「祖父母が親の代わりに育てているケースでは、震災後6ヵ月位までは緊急的対応として何とか養育しても、孫が成人するまで5年、10年…と続けられるかというと体力的にも難しい。特に、お孫さんが反抗期を迎える思春期のようなケースですと、祖父母の立場では対応も大変でしょう。
また、30歳になったばかりの若いおじ・おばのケースでは、実子もまだ幼児や小学校低学年、そこに実子と同じくらいの小さなめい・おい(実子にとってはいとこ)が加わった同居生活となります。そのため、おじ・おばを親代わりとした擬似的な親子関係がはじまりますが、時には言葉では伝えきれない不安や悲しみ、愛情の確認作業としての退行現象(赤ちゃん返り)で、おじ・おばを独り占めにしようとする行為が見られました。
これは、子どもの発達からは正常な行動と言えますが、一方で実子もいとこに『自分の親が取られてしまうのではないか』と不安になり、退行現象を現したり不登校になったりするケースもあります。さらに、『身内の問題は身内でなんとかする』といっても、直接の血縁関係にない配偶者に対する気遣いもあり、うまくいかないこともあります」(大竹教授)
震災から1年半が過ぎても、子どもたちは
ピカチュウに抱きついて離れなかった
被災地の子どもたちは、今までに体験したことのない環境でどれほどストレスを抱えているのであろうか。そのことを具体的に教えてくれたのは、震災1ヵ月後から人気ゲームソフト「ポケットモンスター」の被災地支援活動「POKノMON with YOU」の一環として、「ピカチュウ」をつれて被災地を訪れていた、株式会社ポケモンの田中雅美さんだった。
筆者が以前取材した際、「震災1ヵ月後ごろに訪問した避難所では、駆け寄ってきた子どもが、いつまでもピカチュウに抱きついて離れなかった」と聞いたが、その時はすでに震災発生時から1年半が経過していた。「さすがに今はもう、その状況は改善されましたよね?」と尋ねると、田中さんは「子どものケアが必要な状況は今も変わっていないと思います。被災地訪問もまだ続けていますし」と答えた。
そこで、筆者は田中さんに頼み込んで、POKéMON with YOUワゴン(ポケモンウィズユーワゴン、ポケモンが描かれたワゴン車に遊び道具を乗せて、被災地のこどもたちを訪問する活動)にボランティアとして同行させてもらうことにした。晩秋の訪れを告げる冷たい小雨が降るなか、筆者は宮城県のある小学校で行われた地域の秋祭りにお邪魔した。活動内容は「好きなポケモンのキャラクターの絵を描いて、マイバッグを作ろう」。100人以上の子どもたちが、それぞれ好きなキャラクターの下絵をマジックでバッグに移し色を塗っていく。その状況は、「ここは被災地です」と言われなければ分からないほど、どの地域でも見られる普通のイベント風景だった。「もう傷は癒えはじめているのだな…」、という気持ちでイベントの片付けに入りかけたその時、ピカチュウが現れた。