第1話 ニューヒーロー、誕生。
―N歴0018年。
N歴というのは、西暦でいうところの2013年に、アメリカ第44代大統領エイブラハム・ネクサスが改定を発表した。
理由は表沙汰になっていない。
が、そこには何か陰謀があるのではないか、などと都市伝説が囁かれている。
―ニホン・きずな町。
真夜中の公園に、生身で化け物と戦う少年の姿が。
少年の名前は頼堂 憂介。
17歳、高校2年生。
憂介は体に紫色の電気を纏わせ、
化け物を殴っていく。
「くっ、俺ははやく寝てぇんだよッ!さっさと死ねッ!」
何度も殴る憂介。しかしこの化け物には少々効いていないようだ。
「我はテンシ…人間を向こうへ連れて行く…」
グロテスクな体つきとは裏腹に、白く綺麗な羽根を付けた化け物は、殴られてもなお、この言葉を繰り返す。
「テメェはただの悪魔だよww
ってか、何でも羽根生やせば天使になれるとでも思ったか?www」
「我はテンシ。人間を向こうへ連れて行く…」
「…ったくキリがねぇな。アレで決めるしか…」
憂介は高く飛び上がり、化け物の腹に向かい両足で蹴りを入れる。
まるで針を刺す蜂のようだ。
化け物は低く鈍い声を挙げながら消滅し、白い羽根だけが残った。
「さ~てと、家に帰って寝るか~。」
憂介は公園を後にした。
―朝になると、1人の少女が
憂介を起こしにやってきた。
「憂介く~んっ、起きてくださ~いっ、
はやく顔洗って朝ごはん食べちゃって下さいね~」
少女は倉森 憂奈、憂介の幼馴染である。
「んん、わーったよ、わかったからデケェ声出すな。」
憂介の両親は大体仕事でいないため、憂奈はこんな面倒な男の世話をしている。
「相変わらずうまいな、お前のメシは。」
なんてことを呟きながら、憂介は味噌汁をすする。
「あ、朝から変なこと言わないでくださいっ///」
顔を真っ赤にしながら、憂奈が返す。
憂奈かわいいよ憂奈(´Д`)アハーン
「お世辞じゃねーぞ、少なくとも母ちゃんのよりはうまい。」
「そんなわけないですっ、私おばさんから料理教わったんですからっ!
ってか、もう遅刻しちゃいますよっ!」
朝食を済ませた2人は、手を繋ぎながら通学路を歩き出した。リア充死ね☆
「あのさ、1時間目ってなんだっけ?」
憂介が切り出す。
「えーっと、たしか日本史ですっ。」
「げっ、崖島の授業じゃねーか!ダリぃな~…」
憂介の言う崖島とは、社会科の教師、崖島 茂分吉のことである。
女子生徒にセクハラまがいな行為を繰り返す、迷惑なおっさんだ。
「またお尻さわられるのかな…」
憂奈がしょぼんと顔を下に落とす。
「そんときは俺がぶっ殺す。今度こそ教師やめさしてやる♪」
憂介はそう言って憂奈の頭を撫でた。
暴力の話になるとノリノリである。
「もう着いちまったよ~ダルい~帰りたい~」
憂介がガキのように駄々をこねる。
「わがまま言わないでくださいっ。どうせ授業中寝てるんですから、変わんないじゃないですかっ。」
憂奈が親のように叱る。
校門をくぐるとき、憂介は何か妙な殺気を感じた。
そう、毎晩感じる、テンシと名乗るあの化け物の気配だ。
(まさか…アイツらが出るのは夜中だけじゃねぇのか?)
「…憂奈!わりぃ、先に教室に入っててくれ。」
「へっ?は、はいっ!」
憂介は自分のバッグを憂奈に預けると、
毎朝校門前に立っている、崖島の顔を伺う。
いつもならハイテンションで挨拶をしているのだが、今日だけは言葉すらも発さずに、うなだれていた。
憂介と目が合うと、崖島はブツブツと喋りだした。
「我はテンシ…人間を向こうへ連れて行く…」
憂介の予想通りだ。
背中から白い羽根が生え、
顔や手足をミミズのような触手に変えた。
「我はテンシ…我はテンシ……」
「うるせぇッ!」
憂介は両腕に雷を纏わせると、テンシの腹や顔にパンチを繰り出す。
「我はテンシぃ…我はテンシ!」
子供が泣きわめくように、テンシは低い声で叫ぶ。
しかし、テンシは叫ぶだけで、体は全く動じない。
「テンシッ!テテテテテテンシィィィィィ!」
テンシは触手を地面に叩きつけ、地割れをつくる。
「…ッ!ダメだ、俺の攻撃が効かなくなってきてやがる!」
テンシとの戦いを始めて約1ヵ月、憂介は段々と苦戦を強いられるようになってきていた。
「これならどうだッ!」
憂介は少しテンシから距離を取り、電撃を放ってみる。しかし効かない。
テンシは触手を伸ばし、憂介の頬を殴る。憂介はそのまま、2mくらい吹き飛ぶ。
「くッ!もうダメなのかよ…俺の"カタガキ"はよぉ!」
憂介は限界を感じ始めていた。
そこに1台のリムジンが現れ、絶世の美少女が降りてくる。
「おいッ!危ねぇから来るんじゃねぇッ!」
憂介が叫ぶ。
しかしその美少女は、憂介に歩み寄ってくる。
「私、"天使との約束の会"会長秘書・芦原 愛美と申します。頼堂憂介さん、これをお渡しに…」
愛美は憂介の左腕に腕甲のようなものを取り付け、
蜂を模した機器をペン状に変形させ、憂介の手に持たせた。
「…は?意味わかんねぇよ!何だこのガラクタッ!」
「これは私たちが開発した、コンフロントギア。
カタガキの力で全身に装甲を生成するペリフェラルデバイスです。
コアシリンダー<アーマリング>を体に刺して、エレメントをチャージしてください。」
「は?俺は注射がニガテなんだよ!
…だけどこうなったら、やるしかねぇな…。」
憂介は言われた通りにペン状の機器"コアシリンダー<アーマリング>"を右腕に刺し、紫色の雷を溜めると、左腕のガントレットにセットした。
"Hatchi!Armoriiiiiiiiiing!"
コンフロントギアの起動音が鳴り響き、憂介の全身は雷を纏うと、それは装甲へと形状を変えた。
紫と黒を基調としたメタリックなボディ、頭部は蜂を模しているようだ。
「なんだよ…これ…!」
「コンフロンター第1号…変身成功です。」
愛美は何かと連絡を取っているようだ。
憂介は左手を見つめ、拳を握ってみる。
(これなら…いける…!)
「ナントカ第1号?ダッセェな。
俺様の名前は…"ハッチ"だッ!」
勢いよくテンシに飛びかかるハッチ。攻撃は大分効いているようだ。
「グゥゥゥゥゥ!ウゥゥゥゥゥ!」
テンシは吹き飛び、のたうち回る。
「結構イケるじゃねぇか…
んじゃ、いつものアレで決めちゃいますか~!」
「トドメには、これを使ってください!」
愛美は、コアシリンダー<ファイナルブロウ>をハッチに向かって投げる。
ハッチはそのまま、ガントレットにセットする。
"Hatchi!Final Blow!"
コンフロントギアが声を発すると、待機音と共に、ハッチの両足に雷が集中する。
「エレクトリック スライダー…!」
ハッチは高く飛び上がり、テンシの体を両足で貫通する。
そう、針を刺す蜂のように。
テンシはまた、羽根を残し消滅した。
"Mission Complete!"
コンフロントギアのアナウンスで、変身は解除された。
「ふぅ~、爽快爽快♪」
満足げな表情の憂介。
「おめでとうごさいます。それでは頼堂さん、お話がありますのでこちらに乗ってください。」
と、愛美はリムジンの方へ手を指した。
To Be Continued...
次回、第2話 紫雷の味は蜜の味
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