関西NOW
近大が新たな挑戦 梅田に養殖魚専門料理店
2013/03/11の紙面より
産官学連携発信拠点に
養殖場から引き上げられるマグロ(近畿大学提供)
近畿大学(本部・東大阪市小若江、清水由洋理事長)は4月、再開発の進む大阪市北区のうめきた・グランフロント大阪のナレッジキャピタルに、養殖魚専門料理店「近大卒の魚と紀州の恵み 近畿大学水産研究所」をオープンする。養殖に成功したクロマグロ「近大マグロ」を中心にしたメニューを提供。産官学連携による初のアンテナショップとなり、近大にとっても新たな挑戦だ。情報発信拠点としても期待が寄せられており、養殖技術を広くアピールする。■ブランド品
専門料理店の柱となるのが「近大マグロ」。商標登録され、ブランド品としても浸透し始めたこのマグロは、近大水産研究所(本部・和歌山県白浜町)が、2002年に世界で初めて成功した完全養殖技術で生まれた。魚養殖の世界では最後の砦(とりで)とされ、技術的に非常に難しい魚種。池田勝財務課長兼近大水産研究所・水産養殖種苗センター事務長は「独立採算のシステムで研究に取り組んできた基礎があり、完全養殖は近大だけがなし得た」と自信をみせる。
マグロ養殖は和歌山県串本町の大島実験場と鹿児島県瀬戸内町の奄美実験場で実施。串本産の方が脂が乗りやすいというが、赤身を好むケースもあり、消費者ニーズに合わせて提供することにしている。気になる味は「専門家でも天然産との見分けがつかない」(池田事務長)といわれるほどだ。
■「実学教育」の場
ナレッジキャピタルにオープンする養殖魚専門料理店のイメージ(近畿大学提供)
「これまでも流通はしていたが、食べたことがないという声もあった。まずは直接食べていただくことが大事」と池田事務長。鮮魚市場では天然産を好む傾向が強く、天然産と比べ養殖魚は単価も低い。「技術が向上し、養殖魚は昔と違っておいしいということをアピールしたい」(池田事務長)との思いを背景に、今回の挑戦は生まれた。さらに近大の建学の精神は「実学教育」。店舗を学生の実学の場に活用したいという大学側の思いも、サントリーグループ担当者の共感を呼び、具体化が進んだ。
大学側の経営窓口となるアーマリン近大(和歌山県白浜町)の逵(つじ)浩康社長は「実学教育は実社会に出て役立つ教育。店舗経営も実際に学生に研修させ、実学の場として提供したい」と話す。インターンシップなどを取り入れ、新年度後半には経営学部など4学部の学生を、将来的には13ある学部の学生を横断的に参画させたいという。
■準備は着々
養殖魚専門料理店は、4月のオープンに向けて準備が進む。広さは約220平方メートル、約100席で客単価は4千〜5千円を想定。提供するメニューは大学とサントリーグループのダイナック、和歌山県との共同開発。店にはタブレット型端末を置いて、大学の研究情報なども提供する。養殖魚だけでなく、近大付属農場など全国ネットワークを生かして農畜産物も加える予定。全国各地から集まる近大の食材に、和歌山県産食材が加わる。
産官学連携で踏み出す先進的な取り組み。マグロの次にはアナゴ、さらにウナギ、クツエビへと養殖技術の確立に次の一手も考えており、逵社長は「養殖魚の底上げを図るのが社会的な役割だが、皆さんに来ていただいて食べてもらうために値段を抑えつつ提供したい。成功する自信はある」と話す。
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