藤浪史上初高卒ルーキー４月ＭＶＰだ

　惨敗ショックは、きっとこの男が振り払ってくれる。阪神の黄金ルーキー藤浪晋太郎投手（１９）が、今日２８日のＤｅＮＡ戦（横浜）で、また球史に名を刻むマウンドを迎える。高卒新人が４月に３勝を挙げればドラフト制後初の快挙で、史上初の高卒ルーキーの３、４月の月間ＭＶＰにもグッと近づく。２７日夜の大敗の悔しさなんか忘れ去って、今日は怪物右腕のビジター初勝利へ全力エールや！

　どんな大記録でも、この右腕なら不可能ではない。ルーキー藤浪が４度目の先発となる今日２８日、偉業に挑戦する。勝てば４月で３勝目。西武松坂でもなしえなかった壁を越え、ドラフト制後では高卒新人初の快挙だ。ビジター初勝利にかかっている記録は、それだけではない。新人に限らず、現在勝利数のトップは３勝。白星を手にすれば、高卒新人では過去誰もできなかった１年目３、４月度の月間ＭＶＰへの可能性が膨らむのだ。

　ＤｅＮＡは１４日に初対戦。６回を投げて５安打無失点で、プロ初勝利を挙げた。それでも気が緩むことはない。「同じピッチングをしていては打たれると思うので、何かしら工夫できれば」。新人らしからぬ洞察力も武器だ。この日はブルペン調整するだけでなく、敵の主砲ブランコの打撃練習に目を凝らす姿があった。「沸き立つということはありません。どんな打球を打つのか見ていました」。手の内は明らかにしなかったが、ブラ斬りへのイメージを膨らませていたに違いない。

　舞台となる横浜スタジアムは両翼９４・２メートル、中堅１１７・７メートルと本拠地甲子園よりも狭い。だが、恐れはしない。「狭いのは狭いと思いますけど、フェンスも高いので。特に気にはしません」。勝利へのポイントは分かっている。大阪桐蔭時代、ソロ本塁打しか許したことがない。走者を出塁させてからが、防御率０・８６を誇る、この男の真骨頂だ。

　高卒新人の最速月間ＭＶＰ受賞は、９９年７月度の西武松坂が受賞。セ・リーグに限れば８７年８月度の中日近藤。すでに３勝を挙げている巨人菅野、この日３勝目を挙げたヤクルト小川らルーキー勢もライバルになるが「結果として取れたらいいですけど、それにこだわりはない」。責任投球回数でもある５回以上投げれば、規定投球回数に到達する。まずは自らの投球に集中するだけだ。

　前日はＤｅＮＡ中畑監督から「（１４日は）ナイスピッチングだったな」と声をかけられ、「お手柔らかにお願いします」と、「大人」の対応を見せていた大物ルーキー。だが、マウンドでは牙をむくはずだ。チームが大敗した後で、連敗を防ぐべく期待も高まる。虎党を、球界を沸かせてきた藤浪がまた１つ、新たな勲章に挑む。【山本大地】

　▼高卒ルーキーで４月までに３勝を挙げた新人投手はドラフト制以降（６６年以降）ではまだいない。今日藤浪が白星を飾れば史上初。２リーグ制後では５３年権藤（洋松）４勝、５４年梶本（阪急）４勝、５５年有吉（西鉄）３勝、６２年尾崎（東映）５勝で４投手が３勝以上を挙げている。

　▼高卒新人で３、４月の月間ＭＶＰを受賞した選手はいない。セ・リーグでは８７年８月近藤真一（中日）が１８歳１１か月。パ・リーグでは９９年７月松坂大輔（西武）が１８歳１０か月で最年少受賞している。過去にルーキーで４月の月間ＭＶＰを受賞したのはセ・リーグでは９８年４月の小林幹英（広島）。パ・リーグでは８０年木田勇（日本ハム）、８５年郭泰源（西武）、８７年阿波野秀幸（近鉄）、９２年河本育之（ロッテ）、９７年小坂誠（ロッテ）がいる（外国人選手を除く）。

　［2013年4月28日11時16分　紙面から］