東北の被災地の海岸には、「もっと高く」と巨大な防潮堤がどんどん建設されて行く。海岸沿いなのに町から海が見えない。住民の疑問の声は一切聞き入れられない。そして、全国で景気対策として無駄な道路建設が始まる。やってはいけないと言っていたバラマキの景気対策の完全復活。
公取委員長と日銀総裁のポスト争いは財務省が連勝で両方確保。表舞台での財務省の完全復活だ。経産省は、原発事故の責任で鉄槌を下されるどころか、補正予算で当初予算を超える額を獲得して笑いが止まらない。国交省も農水省も嬉しい悲鳴をあげている。無駄なものでも止める者はいない。全てを官僚が仕切る官僚主導の完全復活。
原発はゼロを目指すどころか、安倍政権は早くも再稼働に舵を切り、脱原発政策は放り投げて原発推進へまっしぐらだ。原子力ムラからの独立を目指して作られた原子力規制委員会と原子力規制庁。その規制庁は経産省と文科省からの出向者で固められ、幹部が日本原電に情報漏洩して、原子力ムラとのずぶずぶの癒着を曝け出したと思ったら、当の幹部官僚は、あっという間に文科省への凱旋帰還が認められて、名実ともに独立機関でないことがはっきりした。
核燃料サイクルも継続の方向だ。世界最高水準の安全基準をと言っていたのに、わずか数ヵ月で出した基準骨子はスカスカのザル規制。パブリックコメントを受け付けたというが、その要件は何と「2000字以内」。小学生の読書感想文並みだ。専門的に詳細な意見を出されたら反論できないからだろう。このまま見切り発車の構えだ。
電力システム改革も、発送電分離は、言葉だけが躍るが、内容は中途半端でしかもかなりの先送り。そのうち雲散霧消という狙いだろう。原子力ムラの完全復活だ。
変われない日本。官僚のせいなのか、政治家のせいなのか。いや、変わることを恐れる私達国民自身の責任なのではないか。
『週刊現代』2013年3月23日号より
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