阿部川崎市長の外国人は準会員発言!


 市長当選後、月刊正論のインタビューで「外国人は準会員」発言をし物議を醸し出し た阿部市長が、2月の第15回「地方新時代」市町村シンポジュウム全体会で同様な発 言をしました。

 2002年2月6日、第15回「地方新時代」市町村シンポジュウム全体会における阿部市長の外国人市民に係る発言

<市民参加についての議論の中で>

司会)
「もう一つ、参加の問題を考えるときはですね、誰が参加するのか、特に最近は外国人のですね、国籍がない方でも住民で住んでらっしゃる、そういう人をどう扱うのかという問題がでていると思うんですけども、川崎はだいぶ進んで全国に先駆けていろいろなことをやっていますが、つまり住民とは何かというこういうカテゴリーに関わる話しですけども、その辺は阿部さんはどんなお考えでしょうか」

阿部市長)
「あの、あの、基本的にね、外国人、地方自治制度では、市民、住民というのは、国籍は関係ないわけですからね、だから、まちづくりなんかについては参加してもらってやっている。川崎市では外国人の市民会議をつくってね、そこでの意見を参考にして、それ政策に取り入れるということをやっているんですが、しかし、それは議会じゃありませんから、正式な決定権限があるわけじゃなくて、あくまでも参考意見ということになるわけですよね。
 あとね、参政権の問題は非常に難しいと思うんですよ。私は、やっぱり今の地方自治体が、国の仕事、国全体、国というのは、極端にいうと戦争をするための単位ですからね、だから国のね、国の権限を地方自治体が行使している間はね、やっぱり国の立場を尊重しなければいけないと思っているんですよ。でね、全く分権、地方自治が自分たちの地域を自分たちで決定できるような状態になっていればね、なっていれば、外国人であろうと、日本人であろうと、関係なく同じく参政権があっていいと思うんですが。自分たちがそれでいいといえばね。だから、地方自治体ごとに分権が進めば地方自治体ごとに判断できるようにすればいいんであって、ただ会員と準会員は違うということ、これはやっぱりきちんと区別しておかないといけないと思っています。正会員と準会員は違うということですよ。どんな会合でも。」

司会)
「あの、多治見の方はやっぱりあれですか、その参政権の問題は別にしてですね。住民をどう考えてるか、外国人を、の方を、どういうふうに自治体運営、経営に巻き込んでいくかという議論になっていますか。」

多治見市長)
「あまり議論としてはないですけれども、職員の国籍条項はもうはずしてますし、まあ小さな町ですので、例えばいろんな住民、市民委員会に、そういう、外国人の人が出てきたとしてもぜんぜん拒む、あれにはなってませんし、こちらから呼びかけたということはないですけど、そういうことは全く自由にやっています。」



かながわみんとうれん抗議声明(ニュース2月号掲載)


 阿部市長の外国人市民への「準会員」発言等とその認識について抗議する。
 先般、「正論」において、阿部川崎市長はそのインタビューの中で「〜日本国民と、国籍を持たない外国人とでは、その権利義務において区別があるのはむしろ当然のことなんです。」「会員と準会員は違うということです。」という発言をした。この発言は、その後市議会でも問題ではないかというと質されたが、市長は「私人としての意見」と、その追及をはぐらかせた。

 しかし、2月6日第15回「地方新時代」市町村シンポジュウムで再度同趣旨の発言をした。勿論、このシンポジュウムは市長としてのシンポジュウムへの登壇であり、今回ばかりは、「私人だから」という理屈は通用しない。

 そればかりか、市長は、外国人市民施策の柱として脚光を浴び、設立当初に「最大限尊重する」とした外国人市民代表者会議についても、「正式な決定権限があるわけじゃなくて、あくまでも参考意見」と、これまでの方針を著しくねじ曲げようとしている。川崎市の市民、住民として、住んでいる在日韓国・朝鮮人をはじめとする外国人市民に対して阿部市長はどのような見識をお持ちなのか。

 今回の発言で、阿部市長のこの思想は確信的なものだということが露呈した。地方公共団体の首長として、市民本位をかかげ、市政を司る人間が、シンポジュウムという場で、ことのほか外国人市民を「準会員」とし、区別を強調することは、市内在住の外国人市民への排斥思想および行為といわざるを得ません。

 私たちは、昨今起こる差別事件(アルバイト差別、入居差別)もこのような思想の故と考える。その意味においても市長のこの発言は慚愧に堪えず、看過することはできない。

 私たちは市長のこの認識とその発言に対して抗議する。そして今後の川崎市政の外国人市民施策を厳しくチェックするなど、様々な取り組みを行っていくことをここに宣言する。

2002年2月 かながわみんとうれん一同

阿部市長の外国人市民への『準会員』発言についての申し入れ


2002年5月9日


川崎市長 阿部孝夫 様

阿部市長の外国人市民への『準会員』発言ならびに
平和・人権施策及び外国人市民施策のさらなる推進についての申し入れ


 時下、ますます御清栄のこととお喜び申し上げます。
 私たちは、川崎市内において、人権・共生をキーワードにネットワークを持つ市民団体、宗教団体、労組、政党などの団体です。
川崎市においては昨年市長が交代し、今後の市政について、多くの市民が注目しています。

 いうまでもなく川崎には、戦前から、日本の植民地政策によって、とりわけ旧植民地であった朝鮮半島から多くの人たちが定住するようになりました。戦後もこれらの人たちが、川崎の復興および街づくりを日本人と共に担ってきました。そして現在では、川崎市には111の国籍を優に越える外国人市民が生活し、日本人と共に市民として生活しています。このような中で、川崎市は、外国人も日本人と同じ住民としてとらえ、法の不備や不平等を越え、今日の外国人市民施策を推進してきたと私たちは認識しています。私たちは、市長が代わってもこの外国人市民施策が変わりなく推進されていくことを望んでいます。

 4月8日、川崎市外国人市民代表者会議の第1・2期の委員長を務められた李仁夏さんと第3期の委員長を務められた中村ノーマンさんが市長と面会したと伺いました。この時、市長は、日本社会の閉鎖性や在日コリアンがかかえる歴史的背景に理解を示されたと伺っています。そして、タウンミーティング等での外国人市民との対話や多文化共生のまちづくりについても意欲を示され、外国人市民代表者会議の堅持、市職員の任用制限に関わる国籍条項の見直し、外国人市民施策に関わる総合的な計画の推進などについても前向きな認識を述べられたと伺っています。

 昨年度末の議会においても、外国人市民代表者会議については、「定住外国人の方々はここ川崎の地域社会を構成するかけがえのない一員として、日本国籍を有する市民と一緒に、ともにまちづくりを担い、ともに生きていこうという趣旨のもとに創設されたものであり、この考え方は、今日のグローバリゼーションの時代にあって、きわめて大切な視点であり、今後ともこうした視点をふまえた地域社会づくりに努めていきたいと考えております」と、その意義を答弁されていました。
 この市長の前向きな姿勢を私たちは大変評価しています。
 しかし一方で、私たちは、外国人市民に関わる市長の別な考えを聞いています。

 阿部市長の月刊「正論」2002年1月号のインタビューならびに2月6日の「地方新時代市町村シンポジウム」でのパネルディスカッション(以下、「市町村シンポ」)における発言で、「近代における国家というのは戦争をするときの単位なんですね」「日本国民と、国籍を持たない外国人とでは、その権利義務において区別があるのはむしろ当然のことなんです」「分かりやすくいえば、会員と準会員は違うということです」と述べています。市町村シンポでは、「地方自治体も国の一部」であり、外国人市民代表者会議についても、条例では市長は報告や意見を尊重するものとされているにも関わらず、「あくまでも参考意見」だと述べられていました。そして、昨年度末の3月議会においても「地方自治における外国籍者の権利につきましては、市民として受益する権利と、参政権のように公の支配に間接的にかかわる権利があると考えていますが、後者の権利につきましては、団体等における正会員ともいうべき、日本国籍者に考えられるべきではないか」と、さらに「外国人は準会員」という発言を補足する主張を繰り返しました。 聞くところによると、前述した4月8日の外国人市民代表者会議の元・前委員長との面会で、「国家は戦争の単位」「準会員」の発言については、「わかりやすく私見を述べた」までと言われ、国家の統治機能としての地方分権論、国家主権と人権については、 両者で理解するには不充分だったと伺っています。

 私たちは、これまで市が推進してきた人権施策、特に外国人市民施策について、今後さらに推進されることを望んでいます。その意味において、市長が進められようとしている「市民本位の市政」、特に「住民投票条例」や「区民会議」に外国人市民が参画できると確信していましたが、この間の市長の発言に不安を抱いています。 市長の進めようとしている「市民本位の市政」の「市民」に、「住民投票条例」の「住民」に、「区民会議」の「区民」に外国人市民が入っているのでしょうか。市長の言われる「地方自治は国籍に関係なく同じ住民」、「多文化共生社会を推進」は本当に行われていくと理解してよろしいのでしょうか。それとも、市長の「準会員」発言の背景には、日本人市民と外国人市民の扱いの違いを明確にするという意図が存在するのでしょうか。
 私たちは市長のこのような矛盾した発言の本意が理解できません。またこのことに多くの外国人市民および日本人市民が不安を抱いています。

 現在、川崎市においても、外国人市民に対する様々な差別事件が報告されています。行政窓口での外国人市民への対応の悪さも指摘されています。外国人市民代表者会議の提言を受けて住宅基本条例を制定し、外国人、障害者、高齢者などのマイノリティーの居住支援制度を進めるようになりましたが、最近、具体的な入居差別事件が明るみになりました。
 また、外国人教育基本方針、子どもの権利条例を制定し、外国人児童生徒の教育を推進していますが、未だ民族教育権が確立しているとは言い難く、市内にある民族学校は各種学校扱いされていることから十分な行政保障がなされていません。在日コリアン多住地区の池上町では土地問題も放置されたままであり、未だ戦後の問題が継続しています。川崎市の外国人市民施策は全国的には先進的ではありますが、実態から見れば外国人市民は未だ生きづらい環境におかれているのです。
 一方、同和問題をはじめとする人権施策においてもやるべき課題は山積しております。国会での有事法制の議論が高まる中、川崎市のこれまでの平和施策も堅持していかなければなりません。私たちは、平和を追求することと、人権を保障することは、まさに表裏一体のものであると考えます。

 私たちは市長のこの間の公の場での発言を大変不安に受け止めています。私たちは、二度とこのような、私たちに不安を与えるような発言をされないことを要望します。そして私たちが感じざるを得ない不安を払拭する意味においても、これまでの平和・人権施策ならびに外国人市民施策をさらに推進されることを強く要望します。特に、外国人市民代表会議の機能拡充、市職員の182職務の任用制限の見直しと消防職採用の開放、そして外国人市民施策の総合的指針の作成、さらに市長が推し進めている住民投票条例と区民会議の参加資格の保障など、外国人市民施策のさらなる推進を要望します。
 つきましては、書面にて、今後の人権施策、特に外国人市民施策について、具体的課題に即してご回答いただけるよう要望いたします。


在日大韓基督教会川崎教会
金性済

日本基督教団 川崎戸手教会
孫裕久

戸手地域活動センター
孫裕久

日本基督教団元住吉教会
三宅 宣幸

日本基督教団 神奈川教区 社会委員会
内田 保彦

日本基督教団 神奈川教区 社会委員会
多民族共生をめざす小委員会
君島洋三郎

部落解放同盟神奈川県連合会川崎支部
土谷 満男

部落解放川崎地区共闘会議
門倉 慎児

かながわみんとうれん(民族差別と闘う神奈川連絡協議会)
金秀一
大石 文雄

(社)神奈川人権センター
星野 昌子

民族差別撤廃・外登法の改正をめざす神奈川県連絡会議
和田 秀樹

(社)川崎地方自治研究センター
森山 定雄

日本婦人会議川崎市本部
仲井 勝江

市民連合かわさき
海老塚美子

神奈川ネットワーク運動川崎市議団
渡辺あつ子

日本労働組合総連合会神奈川県連合会川崎地域連合
堀田 靖二

神奈川県高等学校教職員組合
執行委員長 竹田 邦明

全水道川崎水道労働組合
執行委員長 臼田 秀司

川崎交通労働組合
執行委員長 佐藤 教雄

川崎市教職員組合
執行委員長 吉田 正和

自治労川崎市職員労働組合
中央執行委員長 和田 秀樹


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