社説

指定廃棄物処分/「失敗」を反省し地元優先で

 放射性セシウムなどを含んだ「指定廃棄物」の処分問題が、打開に向けて動きだそうとしている。国は近々、最終処分場を選定する際の評価基準などを示し、宮城、栃木、茨城、千葉、群馬の5県で選定作業に入るとみられる。
 だが、すんなり運ぶとは思えない。データの比較で「適地」を選んでも、市町村の同意を得られるかどうかはまた別問題だろう。時間を要するのを覚悟の上で、地元への説明を尽くさなければならない。
 福島第1原発事故によって放出された放射性物質は、東北や北関東などを広範に汚染した。そのうち放射線量が1キログラム当たり8000ベクレルを超える指定廃棄物は、国の責任で処分することが決まっている。
 その量は昨年末時点で、岩手から静岡までの11都県で計約9万9000トンに達する。原発事故に見舞われた福島(7万8000トン)が全体の約80%を占め、次いで栃木(9300トン)、宮城(3200トン)、茨城(3000トン)などとなっている。
 指定廃棄物のほとんどは焼却灰と下水汚泥だが、宮城では稲わらや牧草が最も多い。環境省は宮城など5県に最終処分場を建設し、指定廃棄物を集約して処分する考えだが、いまだに候補地も固まっていない。
 福島は別扱いで、10万ベクレルを超える汚染度が高い廃棄物はこれから建設する中間貯蔵施設に、それ以外は既存の産業廃棄物最終処分場に運び込むことになっている。
 各県にとって指定廃棄物は原発事故でもたらされた厄介なごみであり、その処分場は「迷惑施設」でしかない。
 環境省は昨年9月、矢板市(栃木県)と高萩市(茨城県)の国有地をいったん候補地に選んだが、唐突な提示が地元の反発を受け撤回に追い込まれた。
 国有地とはいえ、国が一方的に候補地を選定して難なく決まるわけがない。同じ愚を繰り返さないためにも、地元側との密接な情報交換を続けていくべきだ。
 宮城県と県内市町村、環境省との意見交換会が先月あったが、少なくとも選定基準や手続きはあらかじめ説明しておかなければならない。
 最終処分場を実現させるために何より求められるのは、建設地を住民の生活環境から隔絶させ、さらに万全の漏えい防止策を講じることだ。完成後の管理方法についても十分に説明し、安全性に不安を抱かせないことが大前提になる。
 宮城県内の市町村との意見交換会では、地域振興策も議論になった。候補地の選定や絞り込みが進むにつれ、振興策も具体化していくだろうが、その内容は各県の意見も参考に検討していくべきだ。
 露骨な「見返り」になって選定作業をゆがめるようなことがないよう、慎重に議論する必要がある。地域振興策とセットになるにせよ、より広域的で長期的なメリットを発揮できるような仕組みを考えるべきだ。

2013年04月23日火曜日

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