世界変動展望

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業績リストの論文数水増し例1 - 東京医科大学の事例

2012-08-12 00:11:07 | 社会

少し前になりますが、昨年の1月に東京医科大学の整形外科教授の論文が二重投稿で撤回になり朝日新聞で報道されました[1]。

『東京医科大学の整形外科の教授(52)が複数の英語論文について、二重投稿したり、同僚の論文に自分を筆頭筆者として加えて投稿したりしていたことが朝日新聞の調べでわかった。一部は2004年の教授選の選考で業績に挙げていた。大学側は論文2本を二重投稿と認定し、厳重注意した。日本整形外科学会も調査している。

 朝日新聞の調べでは、大学側が二重投稿と認定した2本は、04年と09年に海外の専門誌などに載った論文。このほか、 03〜06年に、7本の日本語論文の主要なデータを英訳して、海外誌に載せていた。こうした投稿も、二重投稿とみなす学会や科学誌も少なくない。当時、明 確な基準がない雑誌でも、日本語のオリジナル論文があることを示すことを原則としていたが、7本ともその旨を明記していなかった。教授は今後、大学の助言を受けて、教室の全論文を点検、論文の修正や取り下げが必要か検討するという。

 この7本の中には、15年前のデータを再使用して、海外 誌に投稿した論文もあった。90年の日本整形外科学会誌と05年のアジア太平洋整形外科学会(APOA)の雑誌に載った論文で、特殊なマウスの関節を写し た同じ電子顕微鏡写真10枚が使われていた。日本語の論文は90年以前に研究されているが、APOA誌には「00〜03年に行った研究」と書いていた。こ の教授は「『あらためて検討した』と書くつもりが、『研究を行った』との誤訳になってしまった」と説明している。

 日本の雑誌に掲載され た同僚の論文に、自分の名前を中心的な役割を意味する筆頭筆者として加えて、海外誌に投稿していた例も複数あった。その理由について、同僚の論文でも研究には参加していたため、と説明している。一方で、共同筆者の1人は「教授の論文投稿自体、記憶にない」と話した。共同筆者から筆頭筆者に変わっていた論文 もあった。

 教授に就いたのは04年4月。東京医大の教授になるには「英文論文が10本以上、5本は筆頭筆者」という条件が02年に加わった。二重投稿など問題のある論文9本のうち、3本は教授選考の評価対象だった。

 教員の処分を決める大学の裁定委員会は昨年6月、論文2本を二重投稿と認定。ただし、1本について、教授が事前に雑誌に取り消しを申し出ていたことを考慮して、教授への処分は厳重注意にとどめ、非公表としていた。

 教授は「英語論文はほかにも出しており、教授選のために水増ししたつもりはない。論文投稿について認識が甘かった。今後このようなことがないよう徹底したい」と話している。(杉本崇、林敦彦)[1]』

撤回された論文の一部は[2]に挙げました。一部では実名報道されましたので書きますが、この教授は山本謙吾氏です。報道によれば二重投稿論文は教授選の評価対象だったということですから、山本氏が提出した業績リストには水増しがあったことになります。

水増しというくらいですから、山本氏は業績リストに重複発表論文を記載することを不適切だと認めているのでしょう。しかし、報道はないので山本氏の教授選の見直しはなかったのでしょう。

評価用の業績リストで重複発表論文を記載するのは水増しで、井上明久東北大前総長の業績水増しもJSTの第三者委員会(御園生誠委員長)や東北大学有馬委員会でも注意されました[3]。

なぜ二重投稿が起きるのか?その一番の理由は業績を水増しするためです。発表論文数が高いほど昇進や研究費獲得に有利なので、重複発表が起きるのです。報道で山本氏は「教授選のために水増ししたつもりはない」と発言しています。しかし、現在はもう閉鎖されてしまいましたが、論文撤回Watchの記事で次のような考察がありました。

『実は09論文は2003年7月に雑誌社に投稿されているのです。

そして論文発表の許可がおりるまで、約1年かかっています。

さらに論文が掲載されたのが2009年ですから、

かなりスローなプロセスです。

一方、雑誌社が03論文の原稿を受理したのが2003年6月で、
論文掲載の許可がおりたのが、2003年の8月となっています。

ですから著者らは、わずか1ヶ月の間に同じ内容の2本の論文を投稿したわけです。

 朝日新聞の記事によると、

教授に就いたのは04年4月。東京医大の教授になるには「英文論文が10本以上、5本は筆頭筆者」という条件が02年に加わった。

とあります。
 
教授選挙に向けてさらに1本の論文が早急に必要だったとみるのが理にかなっていると思います。[6]』

山本氏は教授選のために論文を水増しするために二重投稿をしたのでしょうか?結局教授選は見直されなかったのですから、今となってはどうしよもないことです。ただ、水増し業績をもとに選考を行ったのですから、公正だったとはいえません。山本氏も東京医大もきちんと反省し、評価法を見直してほしいと思います。

このような「業績リストに重複発表論文を載せて水増し!」という例は、いろいろな研究機関でたくさんあるでしょう。過大評価をしてしまうため、JST御園生委員会、東北大有馬委員会などで不適切さが指摘されています。水増しをしましたが、山本氏は水増しを認めているだけ、まだまともな考えの持ち主だと思います。

参考
[1]asahi.comの記事 2011.1.7
[2]撤回論文 2011.8
[3]世界変動展望 : "論文数水増しによる業績評価について" 世界変動展望 2012.6.25
[4]井上過冷金属プロジェクト研究成果確認調査チーム:"井上過冷金属プロジェクト研究成果確認調査報告書" 2012.1.18
[5]"研究者の公正な研究活動の確保に関する調査検討委員会報告書" 東北大学 2012.1.24
[6]山本氏の二重投稿考察の記事

ジャンル:
社会
キーワード
整形外科学 朝日新聞の記事 裁定委員会 電子顕微鏡 アジア太平洋 日本の雑誌
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