テニスの歴史
ラケットの素材の歴史
プレイヤーにとって最大の関心事はやはりラケット。プレイヤーのタイプは様々ですが、プレイヤーの個性を最大限に発揮できるようなラケットが日夜開発されています。ラケットの素材の変化は、テニスのプレイスタイルにも影響をおよぼしています。
「ラケット」=「手のひら」
テニスの直接の祖先といわれる球技は、フランスで始まりました。これは、イスラム教徒が宗教的行為として手のひらでボールを打ち合っていたのを見たキリスト教の聖職者が、興味を持って始めるようになったことで広まったといわれています。 後にこの球技は「ジュ・ド・ポーム」と呼ばれるようになります。ちなみに「ポーム」とはフランス語で「手のひら」という意味です。一方、「ラケット(rachet)」の語源も、アラビア語で「手のひら」という意味の「ラーハット」という言葉でした。
ラケットも作るプレイヤーたち
黎明期のテニスは手のひらでボールを打ち合う競技でしたが、やがてボールを打つための道具も現れてくるようになります。
15世紀のヨーロッパでは、プレイヤー自身がラケットを作っていました。この頃は、一定の試験に合格することによって「プロ」のテニスプレイヤーと認められていましたが、試験に合格する条件の一つが自分でラケットを作れることだったということです。ただしこの当時のラケットは、現在の中空になったフェイスの縦横にガットが張られているというような形のものではありませんでした。
その後は様々な形のラケットが現れては消えてゆきましたが、16世紀の中ごろからガットを張ったタイプのラケットが用いられるようになりました。
産業の発展とラケットの変化
時代が進むにつれて、ラケットの形と共にラケットの素材も変わっていきました。
かつてラケットは木製でしたが、テニスを楽しむ層が広がり、また大規模なトーナメントも開催されるに至って、様々なプレイヤーが使いやすいラケットが大量に必要になったことから素材に変化が現れます。徐々に、重い一枚板ではなく、薄い木の板を何層も重ねた素材が用いられるようになりました。
また、一本一本手作りだったラケットも、工業技術がラケット生産にも応用されるようになり、大量生産されるようになります。
特に、19世紀以降爆発的に発展した自動車産業は、ラケットの素材や加工技術にも影響を与えました。自動車産業で用いられていた小型の金属部品の加工技術が、ラケットのフレームなどの加工技術にも生かされるようになったからです。
航空宇宙機器の素材がラケットに
現在では航空宇宙機器で用いられる素材がラケットに使われるようになりました。
グラファイト・ファイバーは、カーボンファイバーを2千度から3千度の高温で加工して作る新素材で、ラケットなどのスポーツ用品のほか、航空宇宙機器用としても用いられています。この素材は、熱加工の過程で処理方法を変えることによって、強度と弾性が変わるという特徴があります。この素材の特徴を最大限に引き出し、より軽くより強いラケットを生み出すために、ラケットの部位によって異なった熱処理をしたグラファイト・ファイバーが使われています。