兵庫・尼崎の連続変死:「美代子元被告が暴行」 安藤さん死亡再逮捕、親族が供述

2013年03月07日

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遺骨の置かれた仏壇に手を合わせる安藤みつゑさんの弟=兵庫県尼崎市で2013年3月6日午前9時19分、宮武祐希撮影

 兵庫県尼崎市の連続変死事件で、同市の民家床下から遺体で見つかった安藤みつゑさん(死亡時67歳)への暴行について、親族は角田(すみだ)美代子元被告(同64歳)=自殺=がやった、と供述していることが捜査関係者への取材で分かった。兵庫・香川両県警合同捜査本部は6日午後、美代子元被告以外の親族も黙認していたとみて、安藤さんに対する傷害致死と監禁の両容疑で既に再逮捕した4人に加え、親族3人も同容疑で再逮捕した。

 新たに逮捕されたのは▽いとこの李正則(38)▽内縁の夫の鄭(てい)頼太郎(63)▽仲島康司(43)−−の3被告=殺人罪などで起訴。李容疑者は「私はしていません」、鄭容疑者は「知らないです」と容疑を否認。康司容疑者は認めているという。

 捜査関係者によると、安藤さんが美代子元被告の孫を叱ったことが暴行のきっかけ。親族らは、激高した美代子元被告がバルコニーの物置内で安藤さんを殴ったり蹴ったりしたと供述したという。

 安藤さんは当時、遺体で見つかった仲島茉莉子(まりこ)さん(死亡時26歳)と物置に監禁されており、美代子元被告が茉莉子さんにも安藤さんに暴力を加えるよう仕向けていた疑いもあるという。

 7人の再逮捕に安藤さんの弟(65)は、「殺人容疑で逮捕してほしかった。7人は、自殺した美代子元被告に罪をなすりつけるだろう。重い刑罰は期待できない」と残念そうに話した。尼崎市の自宅にある仏壇の前には、今も姉のお骨がある。事件の影響もあって納骨が遅れており、受け入れてくれる寺を探している。「死に際を想像するとつらく、かわいそう」。改めて姉の無念を思った。【山川淳平、宮武祐希、藤顕一郎】

 ◇自殺恐れ容疑者、情報共有が必要−−県弁護士会と県警

 角田美代子元被告が兵庫県警本部の留置場で自殺した問題を受け、県弁護士会は6日、県警担当者と意見交換し、自殺の恐れがある容疑者の情報を共有する必要性があるとの認識で一致した。参加した松本隆行弁護士によると、弁護士会側は、勾留中の容疑者に弁護士だけでなく医師も接見し、診察が受けられる仕組み作りなどを要望した。【渡辺暢】

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 ■解説

 ◇殺意の立証困難

 6人の遺体が発見された尼崎連続変死事件。合同捜査本部は安藤みつゑさんの死亡について、橋本次郎さん(死亡時53歳)と仲島茉莉子さんの事件で適用した殺人容疑ではなく、傷害致死容疑での立件を選んだ。

 安藤さんは橋本さん、茉莉子さんと同様に物置で監禁され、暴行を受けて死亡したとされる。一方、この2人と違って監禁期間は約1週間と短く、食事を与えられていたとの供述もあるという。高血圧の持病があったことや死因が不明だったこともあり、捜査本部は殺意の立証は困難と判断した。

 捜査本部は、安藤さんとともに尼崎市の民家床下で遺体で見つかった谷本隆さん(発見時68歳)と、高松市の倉庫の地中から遺体で発見された皆吉ノリさん(同88歳)の事件も、殺人容疑での立件を視野に捜査を進めるとみられる。

 だが谷本さんは死後数年がたち、死因は不詳だった。皆吉さんの死因は肺挫傷などによる呼吸不全と判明し、肋骨(ろっこつ)骨折など全身に殴られたような痕があったが、死後9~10年が経過していた。捜査幹部は「関係者の当時の記憶は鮮明ではない」と話す。直接証拠が少ないため、供述に頼らざるを得ない部分もあり、難しい捜査になりそうだ。【山川淳平】

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