環境援助と言う第2幕

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今回の記事は、ニューズレター・チャイナ読者に配信している「NLC通信」の抜粋である。
NLC通信では毎月4回の定例配信以外に月に最低でも1回はこのようなレポート、推薦図書、さらにはエッセイなどを読者の方に送らせていただいています。


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●対中援助について書く。
現在、安倍内閣は水面下で政府内の多国間技術支援機構を通じて、中国側に環境技術の提供を打診している。
理由は中国指導部内に日本からの2か国間援助に警戒的かつ慎重な意見があるからだ。そのため、安倍政権は中国も被援助国となっている多国間向け技術援助を担当する政府内の某交流機関を通じて、迂回スタイルの援助を提案しているというわけなのである。これなら中国も乗りやすい。
安倍内閣の中国向け環境支援は政権内部に反対意見は存在していない。安倍総理も前向きである。すべては首脳会談実現のための環境整備が目的である。


●なんのことはない。これでは対中ODA削減の代償としてアジア開発銀行が利用されたあのパターンの再現ではないのか。日本国民の反対に直面した政府・財務省はODAと言う二か国間の援助ではなく、国民がほとんど知らないアジア開発銀行を通じて迂回融資を本格化させていたのである。


●これがいかに異様なことなのか。それはアジア開発銀行の融資の半分以上が外務省主導のODAでは禁止されたはずの「交通インフラ」部門に集中していることである。「交通インフラ」とは鉄道、道路、空港、港などを指し、それらはいずれも人民解放軍の絶対的影響下に置かれている。


●たとえば北京、上海などの国際空港も解放軍の都合しだいでいかようにも民間機のフライトは変更される。また鉄道省の歴代の最高首脳はいずれも解放軍の実力者やその系列下のテクノクラートが目立つ。具体的には鄧小平の右腕で、西南軍政委員会の高官職にあった元副首相の万里、あるいは朝鮮戦争時、中国義勇軍の兵站を受け持った元少将、さらには建国以前からの生粋の軍人で、張学良の秘書をしていた人物もいる。


●こういう解放軍の影響下にある鉄道部門に日本のODAとアジア開発銀行からの融資は継続的に続けられ、いつの間にかその額は世界1となっていったのである。また援助で建設された四川省とチベット・ラサを結ぶ高速道路はチベット有事の際、解放軍が鎮圧のために独占的に使用を許されている場所でもあるのだ。
だが、ことはこれだけではすまない。先ごろ逮捕された鉄道相の解任理由は「鉄道建設に絡む業者からの収賄」であった。
深刻なのは、賄賂に関する噂として、日本のODAを利用した鉄道建設に絡み、日本の鉄道メーカーが担当機関の鉄道省高官に賄賂を贈っていたとささやかれていることだ。


●言うまでもないが、これほど膨大な援助を行ってきたのは民主党ではない。歴代の自民党政権である。こりもせず、安倍政権はさらに中国向け環境援助に踏み出そうとしているのである。すでに日本の環境援助額は1兆数千億円に達している。それでいて、反比例するかのように、中国の環境汚染は進むばかりである。成長最優先のつけである。
それならば、とまたまた日本政府が乗り出して、タダで世界一のレベルにある日本企業の環境技術を提供しようというのである。ここまでくれば、アホくさいとしか言いようのない話である。


●中国に強い安倍政権のもとで、なんの総括もないまま、さらに膨大な援助が尖閣を自国領だと居直る中国に対して始まるのである。


●今回もまた事態はTPPと同じである。
マスコミは援助やむなしのトーンで一貫しており、援助やるべしの翼賛報道に終始している。これでは国民の怒りが大きな渦になる可能性は期待できまい。


●まだある。今回も政治的な配慮から安倍崇拝者たちは沈黙するだろう。
安倍ちゃん大好きな「保守言論人」たちも同様である。
民主だろうが、自民だろうが中国向け援助の中身は日本国民の血税である。消費税も8%、10%とアップすることが決まってしまった。それでも中国援助はどんどんやりますとみんなの安倍ちゃんは言うのである。
だが、政治家に対する評価は是是非非でなくてはならない。そうでないと多くの共感を得ることは困難だろう。


●最後に。
アジア開発銀行と言えば先ごろ日銀総裁に就任した黒田東彦氏。当時、財務省にいた彼をアジア開発銀行の総裁に推薦したのは安倍晋三氏であったと当時の大手政治部記者は語っている。


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DVDを2枚、同時発売です。

1枚は、昨年の夏、中国人ジャーナリストが中国人向け北朝鮮ツアーに参加した際のビデオを解説・編集したもの。正規の取材ではないため、映像的には見づらいところもあるのですが、首都ピョンヤンにおける中国ゼネコンの都市開発状況や朝鮮戦争関連記念施設における中国パッシング【無視】のすさまじさなどが映像で確認できます。北朝鮮における中国の影を実感してみてください。
私の解説もたくさん入れておいたので、日本の地上波のコメントよりも勉強になるはずです。(青木直人)


もう1枚は、4月14日のNLC定例講演会を納めたもの。
今回のテーマは急激に縮小する出版市場の現状、硬質なテーマから目を背けがちなテレビ・新聞の実態、さらに佐野眞一さんの盗作事件からかい間見えるフリーランスの仕事の劣化など、が中心になります。
マスゴミを非難するのはいいのですが、それを声高に語るネット言論もまた極めて危うい構造にあるのではないのでしょうか。
そんな思いから佐々木さんをゲストにお呼びしました。
収録時間2時間8分


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