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元教師がハングル経典「釈譜詳節」を全訳、韓国の研究者「至難の翻訳作業」と賛辞/横浜

2013年4月21日

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全訳を終えた河瀬幸夫さん=横浜市中区、春風社

全訳を終えた河瀬幸夫さん=横浜市中区、春風社

 朝鮮半島の豊かな仏教文化の集大成ともいえる、15世紀のハングル経典「釈譜詳節(しゃくふしょうせつ)」。半島の“古典中の古典”であるこの経典を、横浜市在住の元教師で高麗大蔵経研究所の駐日研究員でもある河瀬幸夫さん(67)が、全訳した。全3巻にまとめたうち、最後の巻を5月に発売する。韓国の第一線の研究者も、全訳完成を「研究者たちを大いに裨益(ひえき)する(助けになる)」と絶賛している。

 「釈譜詳節」は、釈迦(しゃか)の一代記。朝鮮国第4代王で、訓民正音(ハングル)を制定した世宗(セジョン)の命で、王子の首陽大君(スヤンデグン)が1447年に完成した。前年に死去した王妃の冥福を祈るため、中国でまとめられた大蔵経を基に書かれた。

 漢字と完成したばかりのハングルで記された同書は金属活字で印刷され、全24巻。だが、その後に儒教勢力が一層力を増したことなどから散逸し、現存しているのは10巻だけだ。

 河瀬さんは訳にあたり、「釈譜詳節」の内容を世宗が分かりやすく歌に詠んだ「月印千江之曲」(全3巻中1巻が現存)と、首陽大君が第7代王世祖(セジョ)に即位後、修正、増補しまとめた「月印釈譜」(25巻中20巻現存)の内容も合わせた。

 「このことで、『釈譜』全体の8割から9割の筋がつかめ、全貌に迫れた」と河瀬さんは意義を語る。

 河瀬さんは横須賀学院高校の国語教師だったが、2003年に早期退職し、韓国の東国大大学院仏教学科に留学した。ある日、机を並べて学んでいた高麗大研究教授、鄭鎮元(チョンジノン)さんがこう聞いてきた。「日本の今昔物語に似ている釈譜詳節という書物を知っているか」

 興味を持った河瀬さんは日曜日ごとに高麗大を訪れ、鄭さんから講義を受けた。「勉強すればするほど、面白かった。インドから西域を経て中国、韓国へと伝わった仏教。この書物にアジア全体の千年以上の歴史が凝縮されている気がした」と河瀬さん。

 博士課程修了後、07年に帰国してからも読み込む日が続いた。初期のハングルは現在の文字とは異なり、「李朝語辞典」を引きながらこつこつと翻訳。10年春に上巻、11年春に下巻を出版し、観念的な内容で苦労した「法華経」を含んだ中巻が、ようやく完成した。

 全訳を終え、河瀬さんは「韓国は儒教の国と思われているが、15世紀にはお釈迦さまの教えがこれほど分かりやすく書かれた本があった。当時、少なくともアジアの人たちはこう仏教を理解していた、ということが分かると思う」と語る。

 これまで韓国では、今回翻訳された3書物を合体して読み解くことはなかった。出版した横浜市西区の出版社、春風社の三浦衛社長は「合わせるというのは、外国人だからできた発想では」。韓国でも同書は注目され、東国大の張愛順(チャンエスン)仏教学部長は「韓国人もなし得ない至難の翻訳作業」と賛辞を寄せている。問い合わせは春風社電話045(261)3168。


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