1票の格差:昨年の衆院選「無効」 初司法判断 広島高裁
毎日新聞 2013年03月25日 16時12分(最終更新 03月25日 23時52分)
「1票の格差」が最大で2.43倍だった昨年12月の衆院選を巡り、弁護士グループが選挙の無効を求めた訴訟で、広島高裁(筏津=いかだつ=順子裁判長)は25日、小選挙区の区割りを違憲と判断し、広島1区と2区の選挙を無効とする判決を言い渡した。1票の格差を理由にした無効判決は初めて。ただ、混乱回避のために一定期間猶予する「将来効判決」を採用、新たな区割り作業の開始から1年となる今年11月26日を過ぎて、無効の効果が発生するとした。被告の広島県選管は上告するとみられる。【黄在龍】
判決は、1票の格差が悪化する中で衆院選が実施されたと指摘。「選挙権の制約、民主的政治過程のゆがみの程度は重大で、憲法上、許されるべきではない。最高裁の違憲審査権も軽視されており、選挙は無効と断ぜざるを得ない」と述べ、格差を是正しなかった国会を厳しく指弾した。
広島1区の当選者は岸田文雄外相(自民)、2区は平口洋議員(同)。無効判決が確定すると2人は失職、選挙はやり直される。有権者数が最少の高知3区との1票の格差は広島1区が1.54倍、2区は1.92倍だった。
判決はまず、11年3月23日の最高裁判決に言及した。最高裁は、最大2.30倍だった09年衆院選を「違憲状態」とし、各都道府県に1議席ずつを配分し残りを人口比で割り振る「1人別枠方式」の廃止を求めていた。
判決は「最高裁判決で、国会の広範な裁量権は、投票価値の平等に反する状態を是正する高度の必要性から制約を受けることになった」と指摘した。
国会は昨年11月の解散当日に小選挙区の「0増5減」の緊急是正法を成立させた。しかし、最高裁判決から約1年9カ月後の昨年の衆院選には区割り作業が間に合わず、最大格差は2.43倍に拡大、格差2倍以上の選挙区は45から72に増えた。
判決は、格差の是正に必要な期間は1年間との基準を提示。「東日本大震災の対応を最大限考慮しても、最高裁判決から1年半が経過した昨年9月23日までに是正すべきだった」として、国会が合理的期間に格差を正さなかったと判断した。
そのうえで、「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は悪化の一途をたどっている」と指摘、弊害が大きい場合に請求を棄却できる「事情判決」は相当ではなく、選挙無効と結論付けた。