資料14−3


「一時管理区域の指定について」




(動力炉・核燃料開発事業団)

平成9年7月2日


目  次

1. 概 要
2. 一時管理区域指定の経緯
3. 一時管理区域指定の周知について
4. 施設周辺飛散物の回収・清掃作業について
 4.1 回収・清掃作業の経緯
 
4.2 回収・清掃作業における安全装備について
5. 一時管理区域内のその後の清掃、除染作業及び一時管理区域の縮小解除

1. 概 要
 3月11日20時04分頃に発生したアスファルト個化処理施設の爆発事故により、窓、扉等が破損して、放射性物質の汚染を含む管理区域内物品がアスファルト固化処理施設周辺に飛散した。
 20時12分頃に再処理工場現場指揮所から建家内での待機を放送で指示し、続いて、22時頃に防護活動本部より保全区域内の移動に当たっては半面マスクを着用し、サーベイメータを携帯することの指示が行なわれた。
 3月12日1時頃からアスファルト個化処理施設建家周辺の汚染状況の確認を開始し、汚染が確認されたため、2時30分にアスファルト個化処理施設周辺を一時管理区域に指定した。その後、一時管理区域の区画作業の実施中に一時管理区域の外側にも飛散物が認められたため、5時20分に一時管理区域を拡大した。
 この間、4時頃から5時頃までアスファルト個化処理施設周辺の飛散物の回収、清掃作業を実施したが、現場保存が必要との判断により5時20分頃から、回収した飛散物の戻し作業を実施した。
 その後、3月13日から3月28日にかけて一時管理区域内の清掃等を実施し、一時管理区域を順次縮小して、3月28日に解除した。

2. 一時管理区域指定の経緯
1) 3 月12日1時頃から放射線安全課においてアスファルト個化処理施設建家周辺の汚染状況の確認を開始した。その結果、飛散物の表面密度について、告示第2条に定める管理区域に係る値(α線を放出しない放射性物質:4Bq/cm2)を超える汚染が検出された。なお、外部放射線に係る線量当量率は全域1.0μSv/h未満であり、告示に定める管理区域に係る値(300μSv/週:6.25μSv/hに相当)未満であった。この結果は2時30分前に放射線安全課長から環境施設部現場指揮所の放射線管理第二課長に伝えられた。
2) 2時30分頃、環境施設部長は現場指揮所内の放射線管理第二課から「アスファルト個化処理施設建家周辺の飛散物に汚染があるため、一時管理区域の指定が必要」との要請を受け、再処理施設保安規定第83条に基づきアスファルト個化処理施設周辺を一時管理区域に指定した。その後、指定の手続きを行うとともに保安規定第91条に基づき区画化のためのトラロープ、標識等の資材準備を各課に指示した。
3) 4時30分頃から5時05分頃にかけ処理第二課長代理、処理第二課員(2名)及び放射線管理第二課員がトラロープ張り作業を実施した。
4) 5時10分頃、トラロープ張りを行った処理第二課長代理から一時管理区域外の冷却水設備周辺等にも飛散物がある旨の報告があり、さらに、放射線管理第二課によるアスファルト個化施設建家周辺の測定(空間線量当量率、α及びβγの表面密度)のうち、βγ表面密度の測定結果に基づいて、5時20分に一時管理区域を拡大した。

 アスファルト個化処理施設建家周辺のサーベイについては、爆発による退避作業者のサーベイ等を優先して行ったこと及び爆発後の施設内状況確認に伴う入退域対応等により、サーベイ開始までに時間を要することになった。また、一時管理区域のトラロープによる区画についても資材の準備等のために時間を要した。
 これらについては、爆発後、作業者は建家内に待機することの指示がなされていたが、この待機の指示の放送が、再処理工場関連施設に限定されており、再処理施設全域への周知の点で問題があった。また、確実に立ち入りを防止する目的での応急的な表示を行う等の措置を検討すべきであった。今後は部門間の連携の強化及び防災用品の整備等も含め、迅速な対応が図れるよう検討する。

3. 一時管理区域指定の周知について
 一時管理区域の指定については、環境施設部現場指揮所内の各課長を通じて周知された。処理第一課については電話連絡により周知を図った。
 一方、再処理工場への連絡については3時08分頃、環境施設部現場指揮所の環境施設部技術課長から再処理工場管理課長へ電話及びFAXで連絡した。
 また、一時管理区域指定時に、核燃料取扱主任者、再処理施設保安統括者に報告されるとともに安全管理部長にも通知された。その他、再処理第4警備所入口に一時管理区域指定の表示を行い、出勤してくる従業員への周知を図った。

 一時管理区域指定の周知については、このように各課ごとに個別に連絡し、さらに再処理工場については、現場指揮所が別に設置されていたこともあり、連絡が遅れることとなった。一度に全員に周知するという観点では放送設備等を利用することがより効果的であり、今後、設備の整備並びにその利用に関して教育・訓練が必要である。

4. 施設周辺飛散物の回収・清掃作業について
   3月12日の未明に、アスファルト固化処理施設周辺の汚染拡大防止のため、爆発により施設周辺に散らばった飛散物の回収・清掃作業を行った。その後、現場保存が必要と判断し、一旦回収した飛散物を、戻す作業を行った。

 
4.1 回収・清掃作業の経緯
 
(1) 3月12日 2時30頃、施設周辺の汚染状況について「アスファルト固化処理施設建家周辺の飛散物に汚染がある」との報告を受けた環境施設部長は、保安規定第83条に基づきアスファルト固化処理施設周辺を一時管理区域に指定し、一時管理区域境界区画のため半面マスク、トラロープ等の資材準備を指示した。
(2) 3時06分頃、現場指揮所技術課長から処理第一課長へ施設周辺の一時管理区域区画のための準備、要員の待機及び回収袋の準備を指示した。(処理第一課の記録では、「技術課長、回収作業 10名程度確保すること」との記載あり。)
(3) 3時47分頃、現場指揮所技術課長から処理第一課長へトラロープ張りの要員を準備するよう指示した。(処理第一課の記録では、「一時管理区域内除染作業指示、約10名、待機」との記載あり。)
 その後、作業員16名は処理第一課長からの作業指示を、それまでの黒板の記載内容等から回収・清掃作業についての指示と受け取り、半面マスク等を着用し4時頃から5時頃まで周辺の飛散物の回収・清掃作業を実施した。
(4) この頃、施設周辺の一時管理区域境界外側でトラロープ張り作業に協力していた処理第二課員が、5時06分頃、現場指揮所にトラロープ張りを終了したことを報告し、合わせて処理第一課員が飛散物の回収・清掃作業を行っていることを報告した。
(5) 5時11分頃、現場指揮所技術課長は処理第一課長へ、飛散物の回収作業の中止及び回収した物を元に戻すよう指示した。(注:技術課長は飛散物の回収・清掃作業については、いずれ実施するが原因究明との関係もあり、飛散状況の把握の後に行うとの認識であった。)
 これを受け処理第一課長は、回収・清掃作業から帰ってき作業員に回収した飛散物を元に戻すよう指示した。
(6) 5時20分頃から、処理第一課作業員11名は半面マスクを着用し、回収した飛散物の戻し作業を実施した。
 なお、大部分は元の位置に戻したが、アスファルト固化処理施設と第三低放射性廃液蒸発処理施設間にあった扉をトラックエアロック南側から戻していないことが後で判明した。

 飛散物の回収・清掃作業という一時管理区域での作業を行うに当たっては、作業方法、安全装備等についてあらかじめ計画を立案すべきであった。しかし、現場指揮所からの指示内容と処理第一課での指示の受け取り方、及びその後の行動に食い違いが見られ、爆発事故後の指揮命令系統の混乱により、これがなされなかった。また、飛散物の回収について現場保存に関する配慮が作成されておらず、この点についても緊急時の対応について、充分な教育・訓練が必要である。

4.2 回収・清掃作業における安全装備について
 飛散物の回収・清掃作業においては、作業内容及び安全装備についての明確な指示がなかったことから、作業員は全員半面マスク及びゴム手袋を装備して行ったが、シューズカバー及びタイベックスーツの着用等については統一されないまま作業が行われた。回収・清掃作業及び戻し作業終了後のサーベイの結果、計8名の靴底に微量の汚染が確認され、放射性廃棄物として廃棄した。
 半面マスクは全員着用していたことから、放射性物質の体内摂取の可能性は少ないと考えられたが、その後、念のため全身カウンタによる測定を行い、16名の作業員のうち1名は、火災・爆発時に放射性物質を体内摂取していたが、本作業による体内摂取はないことを確認した。
 一時管理区域での作業装備については、管理区域での装備を準用すべきであったが作業開始の指示の混乱と同様、作業装備についても指示のないまま作業者がそれぞれに判断し、吸入摂取や皮膚汚染を防止する半面マスクとゴム手袋については全員着用して作業を行った。その他の装備については判断に違いが生じた。結果的には靴底の汚染のみで、本作業による放射性物質の体内摂取の問題はなかったが、緊急時の防護装備の指示に関して今後徹底が必要である。

5. 一時管理区域内のその後の清掃、除染作業及び一時管理区域の縮小解除
 アスファルト固化処理施設周辺の一時管理区域指定後、区域内の清掃・除染作業は3月13日に開始し、ダイレクトサーベイ又はスミヤを行い、除染が完了したことが確認された区域について、3月16日及び22日にそれぞれ一時管理区域を一部縮小し、3月28日にすべての一時管理区域を解除した。


図表項目一覧

図-1 ASP建家周辺モニタリング結果(3/12 1:20頃測定)
図-2 ASP建家周辺モニタリング結果(3/12 3:30頃測定)
図-3 一時管理区域指定図(3/12 2:30)
図-4 一時管理区域指定図(3/12 5:20)
表-1 飛散物回収及び戻し作業における準備等の状況

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