避難高齢者:死亡リスク2.7倍…南相馬の施設対象に分析
毎日新聞 2013年03月27日 11時58分(最終更新 03月27日 13時13分)
東京電力福島第1原発の事故に伴い、福島県南相馬市内の老人福祉施設から避難した高齢者の死亡リスクが、事故前の約2.7倍にのぼることが、東京大の研究チームの分析で分かった。避難距離よりも、避難そのもののストレスや不十分な介護環境が原因とみている。27日付の米科学誌「プロスワン」(電子版)に掲載された。
◇事故前の5年と比較
事故後、政府は原発20キロ圏内に避難指示を発令。30キロ圏内でも自力で動けない住民に避難を求めたが、チームは「この高齢者の一律避難が死亡率増加につながった可能性がある」と指摘している。
調査は南相馬市内の5老人福祉施設を対象とした。事故当時、計328人が入所しており、遠くは神奈川県や新潟県などに避難したが、避難後の約1年間で少なくとも75人が死亡していた。
事故前の入所者も含めた計715人のデータを統計的に処理した結果、事故前の5年間と比べた避難者の死亡リスクは約2.7倍となった。施設長らへの聞き取りでは「避難後、質素なマットレスで寝ていた」「投薬が途絶えた」などの問題点が判明。責任者の渋谷健司・東京大教授(国際保健政策)は「避難は高齢者に大きな負担となる。避難先での充実したケアが前提だ」と指摘する。【河内敏康】