1票の格差:広島高裁岡山支部も衆院選無効判決
毎日新聞 2013年03月26日 11時26分(最終更新 03月26日 13時48分)
「1票の格差」が最大で2.43倍だった昨年12月の衆院選を巡り、弁護士グループが選挙の無効を求めた訴訟で、広島高裁岡山支部=片野悟好(のりよし)裁判長=は26日、岡山2区の選挙を違憲で無効とする判決を言い渡した。1票の格差を理由に無効とするのは25日の広島高裁判決に続いて2件目。広島高裁判決と異なり、無効判決の猶予期間は設けなかった。ただ、無効の効果は判決確定以降に限り、それまでの議員活動の正当性を担保する解釈も示した。被告の岡山県選管は上告するとみられる。
判決は「投票価値の平等に反する状態を容認することの弊害に比べ、無効判決による政治的混乱が大きいとは言えない」と指摘。格差是正を強く求める司法判断を軽視したとして、国会を厳しく批判した。
判決は、小選挙区の区割り全体を違憲と判断したが、無効としたのは訴訟の対象の岡山2区だけ。岡山2区は昨年の衆院選で、自民党の山下貴司議員が当選した。有権者数が最少の高知3区との1票の格差は1.41倍だった。判決が確定すれば山下議員は失職する。
最高裁は11年3月の判決で格差が最大2.30倍だった09年の衆院選を「違憲状態」と判断。各都道府県に1議席ずつ配分し、残りを人口比で割り振る「1人別枠方式」の速やかな廃止を求めた。国会は昨年11月の解散当日に小選挙区の「0増5減」を決めたが、衆院選には区割り作業が間に合わず、最大格差は2.43倍に拡大した。
判決は、最高裁判決から衆院選まで約1年9カ月間あったことに触れ、「衆院議員の任期4年の約半分に相当し、区割り改定のための合理的期間として不十分とは到底言えない」と指摘した。そして、格差を是正せずに衆院選を実施したことを「国会の怠慢であり、司法の判断に対する甚だしい軽視というほかない」と指弾した。
そのうえで、(1)投票価値の平等は最も重要な基準とされるべき(2)無効判決の効力はその選挙区にしか及ばない−−などを理由に、無効判決の弊害を理由に無効請求を退ける「事情判決」の法理を適用することは、相当ではないと結論付けた。
ただ、無効判決で議員が失職した場合、その議員が関わって成立した法律の効力に問題が生じるなどと指摘。「選出当初から議員の資格を有しないとする解釈は採用しない。判決確定で将来に向かって失効すると解すべきだ」との考えを示した。