社説[韓国外相訪日中止]歴史問題を直視しよう

2013年4月23日 09時50分
(32時間57分前に更新)

 韓国政府は、尹炳世(ユンビョンセ)外相の訪日をとりやめた。安倍政権の現職閣僚が相次いで靖国神社に参拝したためだという。

 尹外相は今週末、岸田文雄外相と会談し、ミサイル発射などの挑発を繰り返す北朝鮮への対処を話し合う予定だった。

 中国外務省も閣僚の靖国参拝に抗議したことを明らかにし、韓国と足並みをそろえた。5月下旬にソウルで予定されていた日中韓首脳会談は、中国側が難色を示し、先送りすることがすでに決まっている。

 日中韓3カ国の協調と連携が求められるこの時期に、外交日程の取り消しや先送りが表面化したことは、安倍外交にとって大きな痛手だ。政権発足時から危ぶまれていたことが表面化したとみることもできる。

 靖国神社の春季例大祭にあわせ、新藤義孝総務相、麻生太郎副総理、古屋圭司拉致問題相が相次いで参拝。安倍晋三首相は21日、神前にささげる供物の「真榊(まさかき)」を内閣総理大臣名で奉納した。

 韓国、中国が日本の首相や閣僚の靖国参拝に反発する最大の理由はA級戦犯が合祀(ごうし)されているからだ。

 中韓両国に過度に配慮すれば、安倍政権を支持する保守層の離反を招き、逆に、保守層の主張を過度に取り入れると、中韓が反発する。歴史問題は安倍政権のアキレスけんである。

 歴史問題に正面から向き合い、政治的知恵でコントロールし、日中韓の協調と連携を実現することが、優先すべき外交課題である。

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 靖国参拝問題といい、尖閣、竹島の領有権問題といい、いずれもサンフランシスコ講和条約と密接にかかわる。

 極東国際軍事裁判(東京裁判)のA級戦犯について安倍首相は、国会答弁で「連合国の勝者の判断によって断罪」された、との見解を明らかにした。

 東京裁判の評価は歴史家の間でもさまざまであるが、日本は、講和条約第11条に基づいて、国と国との関係においては、東京裁判の結果を「受諾」している。それが政府の公式見解だ。

 戦前の日本は植民地帝国だった。1895年から台湾を統治し、1910年からは朝鮮半島を統治した。南洋諸島を委任統治したほか中国の関東州を租借地とし、満州国を間接統治した。

 講和条約によって日本は、これらの領域に対するすべての権利を放棄したが、尖閣諸島や竹島、南沙・西沙諸島などの帰属先は条約には明記されていない。

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 中国や南北朝鮮は、被害国であるにもかかわらず講和会議には招かれなかった。

 日中、日韓の間に横たわる歴史問題は、いわばサンフランシスコ講和条約で処理することのできなかった「未解決の問題」といってもいい。

 政府は、条約が発効した4月28日を「主権回復の日」と位置づけ記念式典を開く予定だが、同条約によって沖縄が切り離されたことや、「アジア不在」の講和だったことなど、条約の別の側面を忘れるわけにはいかない。

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