坂口征二VSタコ・イカ
2013年04月17日
前回のブログ「いかVSたこ」http://www.tokyo-sports.co.jp/blogwriter-shibata/336/
の続編? 業界の先輩から教えていただいたエピソードを思い出した。
インベーダーゲームは1978年(昭和53年)に登場し、爆発的なブームとなった。喫茶店のテーブルは、インベーダーゲーム機となり、みんな百円玉を積み上げ、ゲームに熱中した。1人で遊ぶことも、2人で対戦することもでき、「名古屋撃ち」などを紹介する攻略本まで続々と発売、ゲームにのめり込む青少年が社会問題になったほど国民的な一大ブームだった。
当時、新日本プロレスの事務所は東京・南青山の植田ビルにあったが、一階は「MIO」という喫茶店だった。MIOは取材でもよく使われ、喫茶店ながら「豚の生姜焼き定食」などランチメニューも豊富。吉田光雄から改名したばかりの長州力は「サバの味噌煮定食」がお気に入りだった。MIOに行くと誰かしらレスラーがいたものだ。
NWA世界ライトヘビー級王座を獲得しメキシコから凱旋帰国したばかりの木村健悟は、遠征前に付き人だった坂口征二に連れられて来ていた。初めて見るインベーダーゲームに目を丸くし「ちょっと見ない間に、こんなものが出来てたんですか。面白そうですね。坂口さんやったことありますか。どうやるんですか」と興味津々。坂口は「やっちゃるけん」とゲームを始め「よく見とけよ~」と自信満々だった。
さっそく百円玉を入れゲームスタート。あの独特のおっとりとした口調で「このタコとな~、このイカをな~、このボタンでな~」。「ピューン、ピューン、ピューン・・・」。「あッ!」。どうやら、やられてしまったらしい。
「3回できるから、大丈夫だけどな~」。「このタコをな~、このイカもな~、このボタンを押してな~」。「ピューン、ピューン・・・」。「あッ!」。またしても失敗。「最近やってないからなぁ~」。
最後の一回。「このタコとこのイカがな~、こっちに来る前にな~、このボタンでな~」。「ピューン、ピューン・・・」。「あッ!」。ゲームオーバーらしい。「このタコとな~、このイカがな~、こっちにやって来ちゃったから終わっちゃったよ~」。タコとイカが大挙来襲で、荒鷲が負けてしまった訳だ。タコ・イカ恐るべし。
「・・・」。しばしの沈黙の後、木村は「こんなすぐ終わっちゃうのに、百円は高いですねぇ」。坂口は「いや、う~ん」と頭をかくばかり。何ともほほえましい光景だったという。
インベーダーゲームにはまり、サーキットの合間をみては喫茶店に入り浸って熱中していたレスラーも多かったが、木村はやらなかったそうだ。