HOME > クラブガイド > サポーターズ・カンファレンス > 第10回議事録 2)チーム強化と選手育成について
昨年度、皆様方からの厚いご支援ご声援があって、クラブ念願のタイトルを獲得できました。本当にありがとうございました。
【昨年の総括について】
昨年はチームのバランスが非常に良かった。前監督が非常に攻撃的なサッカーをチームに植えつけてくれました。しかし、点は取れるが失点が多いのが少し気になっていました。
森保監督は、直前まで新潟にいましたから、ウチの強みと弱みを熟知していました。「攻撃は良いけど守備のところに課題がある」という指摘が彼自身からもありましたので、そこの構築に手を付けてくれた。それがうまくいって、攻撃と守備のバランスが取れた良いチームになったと思います。
2番目に感じたのは、選手のコンディションです。一年間を通じて非常に良かったと思います。それまでは毎年長期離脱をする選手が数人いて、なかなかベストメンバーを組めなかった。確か2010年に最初にACLにチャレンジした時は、ACL用にターンオーバーしたわけではないのですが、若い選手を使わざるを得なかった。それが、昨年は山岸とミキッチが夏場に数週間離脱したくらいで、他の選手は一年を通してフルに活躍できたというのが、非常に大きかったと思います。一つには、去年採用した松本フィジカルコーチの指導が非常に良かったことが挙げられるかと思います。それに付け加えて何より、森保監督が選手とコミュニケーションをよく取ってくれました。特に森崎浩司、森崎和幸には彼が綿密にコミュニケーションを取りながら、今は休ませた方がいいのか、ここは追い込んだ方がいいのか、そのあたりのコントロールをうまくしてくれたと思います。
そして3つ目です。森保監督自身の力によるところが大きかったと思います。先程述べましたが、選手とのコミュニケーションを密に図ってくれました。彼がよくやってくれたのは、吉田に練習を見に来られた方はすでにお気づきかと思います。一番最初に練習場に来て、最後までピッチに残っています。全体練習が1時間半で終わると、あとは20〜30分、若い選手が残ってボールを蹴ったり、いろいろなトレーニングに取り組んでいます。森保監督はそれを最後まで見ています。別に森保監督が何かを指導するわけではなく、選手がどういうことをやっているのか。どういう動きをしているのか観察してくれていました。居残りするのは特に若い選手が多いのですが、それと合わせて、土曜日にリーグ戦があった後、日曜日にリザーブメンバーで試合に行きます。鳥栖に行ったり、大阪に行ったり。サテライトの試合は基本的にはバス移動です。バスで3時間、4時間揺られて試合をして帰ってきます。森保監督には当然トップチームをメインに見てもらっていますから、日曜日の午前中はトップチームのリカバリートレーニングを見てもらった後、彼には新幹線で移動して九州に来てもらったりしました。とにかくリザーブメンバーの全部の試合を彼は見に来てくれました。若い選手は「監督に見られている」ということをすごく感じてくれたと思うのです。そういう意味で若い選手のモチベーションを上げてくれた。夏場に山岸、ミキッチが怪我で離脱した時に、石川や清水あたりが台頭してきた大きな要因ではないかと思います。このあたりが去年に関するポジティブな評価です。
【2013年のチーム編成について】
昨年は選手の頑張りにより、良い成績を残してくれたと思います。それに浮かれることなく地に足の着いたチーム作りをしたいと森保監督と話しました。我々は昨年ダントツの力を発揮して優勝したわけではありません。最後の最後までベガルタ仙台と接戦を繰り広げながら、なんとかしぶとく粘り強く戦って一年間勝ち点を積み上げた結果の優勝だと思っています。逆に言えば、われわれは横綱相撲を取れるわけではない。目先の成績に囚われるのではなく、常に上位で戦えるような戦いが必要。昨年は1位でしたが、その前の3年は、4位、7位、7位。なんとか賞金獲得圏内を4年連続維持することができました。こういう順位を常にキープできるようなチームでありたいと考えています。今年はACLもJリーグもあって大変だから、選手がたくさん必要だろうという考え方もあります。そういう一時的なその場しのぎの考え方ではなく、チーム全体のレベルアップをするということを考えた補強をしました。チームの目標に関しては社長から話がありましたので、ここでは割愛します。選手編成に関しては、ご承知の通り、森脇選手が浦和に移籍となりました。彼が移籍した後の補強については、外から獲ってくるという考え方もありますが、我々のクラブにはファン・ソッコ、塩谷という非常に将来性の高い選手がいます。彼らの成長に蓋をするのではなく、彼らを伸ばしたいということで即戦力の補強はしませんでした。
「即戦力補強が少ないよね」とおっしゃる声も非常に多くいただいています。しかしながら我々の中では、鳥栖の期限付き移籍から復帰したしてきた岡本、あるいは、ユースから上がってきた野津田。この2人は、即戦力レベルだと評価しています。特に岡本に関しては、鳥栖の中心選手として活躍しました。それだけ力をつけてきた選手ですから、広島に帰ってきてからは、ボランチの森崎和、青山のレギュラー陣に割って入ってほしいと思います。年齢構成を考えると、岡本がレギュラーのところにいかないとわれわれのクラブに未来はないと思います。そういう意味で、彼には大きな期待をしています。野津田についても彼はまだ若いし、クラブとしても長い目で彼を育てようと思っています。とはいえ、昨年彼はJリーグで7試合くらい出場し、活躍しております。彼については早い段階でエントリーメンバーの18名に入ってきてほしい。期待をしています。従って、今年はプロ契約選手26名でスタートします。ACLと並行日程なので厳しいのは間違いありませんが、それに泣き言を言っても仕方ありません。ACL出場というのは我々が勝ち取った権利です。厳しいスケジュールの中で、みんなが切磋琢磨しながらレベルアップしてほしいと考えています。26名以外にも3年生になるユースの選手、ここに4,5名非常に将来性のある選手がいますので、鹿児島・宮崎のキャンプに帯同させた上で力があれば、ACL、Jリーグを戦うメンバーに加えていきたいと思います。
一方で、若い選手で出場機会の少なかった選手については、積極的に試合に出る機会を与えたいということで、大崎が徳島、横竹が鳥取、丸谷が大分、西岡が栃木に期限付き移籍しました。これらの選手はサンフレッチェの中でポジション争いしてほしい選手ですが、今期の編成を考えて試合出場がちょっと難しい、少ないことが見込まれましたので先方のクラブと話をして、期限付き移籍をしてそこで出場機会を得て成長して帰ってきてほしいと考えました。もちろん行った先でもポジション争いが待ち構えています。それに打ち勝って、岡本のように、あるいはかつての高萩のように成長して帰ってきてほしいと考えております。
【契約更新について】
毎年同じ話で申し訳ないのですが、ゼロ円移籍を阻止するには複数年契約しかありません。複数年契約をポジティブに考える選手もいれば、「単年で勝負したい」という選手もいます。チームの主力として残したい選手とは長期契約を結びたいという思いがあります。そこで本人や代理人と交渉をしていきますが、複数年契約を結ばせるためにその選手に特化した契約を結ぶのはサンフレッチェとしては違うのではないかと考えています。極端な話、一つはお金の問題です。ある特定の選手だけ年俸を大きく上げて複数年結ばせることは、チームのバランスとしてはどうなんだろうか。私としてはできるだけ複数年契約を結べるよう交渉をしてますが、どうしても本人が単年契約を希望するのであればこれはしかたないと考えています。単年契約であってもその選手がサンフレッチェでやりたい、居続けたいと思ってもらえるクラブを作っていくのが我々の責務かと思います。それは活躍に見合った報酬を支払えるように、クラブ全体で収入を上げることもひとつです。
選手が一番楽しみにしているのは、新スタジアムです。森崎兄弟や寿人が活躍している間にスタジアムができるようにご支援よろしくお願いいたします。
一部皆様からいただいたご意見の中で、「複数年契約に応じない選手は練習から外してしまえ、干してしまえ」という意見もありました。実際、海外ではそういうことは日常茶飯事です。しかしそのやり方は日本のJリーグではちょっと合わないかなと感じています。我々が団結して戦っている時に、(特定の選手を)外すようなことになってしまいますので、できるだけそういうことはせずにコミュニケーションを取りながら進めていきたいと考えています。
【広島ユースの監督交代について】
森山監督の退任、望月監督の就任。まずクラブとしては育成のところはクラブの生命線ですので、もちろん大事に取り組んでいきます。森山はコーチで3年、監督で10年に渡ってユースの指導にあたってくれました。非常に大きい仕事をしてくれました。多数のプロ選手を輩出したことはもちろん、度々全国優勝を果たすなど、サンフレッチェユースを全国区に押し上げてくれたのは間違いなく彼の功績です。同時にクラブとしては将来的にもこれからどんどん良い指導者を輩出し育てていきたい。そういう意味では森山には監督職の10年を一区切りにして、次のステップとして、S級ライセンスにチャレンジしてもらうつもりです。またナショナルコーチングスタッフということで、中国地域のトレセンだけでなく、もしかすると日本代表のアンダーカテゴリーのスタッフに入る可能性もあります。∪−15とか∪−20とかの監督をやるためにもS級が必要となりますので、そういう意味でも彼にはS級にチャレンジしてもらいたいと考えています。
森山の退任のあと誰をユース監督にするかということになりました。次の監督に誰を据えるかということで、何人か候補に挙がりました。その中で今、ユースにとって大事なのは、プロにつながる選手育成です。トップにつながる選手の質をさらに上げていかないといけない。プロチームのことを熟知している、あるいはプロチームはどんなユースの選手が欲しいのか、ユースの間にどんな能力を伸ばしてほしいのかを熟知している人が必要と考えました。その中でこのタイミングでやってもらうのであれば、望月が一番適任ではないかとの結論になり、彼を監督にしました。彼は元々GKコーチ出身ですが、代表コーチの経験もあり、サンフレッチェのプロチームのコーチの経験もあり、指導者として経験が豊かです。かつてプロチームで監督交代した時に、リリーフしてもらったこともあります。そういう監督としての能力もあると評価しています。彼にはユースからプロに上がっていける今のパイプをもっと太くする、クオリティを上げることに取り組んでもらう。ユースはプロに上がるだけではなくて、プロ生活を末永くできないとダメ。森崎兄弟や駒野のような選手をどんどん出せるように、われわれもクラブをあげて取り組んでいきたいと考えています。
サッカースタジアムを新設するにあたって、オフィスビルやショッピングセンターを併設させるという想定をすべき。行政にそうした提案をしてほしい。
ありがとうございます。まさしく、新スタジアムを語る場合に一番の鍵になるのは、複合的機能だろうと我々も考えています。複合機能というのが商業施設になるのか、オフィスになるのか、あるいはコンベンションセンターのような機能になるのか。これはさまざまな議論があろうかと思います。スタジアムの稼働率を高めて収益率を増していく。そういう意味においては単なるサッカースタジアムということだけではなく、複合的機能を訴えていく必要があります。
また場所についても、街の賑わいへのスタジアムの重要性に焦点を当てた議論を我々はしています。タイミングを見てなのですが、「サンフレッチェとしてはこういうようなスタジアム像を希望します」という話を、検討委員会の発足に向けて様々な案をこちらからも出して行ければと考えています。
ゼロ円移籍が相次いでいるが、広島もうまく制度を利用して選手を獲得できてもいる(千葉選手、石原選手など)。今後、ユースを含めた育成をどう考えておられるのか、コストをどのように回収していきたいと考えておられるのか?
ありがとうございます。議論の前提として、ユース生え抜き組のゼロ円移籍に対しては、契約上のこととはいえ、出て行かれたと我々は非常に沈痛に考えています。ゼロ円移籍で選手を取ってくるメリットがある、それはありますが、ユースの選手がこうやってゼロ円で出て行くというのはかなり寂しいという感情があります。しかしサッカー選手は契約の世界であり、個々の選手も、個々それぞれにステップアップの考え方もあります。ユースから育って20代前半から半ばくらいまでの年齢だといろんなことを考えると思います。どのようなやり方を取っても、100パーセント我々生え抜きの選手を抑えるということは難しい、と一方では思っています。しかし、さすがに今おっしゃったようにここまでゼロ円でいかれるということは、経営的にも重要な問題です。クラブの中長期の姿というのを考えた時に、昨年はたまたま優勝賞金等が入り、収入が30億円を越えました。優勝争いをしてもしなくてもわれわれは27,8億円くらいの収入を確保していきたい。
将来的に新スタジアムとかいろんな条件を変えていって、30億円前半から半ばくらい。ここまでいけるとJリーグのクラブを上から見ても、年にもよりますが今は10番手にはいるかどうかですが、6〜8番手くらいの経営規模になります。そうしますと、安定的な上位争いが見込める規模になります。しかし、新スタジアムができただけでは毎年のように上位争いができるクラブにはなれません。毎年のように優勝争いに加わる、地方クラブの雄としての地位を固めていくためには、やはり育成で若い選手を育てて、その選手をある程度の期間は引き止めていく、一部の選手が出て行くという時には移籍金を取れる仕組みというのをできるだけ作っていかなければならない。クラブの中長期の姿を考えても、育成の重要性は変わっていません。育成組織を充実させることです。今回で言うと高校サッカーのスター選手である浅野選手が獲れたみたいに、「こういうチームに入って同世代のユースの選手と競ってみたい」と思わせる効果もあります。外から良い選手を獲るためにも、良いチームを作っていくということは高まっています。そうした中でトップで通用する選手を発掘していくべく、ユースは常に改革への努力をしていかなくてはならないということにつながっていると思います。
経営方針を支える上で、重要なことがいくつかあります。まず契約面で言いますと、私が社長就任の記者会見で申し上げたのですが、高卒の有望選手に関しては、5年以上の長期契約を結ぶ。そうした契約面での方針を考えていきたい。2つ目は、サンフレッチェとしてのポゼッションサッカーの良さをユースの段階でもやることだと思います。良い人材を集めるためにもサンフレッチェの育成組織もトップと同じように魅力的なサッカーを続けていく。これは哲学のようなもので、サンフレッチェとしてこれまで以上に徹底していくことだと思います。3つ目は、これは若干浪花節的かもしれませんが、若手選手に対するクラブ内外のコミュニケーションをこれまで以上にやっていきたいと考えています。特にユースやその下のアカデミー年代の頃から、選手を一生懸命育ててくれるご両親の方々。そうした方々は応援にも来ていただいております。そうした方々と接しながら家族ぐるみで、サンフレッチェに対するチームとの絆、そういうものを強めていきたいと考えています。そうした意味で、我々フロントもスタッフもこれまで以上に、ユース・ジュニアユース以下・アカデミーの試合会場にも顔を見せたいと思います。以上です。
先ほどの社長のお話があったので、安心した部分はあるのですが、今回の森山監督の交代に関してメリットとデメリットがあると思います。ただでさえユース世代のカテゴリの選手の獲得が難しい中、あえて優勝した監督を変えると踏み切ったことを、もっと外へきちんと説明する必要があるのでは?
はい、ありがとうございます。そのように努力してまいります。
ありがとうございました。森山監督は素晴らしい功績を残していただきました。彼の指導を慕って来る中学生ももちろんたくさんいました。そういった意味では、彼がユースから離れるデメリットもあります。しかし、我々もいつまでも森山に頼ってはいられない。サンフレッチェのユースでやりたいと思える選手を育てていかないといけない。そういう仕組みを作っていかないといけないと思っています。
話がそれるかもしれませんが、もっとやりたいことはサンフレッチェのジュニアユースからユースへと毎年コンスタントに、4、5人上がってくるという仕組みを強化することです。県外から選手を獲ってくるばかりではなく、中国地域から選手が上がってくる。これは我々だけの力ではなく、中国地域の指導者の方々と手を携えてやっていきたいと思います。
クラブユース選手権の日程が非常に過酷になっています。サンフレッチェというクラブだけでどうにかできる問題でないことはもちろんわかっていますが、選手の健康面を可能な限り考慮した日程になるように改善できるように努力していってもらいたい。
了解しました。Jリーグや協会の関係者と会う機会がありましたら、この問題は折りに触れて提起していきたいと思います。ご指摘いただきありがとうございました。