特集ワイド:豊かさとは 歴史学者・坂野潤治さん

毎日新聞 2013年04月22日 東京夕刊

坂野潤治さん=木葉健二撮影
坂野潤治さん=木葉健二撮影

 「欧米では社会民主主義政党やリベラルが政権を取った時にバラマキをして、保守政党の時に財政を引き締めるのが常識なんです。ただ日本では戦前、それが逆でした。戦後も自民党がバラマキをして、民主党政権が引き締め、安倍政権がまたバラマキをしている。民主党に再び政権を担うチャンスがあるとしたら、福祉国家を掲げるべきです。累進課税を強化してお金持ちから税金をいっぱい取り、土木工事の代わりに保育所や老人ホームをたくさん建てて、福祉に働く場をつくるような政策を進めたらいい。赤字財政のため5年で破綻するでしょう。そうしたら自民党に政権を戻して財政を立て直してもらったらいいんです。私は今の状況に失望していないんだけど、民主党の政治家は元気がないですね」

 なぜ日本では福祉国家が目標にされてこなかったのか。

 「即効性がないからです」と答えは明快だった。「保育所を一つ造ったからといって、子どもを預けられるようになった女性がすぐに正社員になれるわけではありません。橋や道路を造ればすぐに結果が見て分かる。しかし政治はすぐ目に見える成果を上げることではなく、社会をよくするためにある。日本の野党は、オイルショックの時に欧州で福祉国家は挫折したからと、自民党の批判しかしてこなかったが、一度ぐらい福祉国家を目指してみてはどうか。みんなが困っている人のことを考えて手をさしのべる社会こそ、豊かな社会と言えるのではないでしょうか」

 「崩壊の時代」を回避する知恵は逆説的な発想にある。老練の歴史家はそんな示唆を与えてくれた。【大槻英二】

==============

 ◇「特集ワイド」へご意見、ご感想を

t.yukan@mainichi.co.jp

ファクス03・3212・0279

==============

 ■人物略歴

 ◇ばんの・じゅんじ

 1937年、神奈川県生まれ。東京大名誉教授。専門は日本近代政治史。東大在学時に60年安保を経験し、指導者の一人として国会に突入した。97年、「近代日本の国家構想」(岩波書店)で吉野作造賞。近著に「西郷隆盛と明治維新」(講談社現代新書)。

最新写真特集

毎日新聞社のご案内

TAP-i

毎日スポニチTAP-i
ニュースを、さわろう。

毎日新聞Androidアプリ

毎日新聞Androidアプリ

MOTTAINAI

MOTTAINAIキャンペーン

まいまいクラブ

まいまいクラブ

毎日RT

毎日RT

毎日ウィークリー

毎日ウィークリー

Tポイントサービス

Tポイントサービス

毎日jp×Firefox

毎日jp×Firefox

毎日新聞のソーシャルアカウント

毎日新聞の
ソーシャルアカウント

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞社の本と雑誌

毎日新聞社の本と雑誌

サンデー毎日

サンデー毎日

毎日プレミアムモール(通販)

毎日プレミアムモール(通販)

毎日新聞のCM

毎日新聞のCM

環境の毎日

環境の毎日