一方、中国の実体経済は実質ゼロ成長状態にある。中国政府は昨年の実質成長率を7・8%、今年の成長率目標を7・5%前後としているが、中国の経済統計のうちで最も信頼性の高い鉄道貨物量は昨年は前年比マイナス0・7%で、今年1、2月の合計でも同0%と低迷している。つまり、中国はモノを前年より多く生産しても、多くの製品を工場の外へ出荷していないわけで、鉄鋼、家電、自動車など大半の主力業種で過剰生産と過剰在庫が膨らんでいると推定できる。大量の廃棄物を生み出し、「PM2・5」に象徴されるような汚染物の排出も放置されるわけである。
昨夏からの尖閣諸島の領有権をめぐる日中関係の悪化に、円安進行が加わり、今後日本企業の対中投資の減速は拍車がかかるだろう。米企業の間でも、中国の人件費上昇などを考慮して米国内に回帰する動きも出ている。
中国は流入している海外からの巨額の投機資金が一斉に流出する恐れがあるので、人民元を切り下げできない。円高是正は図らずも、中韓それぞれの構造問題を浮き上がらせている。