東京電力福島第１原発事故で二重生活を強いられている自主避難者の高速道路無料化が２６日午前０時に始まった。「これからは娘と、もう少し一緒の時間を作れるかな」。妻（４０）と秋田市に避難中の長女（４）が映る携帯電話の画面をながめ、福島市の会社員、小野嘉之さん（３９）は話す。ただ、家計の負担軽減は限定的で、再び福島で一緒に暮らせる見通しも立たない。【深津誠】

　事故後の１１年８月、外遊びできないなど発育への影響を重視して妻子を避難させ、一人で福島に残った。高速道路が無料の間は月２回は行き来できたが、１２年４月に有料に。会える機会は徐々に減り、今は月１回程度だ。

　両市間は約２２０キロ。車だと往復で、高速代約７０００円とガソリン代が５０００円以上かかる。高速有料化後は約９０００円で済む高速バスに切り替えたが、便数が少なく滞在時間も減っていた。大型連休中に帰宅する長女に、絵本を読み歌を歌ってあげる時間を心待ちにしている。

　だが、二重生活の家計の負担は、高速代にとどまらない。秋田で暮らす妻も車を買わざるを得ず、光熱費やガソリン代も二重に。妻子のアパートの家賃月６万円は秋田県の補助を受けているが「もし補助が打ち切られれば、避難は続けられない」と打ち明ける。