周到な事前工作をしたであろうと、現政権党の政治営為を信用していたから、2月のG20会議の時のような緊張感を筆者は持たなかった。
案の定、G20会議の事前に麻生さんは米財務長官と会談し、日本の金融政策は為替政策ではないと合意してもらっている。
議長国の財務長官が味方してくれるし、イングランド銀行もIMFも味方してくれるのだから、途上国やドイツは悔しくも黙っていたのであろう。ともかく無事に済んだ。テレビで見る限りでは、インタビューに答える麻生さんの自信に満ちた表情は面白かった。
もし、G20会議が日本の急激な円安誘導策を非難すれば、1ドル最低5円は下がり、確実に日経平均1,000円以上は下がる。
このくらいの下げは過熱冷ましには結構なことだが、外圧によって下がることは、市場の自律作用としての整理相場ではない。故に、同じ下降現象でも健康体の生理としての一服と怪我で転んだとの違いである。
しかし、2月のモスクアでのG20会議で採択された「為替レートを目的としない。通貨の競争的な切り下げを回避する」という文言は再び明記されたから、いつかは文句が来るはずだ。筆者は多少甘いかもしれないが、それは120円くらいの水準ではないかと思っている。
1) 第1次安倍内閣の時に120円中心、あの時は、米はサブプライム問題という住宅バブル破裂寸前で、日本よりも健康体でなかったが。
2) 榊原氏が図に乗って、米財務長官サマーズを怒らせてしまったのは、その手続きと事前工作の失敗だったろうが、その時の為替水準も120円がらみだった。
3) また、「日本が2%のインフレターゲットを実現させるには、1ドル120円くらいでなければ無理だろう」と米財界の論調もあるやに聞いている(週刊東洋経済誌)。
4) この諸悪のスタート点は、85年の「プラザ合意」だと筆者は思っているが、その時の半分の値が120円だ。120円というと75円から来たから大きく円安になった感じがするが、実はプラザ合意の時は240円だったのだ。その半分に届いたに過ぎない。
というような訳であって、120円までIMF、米英から文句は出まい、というのは何も根拠はない。言わば、筆者の当てずっぽうだとして聞きながされたい。
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▓ 山崎 和邦
慶應義塾大学経済学部卒。野村證券、三井ホームエンジニアリング社長を経て武蔵野学院大学名誉教授に就任。投資歴51年に及び野村証券時代の投資家の資金を運用から自己資金で金融資産までこなす。
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