後をたたない就職差別

 10月27日付けの東京新聞の「キョンナムのこんにちはこころの旅人さん」にこんなことが載っていた。

 『(略)情報誌で「荷物の仕分け作業・即決」の求人募集を見たA君(23)は記載されていたとおり、写真を張った履歴書に貯金通帳、保険証などをもって面接会場に向かった。40代くらいの女性の担当者に履歴書を渡したとたん、「韓国人(外国人)はダメ!」と、すぐさま突っ返されたという。そのときのA君の気持ちを思うと胸がふさぐ。普段は親にこぼしたりしない息子さんが「つらいよ」とポツリとこぼしたそうだ。これまでも10件近いバイトを断られ、イベント会社では3日間働いたあと、「韓国籍では保険が作れないから(そんなことはない)、明日から来ないで」と言われたことあったという。
 (中略)荷物の宅配便で知られる最大手のY運輸の名刺をさし出しながら、2人の男性が交互に説明をしてくれる。3年半ほど前、働いていた一人の韓国人留学生が問題を起こしたからだとの弁に、その内容を尋ねた。その留学生は“被害妄想”が強くて、自分だけの仕事の量が多いという理由で辞めたという。そのことが“問題”なら、日本人の中には同じ問題で辞めた人は今までにいなかったんですか、という私の質問には、2人とも口ごもってしまう。「Y運輸は、外国人差別をしてない会社です」と続けて言葉をつなぐ、その担当者の堂々とした声が虚しく響く。口では立派なことはいくらでも言える。建て前ではなく、目の前(足の下)の現実が問題なのに。実際、その営業所にはこの3年半、一人も外国籍の人は働いていない。(略)』

 労基法を含めた労働3法は、その内容において「国籍」が明記されており、日本の法制度の中で明確に国籍による差別を禁止している。しかし、現実はその量の減少は見受けられても基本構造はかわらない。就職差別は横行されている。1995年の国勢調査からの労働力人口に占める完全失業率の割合によると、日本人の失業率と外国人の失業率は明らかな格差が存在している。日本人:外国人=4.3%:6.5%(全国統計 県内は日本人:外国人:うち在日コリアン=4.5%:6.1%:8.6%)で、うち在日コリアンになると8.5%に飛び上がる。上記の新聞記事の様に、就職差別の実例は一向に後を絶つ様相がなく持ち込まれる。

 大手Sグループ内の企業と現在アルバイト差別の件で話し合いを続けているが、ここは同系列内企業が何十年前に差別をおこし、反省から系列会社で積極採用のチラシまで作成したが、今回アルバイト採用で国籍を理由に差別をしてしまった。マニュアルも何十年前のもので、なんら教訓化できてなく、けしからんと言ってしまえば簡単だが、根はもっと深い。

 差別をした店長などの話しを聞くと、過去において差別を起こした人たちと同質な外国人感がある。
1 外国人をあまりを知らない。
2 一部の社会の価値観、一部の経験等からステレオタイプ化された負の外国人のイメージがある。(ex外国人の採用はめんどくさい。)
3 (意識として)外国人だからだめでなく、他者(日本人)を優先する。などである。

 厄介である。まぎれもなくステレオタイプ化された外国人感がありながらも、差別をしている感覚がないのだから。特にこの件で店長は当初、在日を落としたのではなく、他の人を採った感が強かった。企業は、近年、効力はともかく、行政のある程度の啓発を受けていることもあり、差別はしてはいけないという意識は存在する。しかし、何が差別なのかという学習のない「人権研修」は差別をなくすには無力である。差別をする企業に限って、行っている差別行為を「ご遠慮」というオブラートにつつみこんだり、企業組織の運営のノウハウとして、自らもわからないようにしているのだ。特にサービス接待の領域が多い企業ほど、「お客様本意」「思いやり」と訳の分からない「道徳観」にすり替え、企業で起こりうる差別行為を抽象的にし、結果的に起こりやすくしている。

 一方、不況の中、企業・行政はリストラの中、ますます研修は行われない方向になっている。そしてこの状況を放置しているのだ。だから、就職差別はなくならない。こうなると一企業だけの問題でなく、社会構造にメスを入れる必要がある。

(PS)年末、ヤマト運輸新東京主管支店管理担当プロジェクトマネージャー塚本氏に連絡してみた。このような相談があり、事情を聞きたいと言ったが、塚本氏は今回のケースは「当社の採用規定に基づいたものではない」「差別とは考えない」とし、「話し合うつもりはない」と高飛車であった。こんなヤマト運輸をほっておいていいのだろうか。
 是非、抗議してほしい。
  当該支店 新東京主管支店 東京都品川区八潮3-2-35 
       Tel 03-3799-6808 Fax 03-3799-6139
       支店長 三上忠夫
       管理担当プロジェクトマネージャー 塚本良輔
  本  社 東京都中央区銀座2-16-10
       社長 有冨慶二 (敬称略)

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