震災後、外出したり、ヨウ素を含んだ水を飲んだりしました。子どもの内部被ばくを心配しています。

東京都在住 30代 専業主婦 女性 の方からいただいたご質問
東京都世田谷区に住む者です。今まで子ども(1歳6か月と4歳)が受けた内部被ばく量(特にヨウ素)が気になってしまい、夜も眠れぬ日々を過ごしております。
1. 震災後、これまで同じ場所に住み、マスクをせずほぼ毎日のように近所へ買い物のため外出。3月15日も時間は定かではないが午前中外出。
2. 東京でヨウ素210ベクレル含んだ水を多く見積もって1リットル弱飲んだ。
日本核医学会によると「ICRPから勧告されている小児実効線量限度の1mSvの状況では、甲状腺の組織荷重係数から甲状腺線量は20mGyとなり、この線量では小児甲状腺癌誘発が示されたことはないとされています。小児甲状腺線量は約4.3x10-7 Gy/Bqと報告されています。20mGyに相当する甲状腺集積量は1.3 μCiに相当します。甲状腺ヨード摂取率を正常上限の40%と仮定すると、体内に3.25 μCi、715万cpm(100%の計数効率として)のI-131が体内に入ることに相当します」
とあります。我が子の場合、この基準値以下でしょうか。水だけでも預託実効線量が約4マイクロシーベルトになると思うのですが、いかがでしょうか。
 

ご質問ありがとうございます。以下、順番に回答します。

1. 東京都労働産業局が公表しているデータ1)を使用して計算してみます。それによりますと、東京で空気中の放射性物質濃度がもっとも高かったのは3月15日10時から11時の間で、放射性ヨウ素131が241Bq/m3でした。この1時間屋外に居た場合の吸入による1歳児の預託実効線量は次の式で計算できます。
 預託実効線量(μSv)=実効線量係数(0.072μSv/Bq2))×放射能濃度(241Bq/m3)×呼吸率(5.16m3/日3))×滞在時間(1/24日)
これを計算すると、3.7μSvとなります。放射能濃度は時々刻々変化しますから、外出していた時間について公表データより読み取り上式に当てはめて計算してみてください。その和がヨウ素131についての吸入による預託実効線量となります。放射能濃度をヨウ素132、セシウム137及びセシウム134のものに変えて頂けると、これらについての預託実効線量が算出できます。その際、使用する実効線量係数は、それぞれ、0.00096μSv/Bq2) 、0.10μSv/Bq2) 及び0.063μSv/Bq2)に変えてください。

2. ヨウ素131を210Bq/L含む水を1L飲んだという条件で預託実効線量及び甲状腺の預託等価線量を計算します。ヨウ素131を210Bq経口摂取したことになりますので、ご質問にありました換算係数4.3×10-7(Gy/Bq)2)を使いますと、小児甲状腺線量は210(Bq)×4.3×10-7(Gy/Bq)×1(Sv/Gy)=9.0×10-5(Sv)=90(μSv)となります。預託実効線量については、甲状腺以外に分布している放射性ヨウ素からの線量寄与もございますので、別の方法で計算すると、1歳児で210(Bq)×0.18(μSv/Bq) 2)=38μSvとなります。これは、基準値1mSv=1000μSvに比べて十分に低い値です。
ちなみにご質問中に記載されておりました20mGyの小児甲状腺線量に対する体内放射能量3.25 μCiは、3.25μCi×3.7×104(Bq/μCi)=1.2×105(Bq)ですので、約12万Bqという量です。

1) 東京都労働産業局 都内における大気浮遊塵中の核反応生成物の測定結果について
    (http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/whats-new/measurement-kako.html)
2) ICRP Database of Dose Coefficients: Workers and Members of the Public(1998)
3) ICRP Publ.71(1995)
4) ICRP Publ.94(2004)

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