カシミール　中国「越境」長期化　異例、印とにらみ合い続く

(産経新聞)

　【ニューデリー＝岩田智雄】インドと中国、パキスタンが領有権を争うカシミール地方で中国軍が中印の実効支配線を越えて駐屯地を設置したとされる問題で、中印両国の対立が長期化している。軍の撤退を求めるインド側の要請に中国側は越境を否定し、２５日には、中国軍がインド支配地域上空でヘリコプター２機を飛ばしていたことも明らかになった。東シナ海や南シナ海で、領有権を主張して日本やベトナム、フィリピンと対立している中国は、西のインド国境付近でも、強硬な態度に出ている。

　インド政府の発表やインド・メディアによれば、中国軍の小隊は今月１５日、カシミール地方の中印実効支配線を約１０キロ越えてインド北部ジャム・カシミール州に侵入し、テントを設営した。インドも国境警備隊が中国軍の駐屯地から約３００メートルの場所に野営地を設置し、両者がにらみ合う形になった。中国軍がインド側に駐留する行動に出るのは異例の事態で、１９８６年に印北東部アルナチャルプラデシュ州で起きて以来との報道もある。

　インド外務省のアクバルディン報道官は２３日、両国の実効支配線の認識の違いが原因で、中国側に侵入前の状態に戻るよう要請し、両国軍間でも２度の軍担当者間の協議が行われたが、話し合いは決裂した。ＰＴＩ通信によれば、中国外務省の華春瑩報道官は２４日、北京での記者会見で「中国国境部隊の行動は通常の警戒活動の一環であり、一歩たりとも実効支配線を越えていない」と反論した。

　また、２５日付のインド紙タイムズ・オブ・インディアは、中国軍ヘリ２機が２１日、インド側上空に飛来し、食料品やたばこ、メモを落としていったと伝え、エスカレートする中国の行動がインドを刺激している。クルシード印外相は２５日、予定していた訪中を来月９日に行うと発表し、緊張緩和に努める方針だが、事態がさらに長引けば来月にも行われる中国の李克強首相の初訪印に影を落とす可能性もある。