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February 2008

今ここに在ること自体が夢のよう
子らの寝息で現に戻る

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あふれ出づる 声に心を傾けし
紡いだ糸を 何処にかかけむ

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恍惚

懐より 乳を曾孫に含ませんと
とり出だしたる祖母
母性忘れじ

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情熱

未だ赤き吾の頬にて融ける雪
吾は何にぞなるべく在りや

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御風

吾が胸に「静かに吾も」と問ひし人よ
吾は故郷を離れて生きる

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北アルプス

広き空 雲なき天を支えるは
雪をたたえた遥かな峰よ

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停車場の高き明かりに透ける空
湧き出る雪よ
我を清めん

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低い空 暗い場所から落ちる雪
見上げる私
時は止まりて

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鎮魂

「おしん」より酷い人生だったよと
嘆く祖母の手皺深き頬

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さんかく

私と彼女 振り子のように揺れる彼
戻るわけない
信じる?愚か?

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教室で「じっと手をみる」と教えられ
思わず手をみたみんな
老けたね。

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変心

耳を塞ぎ 目を閉じて
ただ「過ぎるよ」と
言い聞かせては恐れたあの日

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久しぶりで訪れた街
すれ違い
彼は私に気付くだろうか?

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コトバ詰めて
波の間に間に解き放つ
流れつくのは奇跡 
だけどね

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願っても 見ることナカッタ
「君」の夢
今何故か見る
もう大丈夫

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受話器ごし 火を熾す音 カチカチと
そばにいるより感じる気配

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音の無き 朝に広がる雪景色
根つかぬ街にて故郷を思ふ

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文字だけでぶっきらぼうに話す君
消えてしまって気付く 恋かな

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詞(ことば) 見つけ
くしゃくしゃにして また広げ
順序タガエて 集めた破片

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函の中
ぽんっ と名前を放り込み
糸を手繰って見つけた気配

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この中では花散里かと思いきや
源典侍に近し此の頃・・・

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「君」という
呼びかけぽとりと空から落ちた
あっという間に今年で四十

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キラキラと光る時間はもう過ぎて
キラキラ笑う子供らを見ゆ

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彼のいない街に私は住んでいる
彼にとっては死人と同じ

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十人中九人に好しと言われても
一人の否やに伸ばす黒髪

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今更に「檸檬」手に取り読んでいる
彼に出会った帰らぬあの日

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