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No.3339
2013年4月23日(火)放送
あふれる汚染水 
福島第一原発で何が
見過ごされたリスク 汚染水漏れの真相

今月19日、汚染水の漏えいが発覚してから2週間たった福島第一原発。
汚染水が漏えいした地下貯水槽です。

作業員
「それではポンプ回します。
ポンプ起動。」

現場では、地下貯水槽から地上のタンクへ汚染水の移送が続いています。
合わせて5万8,000トンの汚染水をためる予定だった地下貯水槽はすべて使えなくなりました。

なぜ汚染水は漏れてしまったのか。
地下貯水槽の建設時の映像が残されていました。
内部に白いシートが敷き詰められています。
高密度ポリエチレンシート。
全国の廃棄物処分場でも実績のある素材です。
シートをつなぎ合わせ、貯水槽全体に隙間なく敷き詰めます。
さらに遮水性能を高めるためにシートを二重にしていました。
汚染水の処理、保管など廃炉全体を統括する山下和彦部長。
建設当時、この設計であれば汚染水が漏れることはないと考えていました。

東京電力 福島第一対策担当 山下和彦部長
「少なくともこれについては水を全く通さないといった構造になっているわけです。
しかも2重であって、堅ろうな構造だったと我々は思っていたわけです。
まず漏れるというふうに考えていない設計でした。」

しかし、取材を進めるとポリエチレンシートに弱点があることが分かってきました。
ポリエチレンシートの漏えいについて研究してきた熊谷浩二さんです。
熊谷さんが注目したのは、福島第一原発の地下貯水槽の特殊な構造でした。
放射性物質を含んだ水が漏れたことを検知する配管を備えていたのです。

配管の周りには布が敷き詰められていました。
そこだけが周辺の土より柔らかい構造になっていたのです。
そのため、水の圧力によって配管の周りのシートにゆがみが生じます。
その結果、シートが伸びて穴が開いた可能性があると熊谷さんは考えています。

八戸工業大学 大学院 熊谷浩二教授
「まあ、伸び率としたら2パーセントとか、そんな問題かもしれませんけども、やはり伸びちゃいけないシートが伸びたということで、そこが弱点となって。
一瞬では穴はあきませんけれども、ずっと時間がたてば穴があいたりしていくと。」

東京電力も同様に、配管の周りの部分が弱点になった可能性があるとしています。
さらに、ポリエチレンシートの外側にある別のシートの備えにも問題がありました。
厚さが不足していたのです。

東京電力が使っていたものと同じタイプのシート。
厚さ6.4ミリのベントナイトシートです。
ベントナイトは粘土の一種で、水を含むことで膨らみ、水を通しにくくなります。
6.4ミリのベントナイトシートでは、どれだけの時間水漏れを防ぐことができるのか。
専門家やメーカーが実験を行いました。
結果は、僅か8日間で水漏れが起こるというものでした。

実は廃棄物の処分場では、ベントナイトをより厚く敷き詰めています。

作業員
「62ミリですね。」

ベントナイトの専門家によれば、25センチの厚さがあれば10年間は水を漏らすことがないと言います。

日本技術士会 防災委員会 成島誠一さん
「ベントナイト層が適切にあれば、こんなに早く漏水することはない。
ベントナイト層をある程度、厚く、締め固めした構造であればですね、即時的な漏水というのは防げたと思います。」

なぜ東京電力は、実績のある鋼鉄製のタンクではなく、地下貯水槽を造ったのか。
その理由は、汚染水の保管設備がひっ迫したためでした。
原子炉の内部に残るメルトダウンした核燃料。
常に水を注ぎ、冷やし続けなくてはなりません。
その水が核燃料に触れることで汚染水となり、建屋へと流れ出しています。

さらに、汚染水を増やす思わぬ要因がありました。
地下水です。
福島第一原発の敷地には大量の地下水が流れています。
それが建屋の隙間から流れ込んでいるのです。
その量は、1日あたり400トンに及びます。
この汚染水から一部の放射性物質を回収し、タンクで保管していました。
しかし、そのタンクの増設もいずれ限界を迎えます。
その打開策として東京電力が期待していたのが、今回漏えいした地下貯水槽だったのです。
その安全性について、国は十分審査していたのか。
当時の規制機関原子力安全・保安院で去年(2013年)行われた議論の音声が残されていました。
この会議で東京電力は万が一、漏れた場合にも備えがあると説明していました。

東京電力
「(漏えいが)わかった段階で、実は空きのタンクを用意しておいて、検知した瞬間に、すべてそちらに移送するという計画にしてございます。」

保安院はどのように評価していたのか。

原子力安全・保安院
「万一、漏えいが検知された場合には、内容水を別のタンクに移送して漏えい拡大を防止すると。
ベントナイトシートが堰(せき)の役割を担っているという事を確認いたしました。
地下貯水槽ともに実施して問題ないと、私どもでは考えております。」

しかし今回は3つの貯水槽で次々と漏えいが起きました。
汚染水を移すタンクが足りず、この先6月までは漏えいしている貯水槽に汚染水は残ったままです。

東京電力 福島第一対策担当 山下和彦部長
「他の貯水槽については、こういうことが重ねて起きるということは考えていなかった。
貯水槽の外に出て、ずっと広がっていくというところまでの準備というものは、現段階では不足していたというのは、否めない事実であります。」

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