今から19年前に、当時の金日成(キム・イルソン)政権が初めて核による脅迫を行って以来、韓国には北朝鮮の振る舞いを正す時間と機会があった。韓国が断固たる原則に基づき一貫した対応をしていれば、北朝鮮は少なくとも今のように聞く耳を持たないやくざな振る舞いはできなかっただろう。しかし韓国は金までばらまいて19年という歳月を無駄に過ごし、北朝鮮を統制不可能な爆弾に育て上げた。今、韓国は北朝鮮から頻繁に脅迫されているが、国内では経済が病み、対外的な信頼度という点でも危うい状況だ。「北朝鮮リスク」は、韓国が天罰のように抱えていくべき足かせとなった。
日本の国粋主義陣営の主張を代弁する月刊誌のS誌は、最新号に注目すべき記事を載せた。「日韓に次いで『日中再逆転』へ!」というフレーズに続けて「中国と韓国『没落の宴』」というタイトルを大きな活字で載せた。東北アジア3カ国間の国力競争で韓中の躍進が終わり、日本が再び優勢になったというのが要旨だ。S誌が韓国没落の根拠の一つに挙げたのが、北朝鮮リスク。韓国は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党第1書記が進める核挑発のチキンゲームで追い詰められ、ここから脱出する道はない、というわけだ。
S誌は、日本の戦闘的国粋主義者の「本音」を代弁してきた雑誌だ。韓国を感情的に非難してきたS誌が「韓国没落」を叫ぶのは、今に始まったことではない。しかしS誌が主張する韓日再逆転の論理は鋭かった。部分的な誇張や飛躍はあるものの、韓国人が漠然と感じてきていた急所を、S誌は荒っぽく突いていた。
北朝鮮リスクと共にS誌が主張する韓国の弱点は、技術力なき製造業の基盤のもろさだ。韓国は、技術者が疎んじられる文化を持ち、日本にように厳しい職人精神がなく、その結果、中心的技術力を蓄積できていないというのだ。そんな韓国の製造業が躍進できたのは、国中が犠牲になって実現したウォン安のおかげだった。しかし安倍政権が円安政策を推し進めるや、為替バブルははじけ、韓国式ビジネスモデルは崩壊の危機に直面した、とS誌は主張した。
さらに致命的な弱点は、超高速で進む高齢化という時限爆弾だ。韓国は、十分に金持ちになってもいない状態で高齢化の爆弾を抱えた。日本は、所得4万ドル(現在のレートで約391万円、以下同じ)の時代を迎えてから高齢化が本格化したが、韓国はその半分の2万ドル(195万円)で、日本よりもさらに速く高齢化時代がやって来る。S誌の結論は、呪いに近い。「人類史上最高の速度で」進む高齢化のため、韓国は沈没を免れないという。