発信箱:「通報者たれ」=小国綾子(夕刊編集部)

毎日新聞 2013年04月23日 00時32分

 いじめ研究者、内藤朝雄・明治大准教授の近著「いじめ加害者を厳罰にせよ」を読んでいて、「いじめの『仲裁者』ではなく『通報者』になれ」という主張にはっとさせられた。欧州との比較研究で、日本は他国よりいじめ傍観者が多いと指摘されてきた。教育現場では「いじめの『傍観者』は『加害者』も同じ。『仲裁者』たれ」という考え方が根強い。

 しかし内藤さんは「暴力団の暴行を目撃した時、警察に通報するだけではなく命がけで仲裁に入らないと『暴力団と同じ』と批判されるのか」と反論する。「傍観者=加害者」という考え方自体が「学校社会特有のいじめをまんえんさせる強制ベタベタ主義」「一人一人の間に個人主義的な距離があってはいけないというおかしな考え方」だと。下手に仲裁に入れば新たないじめのターゲットになりかねないのだから、「『通報者』たれ、と子どもに呼びかける方が現実的」と提言するのだ。

 米国の公立高でスクールカウンセラーをする友人の言葉を思い出した。「米国でもいじめの仲裁をできる子などあまりいない。だから通報して、と呼びかける。通報を受けた時が肝心。教師は『私から聞いたと言わないで』と頼み込む通報者を受け止め、守りながら、いじめ解決に全力を注ぐ姿を生徒たちに見せなきゃいけない。そこで信頼を得られなければ次の通報はもうないから」

 厚生労働省の全国家庭児童調査(09年度)によると、いじめを先生に知らせる生徒の割合は小学校高学年、中学、高校と年齢が上がるにつれ40、25、15%と減っていく。私たちの誰もが子どもにとって「信頼できる大人」であろうと努めなければ、子どもは「通報」してくれない。

毎日新聞社のご案内

TAP-i

毎日スポニチTAP-i
ニュースを、さわろう。

毎日新聞Androidアプリ

毎日新聞Androidアプリ

MOTTAINAI

MOTTAINAIキャンペーン

まいまいクラブ

まいまいクラブ

毎日RT

毎日RT

毎日ウィークリー

毎日ウィークリー

Tポイントサービス

Tポイントサービス

毎日jp×Firefox

毎日jp×Firefox

毎日新聞のソーシャルアカウント

毎日新聞の
ソーシャルアカウント

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞社の本と雑誌

毎日新聞社の本と雑誌

サンデー毎日

サンデー毎日

毎日プレミアムモール(通販)

毎日プレミアムモール(通販)

毎日新聞のCM

毎日新聞のCM

環境の毎日

環境の毎日