【レポート】
そして、もうひとつ。エネループのロゴが「Panasonic」ロゴに変えられたのは、2013年4月の組織改編において、EVOLTAとeneloopの事業体制が一本化される点が見逃せない。
従来は、エネループとエボルタの開発、生産、マーケティングはそれぞれ別組織で行われる体制となっており、エネループは旧三洋電機のスキームがそのまま利用されていた。そのため、パナソニックに買収されても、コンシューマー製品としては唯一、パッケージなどにも「三洋電機」の名前が刻まれていた。だが、今後は組織再編によってこれが一本化される。今回の製品では、本体、パッケージも含めてパナソニックブランドに刷新。その点でも、同じ組織のなかで、統一したロゴを前面に打ち出すという流れは、当然といえば当然なのだ。
だが、それでいいのか?というと、話は別だ。
エネループに対する国内の認知度は8割以上となっており、リピーターも多い。
そして、量販店店頭に訪れる購入者のなかには、エネループという製品名をあげた指名買いをしていくケースが多くみられるという。電池では異例ともいえる白いデザインは、エネループが築き上げた充電池の定番カラーとなっている。製品名で購入を促進できる製品はそれほど多くはない。
つまり、今の消費動向からすれば、「eneloop」というロゴマークを、大きな表示として残すことが、最適な判断だったのではないだろうか。エネループには、「energy(エネルギー)を、loop(循環)させる」という同製品のコンセプトや、世界で通用させるブランドに育て上げることを目指そうという意気込みが込められていたという。
実は、旧三洋電機社内でブランド名を決定する際に、「NANDOMO(ナンドモ)」という候補が最後まで残ったという話がある。これは、日本の主婦層を主要ターゲットとする狙いから残ったものだった。だが、経営陣からの後押しもあり、将来的なグローバル展開を目指して、エネループという製品名が採用された。
実際にエネループは、現在世界60カ国以上で販売されているグローバル商品となっている。今後、パナソニックにとって、重要な全社戦略となるグローバル化に合致したネーミングという点では、エネループというロゴの扱いをもっと大切にする必要があったのではないか。
例えば、一歩ゆずって、「eneloop by Panasonic」という表記方法もあったはずだろう。
しかし、パナソニックは、エネループのロゴ表記を大きなサイズで残すという「特例」を認めなかった。そして、エネループの隠れた象徴でもあった王冠のマークは、新たなエネループでは採用されていない。
実は、2009年11月に発売された第2世代のエネループは、2005年11月に発売した第1世代と区別するために小さな王冠のマークが描かれていた。そして、2011年11月から発売した第3世代の製品では、王冠の下に線がもう一本つけられている。
王冠は、充電池でナンバーワンであるというデザイナーの想いを込めたものであり、続いてその下に1本ラインを引いたのは、信頼性、技術的な優位性をさらに一歩進め、ナンバーワンのシェアを維持するという姿勢を意味したものだといえる。新製品では、そのこだわりのマークも廃止された。
こうした動きは、「松下」「National」、そして「Technics」といったブランドを捨ててきたパナソニックにとっては、もしかしたら他愛のない判断なのかもしれない。
製品ブランド価値よりも、企業ブランド価値を高めることに重点を置く施策も理解できる。だが、消費者は製品ブランドに愛着を感じるものでもある。
2013年1月、エネループは、2億5,000万本の累計出荷を達成した。
2億5,000万本のユーザーに、エネループという「ブランド」を根付かせてきた実績を捨て去るような形にデザインを変更したことには、どうしても疑問が残る。
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