奨学金問題:全国組織が31日発足…返済苦しむ若者急増で
毎日新聞 2013年03月27日 15時00分(最終更新 03月27日 15時24分)
不況や就職難で奨学金が返済できず、厳しい取り立てを受けたり、自己破産したりする若者が急増しているとして、全国の学者や弁護士らが「奨学金問題対策全国会議」を31日に発足させる。背景には、学費高騰や学生支援組織の独立行政法人化などがあり、支援者らは「本人の努力だけでは解決できない社会問題だ」と訴えている。奨学金問題で全国組織が結成されるのは初めて。
独立行政法人・日本学生支援機構(旧日本育英会)によると、2011年度の同機構の奨学金利用者は128万9000人。大学や専門学校に通う学生の3人に1人が利用している。同機構の奨学金に給付型はなく、卒業後に返済が必要だが、就職難や非正規雇用の増加で返済が遅れる利用者が続出。延滞者は03年度末から11万人増え、11年度末で33万人にのぼる。
追い打ちをかけたのが、独立行政法人化による回収の厳格化だ。同機構は10年度から、3カ月滞納した利用者を銀行の個人情報信用機関に登録(いわゆるブラックリスト化)し、4カ月目から民間の債権回収会社(サービサー)に委託している。その後は裁判をし、11年度だけで給料差し押さえなど強制執行は135件にもおよぶ。
全国44の弁護士会が2月に実施した奨学金に関する初の電話相談には計453件が寄せられ「生活苦で返済できない」が42%で最多だった。対策会議設立の母体は80年代から多重債務者を救済してきた全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会。対策会議事務局長(予定)の岩重佳治弁護士は「学生の将来をひらくための奨学金が、将来をつぶすことになっている。学生支援のあり方を含め、社会全体で取り組む必要がある」と話す。
対策会議の設立集会と記念シンポジウムは31日13〜16時、東京都千代田区六番町の主婦会館プラザエフで。問い合わせは、東京市民法律事務所内の事務局(03・3571・6051)。【浦松丈二】