教科書検定:「英語で授業」基本に 現場に戸惑い
毎日新聞 2013年03月26日 21時01分(最終更新 03月26日 23時57分)
文部科学省は、今春から完全実施される高校の新学習指導要領に「英語の授業は英語で行うことを基本とする」という新ルールを盛り込んだ。26日に検定結果が公表された英語教科書も、多くがスピーチやディベートなど「コミュニケーション重視」を前面に出し、日本語の記述を減らしている。だが、教員からは指導の不安や疑問の声が聞かれ、実際には「文法重視」の従来型教科書の人気が高まるという皮肉な現象も起きている。
中学と高校で6年間も勉強してなぜ話せないのか−−。危機感を強めた文科省は「英語」「オーラルコミュニケーション」「リーディング」「ライティング」に分けていた科目を「コミュニケーション英語」「英語表現」「英語会話」に再編。英語を使うことを重視し、教科書作りも進められた。
今回の検定で合格した教科書は、文章を速く読んで大意をつかませ、理解度を穴埋め問題などでチェックするスタイルが目立つ。さらに、そのテーマで生徒にスピーチやディスカッションをさせるが、文中の文法事項は、それらの合間に挟み込む形で付随的に学ばせるものが多い。
ある東京都立高の50代の女性教諭は「文法が体系的に学べない。これでは生徒の頭の中に英語の形が整理されない」と危惧する。読む・聞く・話す・書くの4技能を総合的に学べるのが「コミュニケーション英語」の売りだが「すべてがグチャグチャに混ざって中途半端になる」と生徒の混乱を予想する。
高1対象の多くの教科書は11年度に検定を終え、今春から使われる。このうち「英語表現1」(全17点)の採択では、特定の1社の2点がシェアの46%を占めた。従来のタイプに近い文法重視の教科書だ。
この教科書を使うことを決めた都内のある進学校の男性教諭は「レベルの高い大学に生徒を入れるには、特に1年生できちんと文法を教えざるを得ない」。別の教科書会社の編集者は「まるで文法のワークブック。新指導要領の趣旨からかなり外れているように見えるのに、なぜ検定を通ったのか疑問だ」と話す。この会社は、今回も「英語表現2」で1点が検定を通過した。現場の支持が集まれば、追随する教科書会社が出ることも予想されるが、文科省は「各校が最も適切な教科書を選んでいるのだろう」と静観する構えだ。【苅田伸宏、加藤隆寛】