■東銀座の地下に「幻の地下街」
地下街に詳しい都市地下空間活用研究会(東京・文京)の粕谷太郎主任研究員によると、「日比谷線開通後、地下街で起きた火災事故を受けて消防法が変わり、地下街には地上に通じる出口が必要となった」という。
移転先を失ったことで三原橋地下街の取り壊しも宙に浮き、銀座の地下に広大な空間が残った。これが一部で噂されている「幻の地下街」だ。
東京都によると、現在、この空間は都の倉庫として利用しているという。前出の「建設史」はこの空間について、銀座4丁目交差点まで約167メートルある、と記している。
三原橋地下街がこのまま取り壊しとなると、「幻の地下街」が脚光を浴びそうだ。
今回耐震性が不安視されているのは地下街部分で、老朽化した橋桁を撤去すれば問題が解決するとみられている。「幻の地下街」から地上に通じる出口ができれば、地下街として認められる可能性がある。場所は銀座の一等地。税金を投入して整備した無駄な空間が、半世紀を経てようやく日の目を見るかもしれない。
ちなみに、三原橋地下街とその上にある建物は建築家、土浦亀城が手掛けた。20世紀を代表する米国の建築家、フランク・ロイド・ライトの弟子で、妻は吉野作造の長女だ。そんな建築家が手掛けた建物も、地下街が閉鎖となれば取り壊しは必至だ。
再開発は地下街の裏手でも進んでいる。晴海通りの南側では14階建ての高級ホテルが計画されている。三井不動産によると、2014年秋以降の竣工予定だという。その隣にある銀座中央ビルは現在解体作業中で、所有者のシェイプアップハウス(東京・港)によると、複合ビルとして建て替える計画だとか。ひっそりとしたこのかいわいが大きく変わるかもしれない。
■現役最古は「浅草地下街」に
三原橋地下街が今後閉鎖となると、どこが現役最古となるのか。地下や地下街に詳しい粕谷さんに聞いた。
「『浅草地下街』が最古となります。本格的という意味では名古屋駅にある『サンロード』と言ってもいいかもしれません」
浅草駅の地下にある浅草地下街は、通路なども含めた総面積が1350平方メートルある。三原橋地下街とほぼ同じくらいだ。これに対してサンロードは1万1350平方メートル。規模からすれば確かに本格的といえる。
ただ、浅草地下街は三原橋と同じく昭和ムード満点の個性的な地下街だ。2011年に東京・神田駅の「須田町ストア」が閉鎖となるなど古い地下街が次々なくなるなかでは、歴史を伝える貴重な存在でもある。
三原橋地下街、歌舞伎座、地下街
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