米ボストン連続爆破テロは、発生5日目で解決に向かった。凶悪極まるテロリストを追いつめたのは、防犯カメラの映像に加え、FBI(米連邦捜査局)が保管しているテロリストら約30万人の極秘ファイルと、通信傍受などの情報収集能力だった。一方の日本は、民主党政権の3年3カ月と財政・人員不足で、公安・情報機関の能力は著しく低下している。ジャーナリストの加賀孝英氏が現状に迫った。
「無辜(むこ)の人々に対するテロは断じて許さない。日本国内でテロが発生しないよう万全を尽くす」
安倍晋三首相は17日の党首討論で、ボストンでのテロ事件を受け、こう明言した。現に事件発生後、安倍首相は関係機関に緊急指令を発している。警察庁幹部がいう。
「首相は『国内各所の原発施設、政府関係施設、不特定多数の人々が密集する駅や施設、神社仏閣などの警備・警戒体制を強化せよ』と命じた。事実、日本にもテロの脅威は迫っている」
ところが何たることか、日本の警備態勢の現状は絶望的に近い。
FBIが、テロリストを5日で追い詰められたのは、防犯カメラの高い能力だけではない。以下、旧知の米国防総省関係者、外事警察関係者らから、私(加賀)が取材で得た最新情報だ。
「ボストンがあるマサチューセッツ州政府は否定しているが、CIA(中央情報局)とFBIは数カ月前から、電子メールや携帯電話、インターネットへの通信傍受や一部の特殊情報から、『ボストン・マラソンで何かが起こりそうだ』という感触を得ていた」
「映像でも確認できるが、現場付近の群衆には事前に、CIAやFBIなどの関係者が紛れ込んでいた。爆発前後、彼らは明らかに一般人と違う行動をしていた」
「犯人特定の決め手は、FBIが作成していた『米国市民、約30万人のファイル』だ。これはFBIが認定、マークしている『ドメスティック・テロリストと潜在予備軍』のファイルで、容疑者2人の名前があった。そのデータと監視カメラの映像が一致した」
宗教・民族対立、貧困の拡大など、テロの原因はさまざまあるが、米国は情報収集や危機管理、極秘捜査など、あらゆる面で日本を凌駕している。仮に、約3万人が参加する「東京マラソン」で同様のテロが発生したら国民を守れるのか。冒頭の警察庁幹部も嘆く。
「例えば、公安当局が常時マークする『北朝鮮の工作員および積極的協力者』の数は400人超だが、それすら財源・人員不足で十分に対応できていない。情報収集能力も欠けている。他のテロやスパイ活動の情報は、ほぼ米国頼みだ。加えて、民主党政権の3年3カ月が致命的だった。この間に日本の公安・情報機関はズタズタにされ、長年築いてきたネットワークが破断された」
民主党政権の大罪は絶対に許されない。
日本は決してテロと無縁ではない。連続企業爆破事件やあさま山荘事件、オウム真理教事件など、世界に衝撃を与えた事件が続発している。最近では、北朝鮮のミサイル挑発と連携するように、在日朝鮮人組織の動きが活発化した。警察当局は「原発テロ」の発生を警戒している。
安倍首相、どうか日本国民の生命と生活を守るために、早急に公安・情報機関の立て直しに着手していただきたい。テロは「今そこにある危機」そのものだからだ。
■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍。一昨年11月、月刊「文藝春秋」で「尾崎豊の遺書・全文公開」を発表し、大きな話題となった。
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