2012年2月6日(月) 東奥日報 社説



■ 恒久的な航路存続探ろう/大間フェリー新造

 下北半島と函館市を結ぶ大間フェリー航路存続に向けて新船の導入が正式に決まった。

 大間町議会が1月末、存続に必要となる約26億円の新船建造工事請負契約案を可決。町と共有建造する鉄道建設・運輸施設整備支援機構、造船業者の3者による契約が成立した。

 航路をめぐっては、2008年9月、当時の事業者が燃油高騰などを理由に撤退を表明。町と県、現事業者の津軽海峡フェリーの3者が協議を重ね、老朽化した現行船「ばあゆ」(1529トン)に代わる新船を町が建造し、「公設民営」方式で航路を存続することで合意していた。

 新船は1985トン。7月をめどに建造が始まり、就航は13年4月の大型連休前を予定している。

 建造費約26億円の財源は鉄道・運輸機構の拠出金と県補助金が各5億円。町の負担は約16億円に上る。過疎債を発行し借金で賄うが国の交付税措置で負担を軽減できる−との考えだ。

 町議会では航路維持への異論は出なかったものの、大間原発の建設中断による固定資産税収入や町財政の先行きを不安視する声が上がった。また、巨額の支出に見合う全町民対象の運賃割引制度を求める意見があらためて出された。

 指定管理者となる予定の津軽海峡フェリーは、運航開始から5年間の収支を勘案した上で割引制度などを考えるとしており、現段階で新船就航時の通院者割引が検討されている。

 今でさえ、航路維持のため、町が事業者に対し赤字補填(ほてん)を行っているのに、新船就航とともに新たな負担を負わせることが可能なのか、割引制度導入の影響などを慎重に見極める必要がある。

 年間延べ1万人の町民が通院や買い物などに利用する公益性の高い生活航路でもある。今は航路維持を最優先しながら、地域一丸となって安定運航確保へ対策を探る時ではないか。

 航路の安定運航には、観光客を含め利用者を増やすことが大命題。金澤満春町長は「住民割引の実現とともに長期的な運航継続につながる利用率向上に努める」という。地域の基幹航路を次世代につなぐために知恵の絞りどころだ。

 事業者は、新船の減価償却期間である11年間は支援を受けず運航すると確約しているが、町は、それ以降の運航継続を視野に対策を進める必要がある。

 航路は道路網が脆弱(ぜいじゃく)な下北半島と北海道を結ぶ唯一の交通機関だ。東日本大震災の後、原子力災害時の避難路としても重要性を増している。

 航路存続は町だけの問題ではない。函館市は昨年「経済、観光、医療の面で重要な役割を担う」(工藤寿樹市長)として財政支援の検討を始めた。町は同市と航路を通じた協力関係を強め、活性化策を協議してもらいたい。

 さらに、むつ市をはじめ下北半島の他市町村や県に強く働きかけて支援の枠組みを構築し、恒久的な航路存続の道筋を探るべきだ。


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