政治いま:ネット選挙最前線/上(その2止) ゆがんだ鏡に錯覚 脱原発派惨敗「こんなはずでは……」
毎日新聞 2013年04月23日 東京朝刊
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ネットに氾濫する情報が世論をそのまま映す「鏡」になるとは限らない。「脱原発」を掲げて昨年の衆院選に臨んだ日本未来の党の「失敗」がそれを物語る。
12月16日の投開票後、ツイッター上では「自分のタイムラインと選挙結果が違いすぎる」との書き込みが相次いだ。特に未来支持者の間で「脱原発の議席が少なすぎる。こんな結果になるはずがない」など不満のつぶやきが過熱した。
タイムラインとは、フォロー(特定の人の投稿を自身のホーム画面で読めるように登録すること)している投稿者の書き込みが時系列で更新されるページだ。フォロワー(自分を登録してくれている人)が約1万人いる横浜市のブロガー、笠原崇寛(たかひろ)さん(38)は「未来は50議席ぐらいとって第3党になるんじゃないかという勢いをタイムラインからは感じた」と振り返る。
ふたを開けたら9議席の惨敗。笠原さんは「最近のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)はなれ合いが多い。お互いに批判されたくない、共感してほしいという仲間うちのコミュニティーを作っている感じ。発信する側も受信する側も相乗効果で偏って、批判的な意見は聞き入れづらくなっていく」と反省を込めて分析する。
近年、インターネットを活用した「集合知(しゅうごうち)」が注目されている。多数の参加者の知識や判断が集積された結論は、一人の専門家の意見より洗練されたものになるという考え方だ。しかし、開かれた空間であるはずのインターネットがひとたび、声の大きな人たちの支配する「偏った空間」と化せばビッグデータの分析結果も有権者全体の意識・関心から乖離(かいり)しかねない。
昨年11月の米大統領選ではオバマ陣営によるビッグデータの活用が話題になった。「オバマ支持」の有権者情報をネット上から集め、効率的に投票を呼びかけるのが大きな目的だった。