フリーチベットを叫びつつ、中国援助には口をつぐむ奇妙さ

| | trackback(0)

1月24日、中国四川省カンゼ・チベット族自治州セルタ県でチベット族住民による暴動が発生し、警官隊の発砲で住民一人が死亡、一人が負傷し、同時に中国側警官14人も負傷したと中国国営新華社通信が報じています。(英国BBC放送等は2名死亡と伝えている)
前日23日には同自治州ダンゴ県で同じような暴動が起こっており,1名の死者、30数名の負傷者が出たといわれています。
2008年の北京五輪の際のラサ暴動以来の抗議運動が拡大中です。
非武装のチベット人たちの絶望的な反乱が残念なことですが、現状では中国の人民武装警察や解放軍の力に勝つことは期待できない。
だからこそ、中国を「政治的」に包囲してゆく必要があるのですが、日本でフリーチベットを叫ぶ人々の間からも日本国政府がODAと言う形で中国政府を「支援」している現実に抗議の声があがることはありません。
2008年、チベットの蜂起を鎮圧するために人民解放軍が利用した光ケーブルは日本のODAで建設されたものでした。また日本の財務省が影響力をもち、歴代の総裁を独占している国際援助団体「アジア開発銀行」は中国政府の要請をうけて、今回の暴動の舞台になった四川省の高速道路の建設に既に500億円を超える融資を行なっています。道路は有事に解放軍が最優先で利用し、普段は豊かな沿岸部の漢民族資本がチベット地域に流れ込み、経済支配のための道具となっているのです。
そればかりではありません。廃止されたと思われている中国向けODAは現在も続いており、無償援助と技術支援を合わせると合計で42億5000万になり、これ以外に文部省の中国人留学生支援や経済産業省の中国環境支援等が各省の独自に作成した中国援助のメニューとして別に存在しているのです。
腹ただしいのは。まだこれでも話は終わらないことです。
昨年12月野田総理は中国を訪問、ここで「環境支援」と100億ドル(日本円で8000億円)の中国国債購入を約束しました。中国には国債の自由な市場はありません。つまり一旦買ったが最後、日本側が任意に売ることはできないのです。
これらはどう見ても、公的援助そのものであり、ODAのニューバージョンというべきものなのです。

この環境支援と中国国債を合計すればほぼ1兆円。なんと膨大な金額なのでしょう。ちなみに触れておくと、日本のODAは30年間で合計3兆円になります。そう考えれば今回の金額の大きさが理解できるはずです
中国向け援助は減ってはいない。むしろ国民の目から隠れたところで増え続けているのです。

GDPで日本を抜いて世界第二となった中国。その中国にいまもひたすら貢ぎ続ける日本。こうしたカネの出処は言うまでもなく私たちの血税です。なに、足りなければ、消費税を10%に上げればいい。当局は多分こう考えているのでしょう。
これが日本の政治の現実です。チベットでどれほどの住民が殺されようと、日本からの援助はそれとは全く無関係に拡大していくという異様さ。さらに面妖なことは、このことに人権好きの朝日や毎日新聞、さらには共産党も社民党も沈黙したままなのです。

問われているのは弾圧を続ける中国政府に対する援助に目を閉じたままチベット人たちと連帯することは可能なのかどうかという問題であり、日本人の良心のあり方なのではないのでしょうか
私は一人の日本国民として、さらに納税者として、チベット弾圧を続ける中華人民共和国への日本からの公的援助に強く抗議するものです。

                       1月26日
                       青木直人


参考資料
●NLC DVD Vol.19
「日本の対中援助~ウイグル・チベットを侵食する「援助」を知る勉強会」(主催 日本ウイグル協会)

●ニューズレター・チャイナ Vol.140
公然と復活した中国向けODA
~野田訪中で実現した「省エネ環境保護投資基金」のからくり







« お礼 | HOME | Vol.141を配信しました。»


トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: フリーチベットを叫びつつ、中国援助には口をつぐむ奇妙さ

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://aoki.trycomp.com/mt/mt-tb-aoki.cgi/633






定例講演会のお知らせ
------------------------
5月の講演会予定はありません。



・ニューズレター詳細・お申込
・配信が届かない場合
・登録アドレスの変更












Blog内検索


アーカイブ

講演依頼


青木直人への講演依頼は、こちらからお申し込みください。