憲法と、
岐路に立つ憲法。その60年余を見つめ直します
【社会】安倍流経済 復興足かせ 被災3県 入札不調が増加安倍政権が掲げる経済政策「アベノミクス」が、東日本大震災の復興の足を引っ張る−。そうした指摘が、現実になりつつある。被災地では今月以降、集落移転を伴う住宅再建の工事が集中的に始まる。だが、政府が全国の公共事業費を積み増すことで、被災地以外の土木工事が大幅に増える。慢性化している建設作業員の不足がさらに悪化し、被災者の生活再建を遅らせる原因となりかねない。 (中根政人) 安倍政権は、防災・減災対策の強化を理由に二〇一二年度補正予算と一三年度予算案の合計で約七兆七千億円の公共事業関係費を計上している。民主党政権が編成した一二年度当初予算の約四兆六千億円と比べると一・七倍にあたる。 ここで浮上する問題は、建設作業員不足だ。型枠大工やとび職など建設工事の技能職の今年二月の有効求人倍率は全国で五・六四倍。被災三県は、岩手県が五・七八倍、宮城県が一二・五八倍、福島県が九・八二倍と全国平均より高い。公共事業が増えることで人手不足がさらに深刻になるのは間違いない。 被災三県では、作業員や建設資材の不足で工事のコストも高騰。公共事業の受注が進んでいない。国土交通省によると、落札業者が決まらない「入札不調」は、昨年四月から今年一月に岩手県で15%、宮城県で38%、福島県も昨年四月から十二月で24%に上り、いずれも増加している。 津波の被災地域では、集落を高台などに移転して公営住宅を整備する事業が、一三年度からピークを迎える。復興庁によると二百二十四地区で予定する集落移転事業は、96%の地区で計画が決定しているが、作業員不足とコスト増で入札不調が続けば復興に痛撃となる。原発事故からの復興への影響も懸念する福島県の担当者は「被災地以外に建設作業員の人手が取られ、除染が遅れれば、避難者が故郷に戻るめどを立てられなくなる」と訴える。 明治大大学院の中林一樹特任教授(災害復興学)は「全国で公共事業を急激に増やせば、震災復興と防災・減災の両面で手抜き工事のリスクが高まる。最優先する事業を整理すべきだ」と指摘している。 PR情報
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