訟になると鉄道会社が敗訴する可能性があると思います)。
ただ、女性専用車両に反発する男性が、デモンストレーションとして物々しく乗り込むパフォーマンスを行うことについては、道義的、感覚的な問題として、賛否両論あるのではないかと思います。
私個人としては、喧嘩腰をアピールしながら乗り込むようなことは好きではありませんが、民主主義社会である以上、そのような人がいてもやむを得ないと思います(もちろん、これは強制的に排除できないという意味であり、そういう行動を批判する自由はあります)。
>私の理解では、最高裁判所大法廷は三菱樹脂樹脂事件で次のように判示していると思います。
>憲法の人権規定は、民法をはじめとする私法関係においては、公序良俗違反(民法第90条)、信義誠実の原則(b:民法第1条)、権利濫用(同)、あるいは不法行為(b:民法第709条)などの規定を解釈するにおいてその趣旨を読み込むことも不可能ではないが、人権規定は私人相互間には原則として直接適用されることはない」
>憲法の人権規定は鉄道会社と男性客との私人相互間には直接適用されない。
>例外として間接的に適用されるとしても、民法の第90条の公序や709条の違法性判断に機能するだけではないですか?
→私は以前のコメントで、間接適用説が通説だと申し上げましたが、まさにこの三菱樹脂の最高裁判決がとっているのが間接適用説です。
>憲法規範は一方的ですから私人間に適用すると他方の私人にとって迷惑極まりないことになるのです。
→ここでいう「私人間に適用」というのは、直接適用のことです。
これではさまざまな不都合が生じることから、間接適用説(通説・判例)は、他方の私人の人権も考慮して、上記のような一般条項の解釈・適用の中でその調整を図ろうとしているのです。
投稿: 岩城 穣 | 2013年4月22日 (月) 20時04分
岩城穣弁護士
いろいろ教えていただき感謝します。
>ただ、女性専用車両に反発する男性が、デモンストレーションとして物々しく乗り込むパフォーマンスを行うことについては、道義的、感覚的な問題として、賛否両論あるのではないかと思います。
私個人としては、喧嘩腰をアピールしながら乗り込むようなことは好きではありませんが、民主主義社会である以上、そのような人がいてもやむを得ないと思います
はい、民主主義社会である以上女性専用車両に不快感を感じる人がいても、また混雑を極める通勤電車に怒りを覚える人もいることもあるでしょう。
しかし、
民主主義社会であるから民主主義社会を支える方法での抗議に止めるべきで、発射遅延を意に反さずパホーマンスを続けるのは度を超えています。
岩城弁護士の言われるように単に、「道義的、感覚的」問題ではなく、むしろ高速度交通機関での追突事故の危険性を顧みない暴挙だと思います。
民主主義社会では抗議方法も民主義社会でのルールに従うべきではないですか?
投稿: 東大平行線 | 2013年4月23日 (火) 05時29分
>雇用契約締結の際の思想調査およびそれに基づく雇用拒否が当然に違法となるわけではない」旨の判示をしたが、
即ち、会社と学生とが雇用契約締結の際に学生の思想調査をしてそれに基づく雇用拒否が当然には違法ではなく、間接的にも憲法第19条の適用はないし、憲法第14条の適用もないと考えるべきではないですか。
企業には企業の論理で営業の自由ひいては採用すべき学生の思想を考慮してもかまわないとのお墨付きが大法廷に因り付与されたということでしょう。
赤旗が右翼の学生を雇用するとは思えません。また自由新報社に左翼の学生を雇用するとも思えません。
>一方で、本件雇用契約における留保解約権を行使できる場合についての審理が事実審において十分尽くされていないという理由で、2審の判決を破棄し、審理を東京高等裁判所に差し戻す判決を下した。
しかし、一旦試用期間中に入った以上雇用契約の存在を肯定したうえで企業側の勝手気ままな留保解約権の行使を認めるかどうかは権利の乱用、等の配慮での調整が図られると理解すべきではないですか?
御存じかと思われますが、
高野さんは、結局和解して子会社の取締役にまでなられました。
以上のことを踏まえて女性専用車両への闖入を考えれば
女性専用車両を一定時間設定していることをホームページ明示的に公示して周知している以上、その条件を前提とした運送契約と解し、企業の自由が優先する。
女性専用ではないとして男性乗客をも女性専用車両に乗ることを許可している鉄道会社が、その運送契約を解除して男性乗客を移動させたり排除する場合には憲法第14条の間接適用なる論理で一般条項の援用を許す。
投稿: 東大平行線 | 2013年4月23日 (火) 13時39分
>不愉快に感じる男性は、「男らしく」黙って耐えるのではなく、声をあげるべきである
しかし、そういう風に「男らしくない」態度を取ると、社会から「女々しい」「男のくせに情けない」などと非難を浴び、社会的生存権を奪われることになります。円滑な人間関係を組織内で維持するためには、「男は男らしく黙って耐えろ」という有形無形の圧力に従う他、選択の余地は事実上ありません。もし、男らしさを捨てて、喚き散らせば、村八分となります。そこらへんも認識して、男性が社会で声を上げることの困難さも分かってほしいです。
投稿: 男性 | 2013年4月23日 (火) 14時31分
◆東大平行線 様
>しかし、
>民主主義社会であるから民主主義社会を支える方法での抗議に止めるべきで、発射遅延を意に反さずパホーマンスを続けるのは度を超えています。
>岩城弁護士の言われるように単に、「道義的、感覚的」問題ではなく、むしろ高速度交通機関での追突事故の危険性を顧みない暴挙だと思います。
>民主主義社会では抗議方法も民主義社会でのルールに従うべきではないですか?
→私は「発車遅延を意に介さずパフォーマンスを続け」、「高速度交通機関での追突事故の危険性」まで生じさせるような抗議行動を見たことがないので、コメントはできません。
しかし、本当にそのような行動がなされていれば、当然厳しい社会的批判を受けると思われます。
>>雇用契約締結の際の思想調査およびそれに基づく雇用拒否が当然に違法となるわけではない」旨の判示をしたが、
>即ち、会社と学生とが雇用契約締結の際に学生の思想調査をしてそれに基づく雇用拒否が当然には違法ではなく、間接的にも憲法第19条の適用はないし、憲法第14条の適用もないと考えるべきではないですか。
→三菱樹脂最高裁判決の解釈論争を貴殿とここでするつもりはありませんが、同判決が間接適用説を採ったことについては、確定的な評価がなされていると思います。お調べになって下さい。
>企業には企業の論理で営業の自由ひいては採用すべき学生の思想を考慮してもかまわないとのお墨付きが大法廷に因り付与されたということでしょう。
→上記のように、このような理解は一般的とはいえません。
>赤旗が右翼の学生を雇用するとは思えません。また自由新報社に左翼の学生を雇用するとも思えません。
→これは、いわゆる「傾向企業」が雇用にあたって思想信条を評価して採否を決めてよいかという、憲法学での1つの論点とされている問題であり、一般企業、しかも大企業が思想評価による採用差別を行ってよいかということと同列に論じることはできません。
>>一方で、本件雇用契約における留保解約権を行使できる場合についての審理が事実審において十分尽くされていないという理由で、2審の判決を破棄し、審理を東京高等裁判所に差し戻す判決を下した。
>しかし、一旦試用期間中に入った以上雇用契約の存在を肯定したうえで企業側の勝手気ままな留保解約権の行使を認めるかどうかは権利の乱用、等の配慮での調整が図られると理解すべきではないですか?
→おっしゃる意味が理解できません。
最高裁判決を批判しておられるのでしょうか?
>御存じかと思われますが、
>高野さんは、結局和解して子会社の取締役にまでなられました。
→存じませんでしたが、貴殿のご主張と関連性があるのでしょうか。
>以上のことを踏まえて女性専用車両への闖入を考えれば
女性専用車両を一定時間設定していることをホームページ明示的に公示して周知している以上、その条件を前提とした運送契約と解し、企業の自由が優先する。
>女性専用ではないとして男性乗客をも女性専用車両に乗ることを許可している鉄道会社が、その運送契約を解除して男性乗客を移動させたり排除する場合には憲法第14条の間接適用なる論理で一般条項の援用を許す。
→貴殿のお考えの結論ということは理解しますが、「以上のこと」の論理的帰結ではないように思います。
今回のコメントのやり取りは、貴殿の「質問」という形からスタートしましたが、回数も重ね、また、ちょっと方向が変わってきたようにも思いますので、このあたりで打ち切らせていただきたいと思います。
投稿: 岩城 穣 | 2013年4月24日 (水) 02時52分
◆「男性」様
>>不愉快に感じる男性は、「男らしく」黙って耐えるのではなく、声をあげるべきである
>しかし、そういう風に「男らしくない」態度を取ると、社会から「女々しい」「男のくせに情けない」などと非難を浴び、社会的生存権を奪われることになります。円滑な人間関係を組織内で維持するためには、「男は男らしく黙って耐えろ」という有形無形の圧力に従う他、選択の余地は事実上ありません。もし、男らしさを捨てて、喚き散らせば、村八分となります。そこらへんも認識して、男性が社会で声を上げることの困難さも分かってほしいです。
私も男性ですから、男性がそのような社会的圧力(これはジェンダーの一種です)を受けていることは理解し、自らも感じています。
ただ、「声をあげる」といっても、「喚き散らす」ことがすべてではなく、身近な人に話したり、新聞に投書したり、私のようにブログで意見表明するなど、いろんなやり方があるのではないでしょうか。
それに、実力で乗車阻止される場合は別として、空いている時などは、そっと乗車するという形で、黙って抵抗を示してもよいと思います。
要は、「ストレスを感じながら、無言で従い続ける」必要はないと思うのです。
投稿: 岩城 穣 | 2013年4月24日 (水) 03時02分
>高野さんは、結局和解して子会社の取締役にまでなられました。
→存じませんでしたが、貴殿のご主張と関連性があるのでしょうか
はい、最高裁判所大法廷は人権規定の間接適用に因る一般条項での判断さえさえも自らはせずに高裁に差し戻していたと言うことです。
以上打ち切りに合意いたします。
いろいろなことを伺い感謝しています。
投稿: 東大平行線 | 2013年4月24日 (水) 15時22分
岩城穣弁護士の見解を支持します。
現に大阪市営地下鉄には、男性専用車両を求める市民の声が寄せられているようです。
ぜひとも早期に、男性専用車両導入を希望します。
冤罪・でっちあげが怖いですからね
投稿: freedom | 2013年4月26日 (金) 13時07分