悪い時こそどうするか、 黒田が粘って通算60勝
MLB.jp(GyaO!) 4月26日(金)17時10分配信
黒田博樹が名門ヤンキースの本拠地で、メジャー通算60勝を挙げた。
日本人メジャーリーガーでは、野茂英雄の123勝に次ぐ歴代第2位。節目となる輝かしい成績をマークした今日の試合では、イチローがマルチ安打とシーズン初盗塁を記録し、相手ブルージェイズでは、今日もスタメンの川崎が二塁打を放つなど、日本のファンに嬉しい見どころもあった。
一見すると打った、走った、勝った、の三拍子が揃ったが、内容としては過酷さが際立った。相手は、前回と同じブルージェイズ。先発も同じバーリー。先発を担った黒田は、立ち上がりから試練に直面した。
立ち上がりの初回、2回で黒田は3失点を喫した。ストライクゾーンにボールが収まらず、球が高めに浮いた。スライダーだけでなく最大の武器であるツーシームにもキレがない。
ヤンキースタジアムのマウンドは、羨望の眼差しを集める半面、一瞬にして集中砲火を浴びる格好の舞台にもなる。そのため、この名門チームで戦う投手には、並々ならぬ精神力が必要だ。結果がすべて。その上、途中経過のミスにも手厳しい。
「黒田を代えろ!」「こんな展開見たくない」「イライラする」。
現地では瞬く間に、こんなツイートが多く流れた。球場内の異様なざわつきも収まらない。
ニューヨークファンには、シーズン最長となるホーム10連戦の初日だった。多くの現地ファンが期待に胸を弾ませていたことだろう。黒田は、ここまで2勝1敗、防御率2.35でチームを牽引しているが、ファンは容赦ない。球場にはあまり家族を呼びたくないと黒田は語っているが、漂う雰囲気には十分な説得力があった…。
しかし黒田は、関係者や玄人には信用が厚い。現地実況は、「ここからが見ものですね。黒田のことだ。どう立て直してくるか。とくと拝見しましょう」と、ファンの反応とは対照的に冷静なコメントだった。ジラルディ監督も動じることはなかった。試合後のインタビューでも、「3回までスライダーがよくなかったし、今日の黒田はあまり良くなかったね」と認めながらも、ベンチで見守っていたことを明かした。指揮官の黒田への信用度が伺える。
悪いなりに整えていった黒田は、初回から変わらぬ闘志もみなぎらせていた。先頭デービスに投じた2球目、甘く入ったツーシームを捕えられると、またして右手を出してベアハンドで打球を止めようとしたのだ。差し出した右手が鋭い中前打に当たることはなかったが、当たっていれば負傷は免れなかっただろう。
黒田は、2回まで2本塁打を含む6安打3失点も、その後は6回まで無安打無四球無失点。見事な立ち直りを見せたが、どれも忍耐強くアウトを奪っている。4回は先頭と2人目の打者だけで16球を要し、続く3人目は味方のエラーで出塁。1球1球をていねいに投じ、要所で味方の好プレーにも助けられながら、何とか切り抜けた。その間に味方が逆転。5対3で勝ち投手の権利を持ったまま6回で降板した。
前日までブルペンの防御率がリーグ15球団中、15位と最下位だったヤンキース。前回は、後続が打ち込まれて黒田の勝ち星は消えてしまったが、今日はリリーフ陣が凌いだ。7回はチェンバレンまでもがベアハンドプレーを見せ無失点リレーをつなぐと、8回は前回勝ち星を消したロバートソンが三者凡退。最後9回は、今季限りで引退を表明している43歳のリベラが、わずか13球で3者2三振の快投。キャリア通算1126奪三振と615セーブをマークして試合を締めた。
なお、川崎は今日も “注目”されていた。敵地ヤンキースタジアムなのでファンの大歓声こそなかったが、現地実況は、川崎が打席に立つごとに編集を施した画面で、川崎の特徴を紹介。手元をズームアップしては、「アシックスのシューズはあるけれど、バットなんて珍しい」と感心し、イチローがスウィングする動画を同時に並べては、「似ていますね」と唸っていた。
確実な信頼を築く黒田が価値ある一勝収めた場面に、これまで数々の金字塔を打ち立てたイチローがいて、今後の活躍が期待される川崎がいた。日本のファンにとっては、ことさら記憶に残る試合となったかもしれない。
最終更新:4月26日(金)17時10分