この危機に拍車をかけているのが、北朝鮮の暴発騒動である。「戦争確実」という情報が広まった4月上旬には外国人の"国外逃亡"がさらに加速し、4月5日、KOSPI指数は年初来安値を更新した。
世界では今、アメリカや日本が力強く景気回復をしており、「グレートローテーション」と呼ばれる、資金の株式等への大規模流入が始まっている。だが韓国はそこから完全に取り残され、見捨てられた格好だ。
「北朝鮮問題に絡んで言えば、ケソン(開城)工業団地(南北経済協力事業として北朝鮮のケソンに建設された工業地帯)では、5万人以上の北朝鮮従業員が撤収してしまい、進出していた韓国の企業が大打撃を受けている。北朝鮮リスクは、確実に韓国経済に悪影響を及ぼしつつあります。また、韓国最大の企業サムスンも米国アップル社と特許問題での訴訟を抱えている。すでに出荷差し止めの判決も出ており、これも韓国経済にとっては非常に大きな足枷ですね」(国際問題アナリスト・藤井厳喜氏)
ケソンで操業していた韓国企業は123社にも上り、北朝鮮が工場を停止に追い込んだことによる損害は、なんと1兆ウォン(約866億円)に達するという。韓国にとっては実に深刻な被害と言える。
不買運動も効果なし
黒田バズーカと円安、アベノミクス、それに伴う自国企業の収益悪化、北朝鮮の暴発、逃げる外資……。韓国経済は、"どん底"に向かって負のループに陥ったといって過言ではない。
「韓国の銀行は外資からの借り入れに大きく依存しており、外資が逃げ出すのは死活問題です。では、そうならないように韓国が通貨供給量を増やし、日本に対抗してウォン安にもっていけるかというと、それも難しい。それをやったら'90年代後半のアジア通貨危機の時と同様、『韓国経済は危ない』と判定され、外資の流出がさらに加速する恐れもある」(前出・高橋氏)
つまり韓国側が「日本に圧力をかけて円安をやめさせろ」などとうろたえる背景には、もともと経済基盤が日本よりはるかに脆弱で、危機に弱いという事情もあるわけだ。
日本は円高デフレ不況の中で「格差社会」の弊害が叫ばれてきたが、韓国の場合、その格差が日本よりはるかに大きい。韓国の躍進の象徴は最大企業サムスンの成長だったが、結果的に同国企業のあげる利益の大半がサムスンに集中、それ以外の企業がまったく利益をあげられない歪な構造ができあがり、それが危機をさらに深刻化させていく。
「韓国では中小企業が酷い状況に陥っています。銀行に金利を払うこともできない自転車操業のところに、円安によって売り上げと仕事が急減して、青息吐息になっています。怒って日本製品の不買運動を叫ぶ人々もいますが、そんなことをすれば日本企業からの受注は減るし、そもそも日本人の観光客が激減して観光業や飲食業も大打撃を受けてしまいます。まさに、出口が見えない状態です」(ソウル在住ジャーナリスト)
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