4・28式典 ジョン・ダワー氏に聞く

2013年4月28日 09時52分
(8時間8分前に更新)

 【平安名純代・米国特約記者】ピュリツァー賞受賞作家でマサチューセッツ工科大(MIT)名誉教授(日本近代史)のジョン・ダワー博士(74)は26日、沖縄タイムスの電話インタビューに応じ、政府が28日に開催する「主権回復の日」の式典について「沖縄抜きの平和、沖縄の主権を含まない式典は、日本政府の平和に対する無神経さを示すものだ」と指摘し、「(式典に対する)沖縄の反対は正しく、理解に値するものだ」との見解を示した。

 ダワー博士は、戦争責任に領土問題、そして現在も沖縄に集中する米軍基地の過重負担は、「サンフランシスコ講和条約と旧日米安保条約に起因している」と指摘。講和条約で日米関係は良好になり、日本は繁栄したものの、中国と韓国との関係改善を後回しにしたため、現在の緊張状態につながっていると分析した。

 沖縄の米軍基地の過重負担が解決されないのは、日本が米国に全面的に依存する「サンフランシスコ・システム」に組み込まれた結果、身動きが取れなくなったためとの持論を展開し、日本が戦後の問題を解決できない原因を祝う主権回復の式典を批判した。

 一方で、安倍晋三政権の閣僚らによる靖国参拝について、「保守派の指導者たちの中には、戦争責任に関する結論を持たず、日本の行為が他国の目にどう映るかについて自覚がない者もいる」と懸念を示した。

 その上で、歴史をめぐる解釈と記憶との関連性が現在の状況に与える影響の大きさを指摘。靖国参拝を繰り返す政治家らが「記憶を変える」試みをしているのではないかとの疑問を呈し、そうした行為が次代を担う若者たちの歴史認識をゆがめることにもつながると警鐘を鳴らした。

 また、日米両政府が米軍基地の過重負担の軽減を求める沖縄県民の声に耳を傾けない現状を批判し、沖縄における抗議行動は「政府に沖縄の望みを伝えるという意味を持つもの」とその重要性を強調。「厳しい現状に圧迫されることなく、沖縄の人々が自主的に沖縄の未来像を描くことは、より平和なビジョンの創造につながる」と述べ、平和を尊ぶ沖縄の精神を「アジアにおける肯定的な力」と位置づけた。

 ジョン・ダワー氏 1938年、米国ロードアイランド州生まれ。マサチューセッツ工科大名誉教授。敗戦からサンフランシスコ講和にいたる占領下の日本を描いた著書「敗北を抱きしめて」で2000年ピュリツァー賞を受賞。「吉田茂とその時代」「容赦なき戦争」などの著作もある。

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