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日本の平均寿命の推移をグラフ化してみる(2010年分・完全生命表反映版)

2012/06/11

日本の平均寿命の推移をグラフ化してみる(2010年分・完全生命表反映版)

2012/06/11 06:50

高齢者厚生労働省は2012年5月31日、第21回目となる完全生命表の概要を発表した。それによると2010年における平均寿命は男性が79.55歳、女性が86.30歳となった(【該当リリース】)。以前【日本の平均寿命の推移をグラフ化してみる(2010年分反映版)】【日本の平均寿命の推移をグラフ化してみる(1899年以降・2010年分反映版)】で描写したグラフは簡易生命表を元にしたものということもあり、今回は完全生命表の値を反映させた上で、両記事を一つの記事にまとめ上げ、整理することにした。

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「生命表」とは、ある期間における死亡状況が今後変化しないと仮定したときに、「各年齢の者が1年以内に死亡する確率」や「平均してあと何年生きられるか」という期待値などを、死亡率や平均余命などの指標(生命関数)によって表したもの。詳しくは後述するが、世間一般に言われている「平均寿命」とは、その歳に生まれた人が(社会情勢などの変化が無い限り)何歳まで生きられるかを示したものである。

また「簡易生命表」と「完全生命表」の違いだが、

・簡易生命表
 毎年作成。10月1日の推計人口や、人口動態統計の月報による概数値で算出。

・完全生命表
 5年毎に作成。国勢調査の結果や、人口動態統計の確定値で算出。

となっている。簡易生命表は概算値、完全生命表は確定値・決定版という位置づけ。今回2010年分について「完全生命表」が発表されたため、データ・グラフの精度を上げる観点で、描き直しを行っている次第である。

さて早速、平均寿命のグラフを3つ続けて掲載する。まずは直近の20年分、1990~2010年、そして戦後に限定した1947年~2010年、最後に公開データを集約した1891~2010年版である。基本的に2010年の値(簡易生命表では男性79.64歳・女性86.39歳に対し、完全生命表では男性79.55歳・女性86.30歳となり、それぞれ0.09歳ずつ低く修正されている)を調整しただけなので、大まかな形状は先の各記事で展開したものと変わらない。

↑ 平均寿命推移(1990~2010年、日本)
↑ 平均寿命推移(1990~2010年、日本)

↑ 平均寿命推移(1947~2010年、日本)
↑ 平均寿命推移(1947~2010年、日本)

↑ 平均寿命推移(1891~2010年、日本)(戦前は完全生命表のみ、不連続)
↑ 平均寿命推移(1891~2010年、日本)(戦前は完全生命表のみ、不連続)

まずは(掲載と順番は逆になるが、)戦前からの網羅版。このグラフでは分かりやすいように、節目となる部分に吹き出しを加えている。一番古いデータの1891年~1898年では男性42.8歳・女性44.3歳。以後少しずつ近代化と共に上昇を見せるが、1921年~1925年には大幅に減少してしまう。これは【乳児・新生児の死亡率変移をグラフ化してみる(1899年以降版)】でも示した通り、1918年から世界的に大流行したスペイン風邪、そして1923年に発生した関東大震災によるところが大きい。そして戦前は、緑の薄い破線で記した「50歳ライン」を超すことはかなわず、戦後の1947年調査で初めて男女とも平均寿命が50歳を超えることになった。

そして戦後に限ったグラフや、直近20年限定のグラフ。戦後しばらくにおいては社会情勢・健康・食料事情の安定化、さらには「戦死」という要素が無くなったこともあり、大きな上昇傾向が見られる。しかし 1950年代後半あたりからは一様に緩やかなカーブで上昇しているのが分かる。1970年代まではやや大きな上昇の年もあったが、それ以降はほとんど変わりないペースで微増が続いている。

今後の動向だが、単に数字上での傾向を見る限りでは「年+0.数%の増加」「5年前後おきに-0.数%の減少」という流れが続いている。社会的情勢に変化が無ければ、男性の平均寿命80歳超、女性90歳超もそう遠い未来の話ではないかもしれない(女性はやや無理があるが)。



上記でも軽く触れているが誤解があるようなので、「平均寿命」という言葉の定義について解説を加えておく。「平均寿命」とは「各年における0歳児の平均余命」を指す。例えば2010年の女性の平均寿命は86.30歳なので、「2010年に生まれた女性は、社会情勢などで大きな変化が無い限り、平均的に86.30歳まで生きられる」ことを意味する。「2010年時点で亡くなった女性の平均年齢が86.30歳」では無い。「あなたはもう平均寿命を超えているので、普通ならもう亡くなっていてもおかしくは無い」という表現は誤り(その上、礼儀の上でも失礼に違いない)。

サンプルとして2010年時点の、高齢者における平均余命をグラフ化しておく。

↑ 平均余命(2010年完全生命表から)
↑ 平均余命(2010年完全生命表から)

2010年の時点で80歳の女性は、今後さらに平均で11年あまり生き続けるという試算になる。くれぐれもお間違え無きように。


■関連記事:
【乳児・新生児の死亡率変移をグラフ化してみる(1899年以降版)】
【江戸時代の平均寿命とエネルギー消費量】


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これらの書籍が参考になります

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