無年金問題に取り組む「全国連絡会」報告
11月4日〜5日で無年金問題に取り組む「全国連絡会」の会議が開催された。その後の5日の午後には国会で議員との懇談、厚生労働省との話しあいが行われた。
以下、重要点の要旨だけ報告する。
●全国連絡会会議
(全国各地の救済制度)
1 国籍条項により無年金になっている在日外国人に対して、国に先駆けて、各自治体が独自で救済制度を創設している。最近では約1300の自治体で実施されているらしい。しかしながら、国民年金制度の老齢福祉年金約34000円、老齢基礎年金約65000円、障害基礎年金約83000円(1級)に比べればかなりの格差がある。
2 高齢者においては、5000円〜10000が多いが、取り組みの成果により、20000円が最高であった。昨今では鳥取の25000円が最高支給額である。
3 障害者では、低額のところで5000円から最高の神戸市の56000円と各自治体でこれもかなりの格差がある。平均して3万円というところであろうか。
4 都道府県で各市町村に補助システムをつくっているのは、北海道、神奈川、鳥取、島根、滋賀、大阪、兵庫の7府県である。
(京都地裁裁判)
2000年3月15日に在日外国人障害者7人が障害年金不支給の取り消しと損害賠償請求で提訴している。この問題に関する政府の主張趣旨は、国民年金制度における支給対象者の決定および在留外国人の処遇について、広範な立法裁量が認められており、なんら問題ないというものである。この間、口頭弁論では準備書面のやりとりが行われており、年明けから証人調べになるらしい。
(議員懇談会および厚生労働省との話しあい)
1 議員懇談会は社民党の中川議員、民主党石毛議員が参加してくれた。そのほか何人かの議員秘書の方が参加していたらしいがよくわからなかった。
2 当事者および支援者が無年金問題の課題と早急な解決の思い語った。
3 参加した議員から現在の国会の議員のこの問題に関する認識を語ってくれた。何人かの議員が興味を持っているが、全体的には深く認識をしていないとのこと。党としてどう受け止めるか。与党である政党にいかに働き掛けていくのか。特に福祉の党である公明党に働きかけることが重要である。とのこと。
4 厚生労働省との話しあいは90年から行っているが、なんの進展も内といっていいが、今回もその感を否めない。今回、年金局年金課課長補佐度山氏ほか1名が参加したが、対応は従来通りであった。「82年の国籍要件の撤廃は対象者の拡大であり、経過措置は行わない。この間、市町村など関係機関から要望もいただいており、94年には『無年金障害者の所得保障については福祉的措置による対応も含めて速やかに考える』という国会の付帯決議もされており、この間、検討をしているが、答えが見つかっていない。引き続き検討したい。」ということで、こちらから、国際人権規約違反、小笠原、沖縄、中国帰国者に対する経過措置を行って、なぜ在日にはしないのかと、追及しても「のれんになんとか」で前進がない。しかし、今回総連の関連団体が参加してくれて、初めて高齢者の当事者が参加してくれた。連団体が参加してくれて、初めて高齢者の当事者が参加してくれた。
(今後)
今回の行動を行って、以下のことが確認できた。
1 この何年か厚生労働省とは交渉を行っていなかったが、定例的に国会を含めた働きかけをすることの重要性。
2 その報告も含めたニュースをだし、広く社会に訴え行くこと。
3 京都地裁裁判の支援。
2001年11月5日
厚生労動大臣
坂口 力 様
年金制度の国籍条項を完全撤廃させる全国連絡会
代 表 李 幸 宏
国民年金制度における在日外国人差別の抜本的是正と平等支給を求める要望書
日頃より、福祉行政の向上及び年金制度の公平・公正な構築に向けてご尽力されていることと存じます。
国民年金制度の創設時、国籍要件が設けられ、在日外国人は将来無年金になることが当然分かっていながら制度加入すら認められませんでした。そして1982年1月1日、日本政府が国連の難民条約への加入の際、国民年金制度における国籍条項が撤廃されました。しかし、多くの国会内外での反対にも関わらず経過措置は取られず、またしても在日外国人に無年金者が生じ、以後20年近くを経た現在においても何ら改善されず、放置されたままです。現在39歳以上の在日外国人「障害者」は無年金状態にあり、また在日外国人高齢者は、1986年時の年金制度改正においても当時60歳を超えていた高齢者は年金資格期間の算入が認められず、無年金を強いられてきたのです。
私たち「年金制度の国籍条項を完全撤廃させる全国連絡会」は1991年の結成以降、幾度となく厚生省(現・厚生労働省)に対して、国民年金制度における明らかな差別の是正、すなわち、対象の在日外国人無年金障害者・高齢者に対して日本国民と同等の障害基礎年金、老齢福祉年金の支給、あるいはそれに見合う措置を求めてきました。旧厚生省の担当者は、1982年時何故経過措置をとらなかった事について、「制度の創設ではなく、制度の拡大だから経過措置はとらない」と、当事者の過酷な差別の現実に対して、そのような制度論を繰り返し主張し続けるだけです。そもそも、在日外国人にとって1982年時点が明らかに制度創設以外の何物でもない、という実態を認めるべきです。
就労が困難な障害者にとって年金は生活する上で最低限必要な事は自明なことです。また、在日外国人高齢者とは、その多くが在日韓国・朝鮮人、中国人(台湾人)一世の人達であり、日本の植民地支配の結果、日本に渡日を余儀なくされた最も辛苦を背負った人たちです。更にこうした在日外国人高齢者は、かつて日本国籍者であり、1952年のサンフランシスコ講和条約発効時に一方的に国籍を剥奪され、一切の権利を剥奪された人達なのです。営々と納税義務を強いられながら、年金を受ける権利を保障されず、日々命の危険にさらされながら、在日の高齢者は無年金のまま捨て置かれています。時代の進展と共に、残念ながら在日外国人高齢者・在日一世の人達は亡くなっており、もう時間はありません。一刻も早い解決が求められます。
現在600に及ぶ地方自治体が独自で「特別給付金制度」を創設し、そして毎年数多くの地方自治体から、在日外国人の制度的無年金者に対する救済・改善措置の要望が国・厚生労働省に出されているのです。地方自治体が本来国の責任であるこの問題について「痛み」をもって尽力しているにもかかわらず、いつまでも国が放置することは許されません。
更に国会の場でも、1994年11月国民年金法一部改正の際の国会において、「無年金である障害者の所得保障については、福祉的措置による対応を含めて検討すること」と附帯決議があげられています。その後7年を経過しようとする現在においても何ら進展は見られません。
言うまでもなく、年金制度から取り残されてきた在日外国人は、納税の義務を営々と負ってきた人達です。国際的にも定住外国人の社会保障は、本国ではなく居住国の責任であるとの立場はほとんど確定しているというべきです。少なくとも、アメリカ、フランス等、ヨーロッパ主要国における定住外国人に対する社会保障は、国民と差別なく給付が行われるというのが大勢なのです。
このように国際的にも日本のあり方は問われるものであり、今年8月、ジュネーブで開かれた国連の「経済的、社会的、文化的権利委員会」(社会権規約委員会)においても、日本政府の在日韓国・朝鮮人など定住外国人処遇の差別性が指摘されました。
更に付言するなら、さる5月11日ハンセン病元患者の方々による国家賠償請求訴訟熊本地方裁判所の判決において、国会・厚生省の立法不作為が認められました。「政府声明」が出されましたが、国の政策の過ちによる多大な人権侵害という歴史的事実と「遅くとも1960年以降らい予防法は改正されるべきであった」という事は国も認めています。そして、高齢を迎えられたハンセン病元患者の方々の命を削りながらの裁判提訴を待たずに、本来国自らが是正すべきであったと言えるでしょう。今般、厚生労働省、政府がハンセン病政策に対して「謝罪・反省」と真摯に言うならば、他の諸問題、とりわけこの在日外国人無年金問題における立法不作為について早急に自ら是正すべきです。
また、6月1日「在外被爆者への援護法適用」を認める大阪地裁判決が下されました。国の控訴について断固抗議するものですが、しかし国は今訴訟で「社会保障上、その国の居住者への福祉は、その国の政府が実施すべき」と、属地主義を執拗に主張されています。であるなら、まさにこの無年金問題における国の主張と全く矛盾する二枚舌としか言えません。根本的に是正し、実情に応じた措置を求めます。
以上縷々述べたように、国民年金制度の差別状態、当事者への生存権の侵害はもはや明らかであり、厚生労働省として無年金者救済の英断を強く求めるものです。
以下、質問ならびに要望いたします。
一 元、または現在まで日本国籍でないために無年金となっている在日外国人障害者・高齢者等に対して、障害基礎年金ならびに老齢福祉年金等に見合う措置を講じること。
二 先にも述べた、1994年国民年金法改正時に採択された附帯決議第二項について、1998年9月28日の私たちとの話し合いの場で「継続して検討したい」と述べられましたが、具体的にいつから措置されるのか。
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