国民生活センター:アベノミクス便乗詐欺に注意呼びかけ
毎日新聞 2013年04月23日 03時00分
安倍晋三首相の経済対策「アベノミクス」を引き合いに言葉巧みに詐欺まがいの投資などを持ちかけられるケースが各地で確認されていることが分かった。国民生活センターによると、全国の都道府県内の消費生活センターに寄せられた相談は少なくとも5件(18日現在)だが、被害者は相当数いる可能性がある。国民生活センターは「政権交代など社会の動きに便乗するのは詐欺の典型。今後増える恐れがある」と注意するよう呼びかけている。
「政権が代わり、これから景気が良くなるのでCO2(二酸化炭素)の排出量も多くなる」。国民生活センターによると、今年1月ごろ、東海地方の60代の男性に電話があった。CO2の排出権取引も増えてもうかるので投資しないかと勧誘され、3日後、自宅を訪れた人物に現金100万円を手渡した。5日後、インターネットで同様の被害事例があることを知って「だまされた」と思い、電話で業者に返金を求めたという。業者側が返金に応じたかどうかセンターは把握していない。
やはり今年1月ごろ、同じく東海地方の70代の主婦に、証券会社の社員を名乗る人物から電話があり「政権が代わり国土の改革が行われる。年率9・9%の債券に出資しないか。県内200人の年金受給者に書類を送っている」と話したという。主婦は不審に思い、最寄りの消費生活センターに相談した。
また、南関東では昨年末、自営業の50代の男性に電話があり、プラチナの先物取引に投資するよう勧誘。関係者が訪問してきて説明し、男性は400万円入金した。その後、業者から「新政権の経済対策で円安になり、値上がりしそう。取引は1000万円に増やした方がいい」と持ちかけられ、さらに600万円を振り込んだ。その後、送られてきた明細で680万円の損失が出ていることが判明したという。
国民生活センターの調べでは、詐欺とみられるケースも見受けられるほか、「もうかる」という断定的な勧誘は消費者契約法違反の可能性もあるという。センターの担当者は「セールストークに惑わされないようにしてほしい」としている。【志村一也】