うつ病についての記録

うつ病患者が私見を述べます。色々間違うかもです。参考にしていただけると幸いです。

部下のうつ病を見抜くには

まとめ

  • 残業が以前よりも増えていないか?その割に成果が以前と変わっていないのではないか?
  • 本人が関心のない仕事(できれば避けたいと感じている仕事)が、後回しか 放置されていないか? ルーチンワークであるにもかかわらず、滞っていないか?

管理職の方へ

部下の、あるいは自分自身がうつ病であることを見抜くにはどうすればいいのでしょうか。
うつ病が重症になってからの対応方法についてはわりとよくみかけるのですが、ごく初期の症状についてはあまり言及されていないように感じます。
うつ病のごく初期に適切な対応がとられていれば重症にまで至ることは防げると思われます。患者自身がうつ病であることに気付いていない、あるいは気付こうとしない(認めようとしない)状況でも、周囲の人間が「これはひょっとしてうつ病かな」と気付ければ、あるいは「適切な対応」がごく初期にとれるかもしれません。軽症であれば、投薬治療は必要ないとする意見もあります。症状が軽いうちに対応できれば、本人の負担も周囲の、そして社会の負担も軽くてすみます。管理職の方には、できるだけ早い段階での対応をお願いしたいと考えます。

うつ病になると認知機能が低下します。これにより生産性も低下します。

認知機能が低下する、と聞くと「認知症」つまり痴呆…「呆ける」というのを思い出します。実際、高齢者のうつ病が認知症と誤診される事例はよくあることだそうです。
余談ですが、認知機能が低下する病気としては、認知症、うつ病のほかに統合失調症もあります。(他にもあるかもしれませんが、私は知りません…。)認知症、うつ病統合失調症のそれぞれの「認知機能障害」について調べてみたことがあるのですが、いずれも「認知機能障害」としかいいようがないのですが、表れかたがずいぶん違うなあと感じました。おそらく、認知機能障害以外の症状が関係していると思うのですが、うつ病を認知症と誤診する医師もいるのですから、臨床の現場で見分けるのは難しいのだと思います。

認知機能とは…「ものごとを記憶する、考える、判断する、人とコミュニケーションをとるなど、私たちが日常生活を過ごすために欠かせない脳の働きのこと」(メンタルナビ-ヤンセンファーマ)です。これが障害されるのですから、仕事も「今までできていたことができなくなる」ため、生産性も低下します。生産性が低下しているのに、患者本人はこれを補おうとするのですから、畢竟「残業が増えます」。

(8)思考力や集中力の減退または決断困難・思考(思路)/ 制止・抑制:内的制止;思考・認知面の障害

尋ねるポイント
「以前と比較して頭の回転が遅くなったように感じませんか?」
「なかなか物事に集中できなくなっているということがありますか?」
「普段より頭が働かず,考えが遅くなったり,考えがまとまらなくなったりしていますか?」
「普段なら問題なく決められることが, くよくよと思い悩み,なかなか決められなくなっていますか?」
「新聞など,ただ字面を追っているだけで,内容が理解できないことはないですか?」

うつ病になると思考力や集中力が低下し,着想も乏しく,あれこれ考えては,堂々巡りし,迷って決められず,理解力の低下や記銘力障害も伴うことによって,仕事や勉学が進まなくなります。さらには判断力や決断力も鈍り,これらが著名であれば,診断や症状評価が困難になる場合もありますので,周囲からの客観的な情報が得られることが望ましいと考えます。うつ病においては,一般的な症状でありながら意外に気づきにくいのは「頭の働きの低下」であり,以前より仕事の能率が悪く,判断に時間がかかり,今までにないミスが多くなった結果,責任感の強い人ほど病気からくるものとは思いもよらず,勘違いして自分を責めてしまいます。そして,ぎりぎりまで元気なふりをして,突然,自殺を考えてしまうわけです。従って,仕事量が変わらないのに残業が増えてきたら,まず,うつ状態を考えなくてはいけませんし,残業が多いから仕事量が増えて,うつ病になったのではなく,うつ病になったから作業効率が低下して残業が多くなったという発想が労働者を扱う管理者や企業側には必要なのです。高齢者であれば主に注意集中や判断,思考,記憶の低下を自覚するので「最近,忘れっぽく,自分がボケてきたな?」と訴えた結果,実際に周囲が認知症の様(仮性認知症)に捉え,一般科医での受診でうつ病が認知症と間違えられることもあります。福田正人先生らの研究グループによる光トポグラフィー検査(近赤外線スペクトロスコピィ:NIRS)に代表される近年の脳機能画像研究からは,うつ病における前頭葉皮質の賦活反応性の低下(男性と比較すると女性や壮年で低下が目立つ)が認められるとの報告が注目されており,うつ病において脳血流や脳代謝が,特に前頭葉で低下していることがわかってきています。

うつ病の認知機能低下に関する主な特徴>
(1)集中困難
(2)否定的な考え
(3)記憶力低下
(4)認知力低下(Widlocher,1982)
(5)自殺念慮
(6)妄想的思考
(7)過剰な反すう
(8)問題解決能低下(Harley et al,2006)
(9)歪んだ自己概念
(10)精神運動遅延
(11)視空間学習能力・記憶力,実行(遂行)機能,注意力の低下(Porter et al,2003)
(12)反射欠如
(13)理解力低下
(14)悲観的認識
(15)間違った意思決定

橋本謙二,Ian Hindmaach,笠井清登:うつ病・不安障害治療とシグマ受容体;臨床精神薬理Vol.11,1407-1417,No.7 Jul.2008,星和書店より掲載・追加

城東やすらぎグループ ブログ : 大うつ病性障害の診断について3
※ 強調はブログ主による

やっかいなのは、今まで長時間労働をこなしてきていた人…つまり、もともと残業の多い人の場合はどうか、ということです。
これは個人的な見解なのですが、うつ病になっていると、本業とはあまり関係のない事務仕事…交通費精算、諸経費精算、小額資産購入申請、有休申請、週報等の提出…e.t.c.…いわゆるルーチンワークとよばれる仕事が滞りがち(後回しにするか、やらないまま放置する)ことが増えるのではないか、と感じています。本業を捌くのに時間がかかるようになった結果、これらの業務をやる余裕がなくなるのか、こまごまとした仕事がおっくうになるのか…。
はっきりしているのは、自分が関心をもてない仕事、重要とは感じていない仕事をやるのがとても苦痛だということです。嫌だなー、と思っていることが、何倍にも増幅されてしまうのもうつ病です

まとめます。

  • 残業が以前よりも増えていないか?その割に成果が以前と変わっていないのではないか?
  • 本人が関心のない仕事(できれば避けたいと感じている仕事)が、後回しか 放置されていないか? ルーチンワークであるにもかかわらず、滞っていないか?


とりあえずは、このくらいでしょうか。他にも色々とありますが、きっかけとしてはこの2点を見ておくのがいいと考えております。

「病院に行っても、どうせよくならないよ」

ところで、さらにやっかいなことがあります。
うつ病患者のなかには、「どうせよくならないよ」といって病院に行こうとしない人がいます。これもうつ病の症状のひとつなのです。
この見解(患者が病院に行こうとしない)は医師も言っていることです。以下は私見ですがご参考までに。

初期のうつ病の人に「心療内科に行け」とか言っても「どうせ何もかわらないよ」と言って、行こうとしない。本当は、病院に行ったら「よくなる」か「わるくなる」のどちらかで、現状維持というのはありえない。病院に行ったら「よくなる」のがふつうだし、病気なんだから放置していると悪化することもある。放置してたらよくなった、ということもありえる。うつ病だと、かかる医者によってはハズレがあって、「悪くなる」こともある。現状のまま変化なし、というのは、どのような状況でもありえない。なのに「どうせ何もかわらないよ」という。仕事の内容が変わらないからだ、というのかもしれないけど、それは違う。うつ病なので「変わらない」と思い込むのだ。仕事が、状況が、うつ病にさせたのかもしれないけど、仕事や状況は自分の力である程度変えていけるもので、変わらないわけがない。それを変えられないのは、自分の認識に問題があるからではないか。そうこうしているうちにどんどん悪化していって、寝たきりになる。

http://d.hatena.ne.jp/yachimon/20110506/1304659258

「ひょっとしてこの人はうつ病ではないかな?」と思って「病院にでも行ってみれば?」とすすめてみると「どうせなにもかわらないよー」と返答してきたら、さらに注意が必要ではないかと思います。(「どうせなにもかわらないよ」の裏には「体調が悪いのはわかってる」という暗黙の了解が存在しています。体調が悪いなら対処が必要なのではないですか?)

うつ病かな?と思ったら

ベックのうつ病調査表をやってみましょう。
http://www.ohhori.com/depression/bdi_check.htm
質問項目に従い、最近 2、3 日の気分をこたえます。中程度のうつ状態が 2 週間以上継続している場合、病院へ行ってください。

軽度の場合は「認知療法」を試してみるのもいいかもしれません。実は以下の本を読むだけでも「認知療法」になったりします。

〈増補改訂 第2版〉いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法

〈増補改訂 第2版〉いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法

認知療法」では、人をうつ病へと導く「認知の歪み」を患者本人に認識させ、改善するように働きかけます。
この点をもって「認知療法」を批判する人もいます。「認知を変える」とは、ものの捉え方、ひいてはものの考え方をも変えることです。それを「洗脳」と呼んで批判しているのです。
たしかに、その人なりのものの考え方というのは、貴重なものです。大切なものです。そう易々と変えていいものではないと、私も思います。しかし、うつ病患者のそれは、患者自身を不幸にする…最悪の場合、死へといざなうものです。人を死へと追いやる"考え方"なら、それは改めたほうがいいと思うのですが、いかがでしょうか。

以下に、この本に載っている「認知の歪み」をまとめておきます。

認知の歪みの定義 (表3-1から。矢印→以降は、本文などを元にした補足)


1. 全か無か思考:ものごとを白か黒かのどちらかで考える思考法。少しでもミスがあれば、完全な失敗と考えてしまう → 二分思考法

2. 一般化のしすぎ:たった1つの良くない出来事があると、世の中すべてこれだ、と考える

3. 心のフィルター:たった1つの良くないことにこだわって、そればかりくよくよ考え、現実を見る目が暗くなってしまう。ちょうどたった1滴のインクがコップ全体の水を黒くしてしまうように → 選択的抽象化。ポジティブなことを見えなくする。

4. マイナス化思考:なぜか良い出来事を無視してしまうので、日々の生活がすべてマイナスのものになってしまう → 単に良い出来事を無視するだけでなく、正反対の悪いことに変えてしまう。

5. 結論の飛躍:根拠もないのに悲観的な結論を出してしまう

     a. 心の読みすぎ:ある人があなたに悪く反応したと早合点してしまう

     b. 先読みの誤り:事態は確実に悪くなる、と決めつける

6. 拡大解釈(破滅化)と過小評価:自分の失敗を過大に考え、長所を過小評価する。逆に他人の成功を過大に評価し、他人の欠点を見逃す。双眼鏡のトリックとも言う

7. 感情的決めつけ:自分の憂うつな感情は現実をリアルに反映している、と考える。「こう感じるんだから、それは本当のことだ」 → 「もう何の希望もないように感じる。だから私の今の問題はまったく解決不能だ。」 → 感情的決め付けの副産物は「決断の引き伸ばし」。「とてもこんな汚い机を片付ける気分にはなれない。だから整理することはもう不可能なんだ。」現実には、すぐに完了するような、そんなに難しい仕事ではないのに、いつまでたっても実行することができない。

8. すべき思考:何かやろうとする時に「~すべき」「~すべきでない」と考える。あたかもそうしないと罰でも受けるかのように感じ、罪の意識をもちやすい。他人にこれを向けると、怒りや葛藤を感じる → 自分へ:自己嫌悪、恥・罪の意識 他人へ→ 怒り・葛藤

9. レッテル貼り:極端な形の「一般化のしすぎ」である。ミスを犯した時に、どうミスを犯したのかを考える代わりに自分にレッテルを貼ってしまう。「自分は落伍者だ」

他人が自分の神経を逆なでした時には「あのろくでなし!」というふうに相手にレッテルを貼ってしまう。そのレッテルは感情的で偏見に満ちている

10. 個人化:何か良くないことが起こった時、自分に責任がないような場合にも自分のせいにしてしまう

http://d.hatena.ne.jp/yachimon+book/20100626#1277529310