ニュース43号 2001/4発行

  ■「外国籍県民の政治を考えるかながわ県民集会」報告

  ■第5回民闘連実践交流会報告

  ■「地方参政権に関する外国籍住民公聴会2001」報告

  ■「外国人は信用できないのか?」 デパートMカード加入の外登証の提示要求

  ■人種差別撤廃委員会速報

  ■石さん・陳さん裁判、鄭商根さん裁判、姜富中さん裁判、最高裁敗訴判決出る

  ■1500円アップ!は10月 川崎市外国人高齢者、障害者福祉手当増額

  ■もっとお粗末! 市の外国人市民施策?

  ■アリラン祭に若者が集う!

  ■国籍取得法案がやってくる?!


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■「外国籍県民の政治を考えるかながわ県民集会」報告

 3月2日「外国籍住民の地方参政権共同キャンペーン」の一環として、「外国籍県民の政治参加を考えるかながわ県民集会」が持たれました。講師として、元逗子市長の富野暉一朗氏(龍谷大学教授)をお招きしました。かながわみんとうれんの金秀一氏が基調報告をし、その後、富野氏に講演していただきました。1時間あまりの講演でしたが、外国籍住民の地方参政権問題だけでなく、地方自治・分権の有り方を追求する、大きな視点にたった内容でした。以下がその講演内容の要約です。

・現在と未来の地方分権のあり方としては、
 1 公益としては地域と国益に別れている。例えば沖縄米軍基地問題、原発問題、住民投票問題、外国籍住民の地方参政権問題、公務員の任用問題など。
 2 これからは地域が自立していかなければならない。地域の力で生きていくことが重要。
 3 行政と生活を持っている住民とのパートナーシップが大切となる。総じて、国との関係でコントロールされてはならない。

・2001年の国連総会で、世界地方自治憲章が提案される予定。地方自治をグローバルスタンダード化していく流れで、日本も承認せざるを得ないだろう。地方自治を世界的に認める流れは、地域の中での連帯感が重要になってくる。連体の原理=グローカライゼーションが時代のすう勢になりつつある。将来、国家としては、主権国家はなくなり、機能国家としての仕組みが残るであろう。

・逗子市長就任1年後に、指紋押捺問題に出会う。当時、神奈川県下の市町村は拒否者をカバーする動きにあった。川崎市の伊藤元市長に会い、話し合った。伊藤元市長は「この問題は人権の問題であり、歴史認識の問題である。国の機関委任事務であっても、地方自治体が拒否者を守るベきである」と語った。逗子市にも拒否者がおり、市長として最後まで守ることを拒否者に宣言する。この時、機関委任事務の欠陥を認識し、地方自治体が反論すれば、機能しないものであることが分かった。ある側面では、自治体の反論が、国の制度を大きく変えたと思っている。

・逗子市は自治体政府として機能するように、都市憲章(地方自治基本条例)を創案していた。(素案のまま残る)国民でも住民でもない、市民権の概念を導入したかった。市民としての外国籍住民、また、市の資源としての外国籍住民として位置付けようとした。
 1 公務員の国籍条項問題は、人材育成の多様化として撤廃に着手した。イデオロギーではなく、行政の中で活躍できる人材の幅を広げようとしたからだ。地方自治法では、執行機関としての市長、補助機関としての行政職員を定めている。外国籍の職員は助役までなれると判断した。
 2 外国籍住民に、市政に対しての意見を求めた。
 3 池子弾薬庫は、強制連行された朝鮮人で作られた。歴史認識を市民と共に認識することが大切であると思い、実態調査に予算をつけて行った。

・参政権問題でも、同じことを感じる。
 1 「当然の法理」は外国人排除に使われているが、異論が出てきたらこの論理は消滅する。
 2 地方自治法を素直に読んでほしい。行政執行はチームでやるので、外国人の公務員がいても何の支障もない。
 3 公務員とは何であるのかのという、議論に欠けている。公務員の宣誓は、日本国憲法を遵守すること、公のために働くということである。選挙権は、社会の実態に即して変えるべき。人権としての選挙、地域独自の選挙があっていいのではないか。自治体での条例として成立させることが良いと思う。そして、具体策を提示していくことが、地域での議論を活発化させるのではないかと思っている。

 講演後、3人の外国籍住民の方々に発言していただきました。前川崎市外国人市民代表者会議のフロランス・デウボーさん、金煕淑(キム・ヒスク)さん、民団青年会神奈川地方本部の 寿隆(チョウ・スユン)さんです。デウボーさんと金さんは「一般永住者にも地方参政権は認められるべきで、日本人がもっとこの問題を考えて、声を上げてほしい」と語りました。また、 さんは「川崎の大師高校で非常勤講師をして4年目になるが、在日や日本人に自分の生きている姿を見てもらいたい。また、自分の住んでいる地域が良くなることを望んでいるのは、在日だって同じこと。やはり、地方参政権は必要である」と語りました。総じて、様々な問題を提起され、内容の濃い、感慨深い集会となりました。(ち)

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■第5回民闘連実践交流会報告

 第5回民闘連実践交流集会が2月24〜25日、滋賀県の大津で開かれた。今回は近江渡来人倶楽部など地元団体の協力を得て、景観抜群の琵琶湖湖畔のピアザ淡海で二日間開催された。

 一日目は「21世紀の日本と在日韓国・朝鮮人―移民受け入れと「在日」問題のゆくえ」と題する柏崎千佳子さん(上智大学講師)の講演と梁泰昊さんの追悼集会。二日目は第一分科会「在日韓国・朝鮮人の制度的地位と参政権」第二「教育・地域子供会・保護者交流」第三「在日コリアン高齢者福祉」と三つの分科会に別れて話し合われた。柏崎さんの講演は坂中論文(2000)の提起(これからの日本は移民を受け入れない縮小国家になるか、移民を受け入れる多民族国家になるか)を受けて「移民国家日本の条件」について検討、そして移民受け入れの時の在日問題のゆくえを追った。その中で現在、参政権問題論議の中で浮上してきた「国籍取得」にもふれ、日本国籍を取らずに永住外国人の権利獲得が望ましいが、帰化要件緩和法案に反対することは難しい。法案が通ったとき日本籍の取得と二重国籍の対案や民族的アイデンティティの保障など、永住者としての権利をどう保障していくのかが求められる。また「国籍こそ民族の砦」といった考え方から国民国家を相対化していくことも必要と話された。

 翌日の第一分科会では水野精之さん(参政権連絡会)の情勢報告と張學錬さん(弁護士)の話を受け意見が交わされた。張さんの話は外国人問題を扱っている現場の弁護士の話として、「従来在日はマイナスイメージされてきたが、制度上の差別がなくなるに従い求心力を失ってきた。在日の民族組織でもニューカマーを入れるかどうかが議論されている。実態としての日本との繋がりで言えば国政参政権がでてきてもおかしくない。国籍=国家主権絶対という概念も変わってきている。グローバリズムという経済の現実もあるが、植民地出身者だからということでなく、地域に住んでいるのだから与えるという方向に変わってきている。また在日も相対化され、何をアイデンティティとするかが問われている。在日は日本における在日外国人の先輩としての役割がある」と語った。

 討論では「民闘連として具体的なことを提示すべきではないのか」「分断国家の国籍の意味も考える必要がある」「国籍の問題はどこかで判断しなければならない」「民族を明らかにする社会、自分が何者であるかを明らかにできる社会が課題だ」「参政権をつぶすために出された国籍取得ではなく、運動としては参政権獲得に力をいれるべきだ」などの意見が出された。
 最後に全体集会では各分科会の報告がなされ、民闘連の代表者会議で国籍論議をする、歴史修正主義の教科書採択に反対の声を上げる、参政権獲得運動をさらに進めることなどを確認し、実践交流集会を終えた。(お)

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■「地方参政権に関する外国籍住民公聴会2001」報告

 2月20日「在日韓国・朝鮮人をはじめ外国籍住民の地方参政権を求める連絡会」主催の「公聴会2001」が、衆議院議院会館で行われました。

 はじめに、連絡会共同代表の田中宏氏から基調講演があり、地方参政権の歴史的経緯、また、現段階の問題点が述べられました。その後、6人の外国籍住民の方々から発言がありました。人材育成コンサルタントの辛淑玉(シン・スゴ)さん、ジャーナリストのT・ラズロさん、川崎市外国人市民代表者会議前委員のフロランス・デウボーさん、同じく金煕淑(キム・ヒスク)さん、東京都外国人都民会議の候曙茜(コウ・シュセン)さん、ジャーナリストの姜誠(カン・ソン)さんです。

 それぞれの立場から、様々な観点での意見が出されました。「一般永住者にも地方参政権を付与するのは当たり前である」という発言や、「被選挙権も当然の事として付与するべきでる」という意見。また、今年に入ってからの国籍取得緩和策に関しては「地方参政権と国籍取得は次元の違う話し。どちらも必要である」という意見も出されました。途中で、民主党、社民党、共産党の4人の国会議員の方々が、国会でも党内でも頑張ると発言されました。

 100人程の人々が集まり、熱気のある集会になったのですが、国会議員の参加が少なかった事が、今国会における法案成立に向けて、一抹の不安を残すものとなりました。(ち)

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■「外国人は信用できないのか?」 デパートMカード加入の外登証の提示要求

 マスコミが外国人の犯罪報道を声高に報じていますが、そんな中、信販系会社がピリピリとしており、外国人に対するローン・カードの加入・契約のチェックが厳しくなっています。中には、外国人にはローンの貸し付けを行わないこともあるそうで、戦後、在日コリアン1世が味わった差別が最近、横行してるようです。先日、このようなことがありました。

 今年2月6日、大手デパートM(以下、デパートM)で在日2世のCさんが店員の勧誘によりメンバーズカード(以下、カード)の加入をしようとしました。Cさんはカードの申込書に必要事項を記入し、身分証明として運転免許証(以下、免許証)を提示しました。しかし、店員は外国人登録証(以下、外登証)の提示を執拗に求めました。Cさんは「身分証明は免許証で十分。何故外登証をだすのかわからない。差別じゃないのか」というと、店員は「ないと作れません」と言い、Cさんのカードは作成されませんでした。

 Cさんから相談を受けた私たちは、デパートMと連絡をとり Mメンバーズカード(以下、Mカード)加入時に不必要に外国人登録証(以下、登録証)の提示を要求した件に関して、当事者のCさん家族とデパートM―K店(以下、K店)で話し合いが行われ、以下の様に合意されました。

(経過)
 2001年2月6日、K店1階売場でCさんがY店員の勧誘によりMカードに加入しようとした。関係書類に氏名、住所だけを記入の上、身分証として運転免許証を提示した。Y店員は名前が日本式でないので外国人と判断し、その手続きが曖昧だったため、同僚のW店員に相談した。W店員は過去の在日コリアンの手続きの時に、その在日コリアンが申請用紙には通称名で記載されているのに、身分確認の免許証が本名で書かれたことから、苦労した経験があった。その時に登録証の確認が一つの方法としてあると教わったことから、外国人にはすべて登録証の確認が必要と思いこんでいた。したがって、Y店員に登録証の確認を指示した。Cさんは、この要求は在日コリアンに対する差別行為と感じ、登録証の提示を拒んだ。この時、W店員からからカードセンターN店員に外国人の加入手続きの確認がされていた。N店員の「通常のルールで行って下さい」との説明にW店員は自分の指示が正しいと確信し、Y店員にそのことを教えた。Y店員はカウンターに場所を移し、Cさん再度登録証の提示を求め、「ないのならつくれない」と説明した。Cさんはそれなら仕方がないとMカード加入を諦めて帰った。
 その後、Cさんがかながわみんとうれんに相談をし、2月7日に、かながわみんとうれんSとクレジット・サービス商品担当係長らと、2月22日、3月9日に、Cさん家族とK店副店長らで話し合いが行われた。

(問題点)
 Mカードの加入手続きは、すべての外国人が加入でき、その際の本人確認は、免許証、保険証、パスポートなどで身分証明で行う。ただ、短期在留の外国人などにおいて、会話等で判断し、登録証を見せてもらう場合がある。しかし、今回のケースで対応したY、W両店員は、外国人のカード加入手続きは日本人ではない人には登録証を見せてもらうという認識だった。
 よって、すべてではないが、店側の方針と売場での認識には隔たりがあった。Mにおいて、カード加入手続き全般の指導は行っていたが、外国人のカード加入に関する指導は特に行われていなく、結果的に指導・研修が不十分だったと言える。

(確認点)
1 K店は、Cさん家族との話し合いの中で、外国人にとっての登録証の意味、本名と通称名、在日の差別の問題などの話しを聞いた。そして、今回のようにカードなどの手続きの際に外国人に不必要に登録証を求めることは、外国人にとって人権侵害につながることと認識した。
2 今回の件はデパートM本来の手続きではなく、売場の勝手な解釈の中で登録証を求めたものである。
3 K店は、今回の件について、店側の問題性とその過失を認め、当事者のCさんとその家族に謝罪を行う。なお、金品等の賠償は行わない。
4 今後二度とこのようなことを起こさないことを誓い、店員の外国人に関する認識を高め、店の体制を見直す。

 デパートMは、当事者の思いをよく聞き、これまでの認識不足を認め、当事者に謝罪をしました。この話し合いの中でどこまで事実が解明できたかはさだかではありませんが、差別があってはいけないという店側の建て前のみが、「自分ではおかしいと思うが、日本人じゃないと(外登証を)見せてもらうように植えつけられていました。」との現場の現実を生み出しているという実態をよく物語っています。

 当事者のCさんは民族学校出身であり、学生の頃から警察官等に会うと用もないのに何かにつけて「外登証を見せろ」と嫌がらせを受けてきました。その意味で不必要な外登証の提示要求はその頃の嫌がらせとだぶるのです。合理的理由があればいいのですが、既に身分証明のとして免許証をだしているのに・・・。だいたい、たかがカードという私的契約行為で本当に外登証の提示が必要なのでしょうか。

 外登証はその法の性格の議論があるほど管理的で、外国人自身のあらゆる情報が記載されています。昨今、個人のプライバシーの保護が叫ばれる中、外国人の身分証明が外登証のみというのは時流に逆行しており、正に「外国人は治安管理を」的な発想です。また、その発想は外国人への不信感という偏見からくるのものと言えます。このケースの「36回払いがあるから」という理由で(日本人には要求しない書類)外国人に外登証を要求するのは、「外国人はいつローンを踏み倒して外国に行くかわからない」という意識のあらわれであり、「外国人は日本人より信用ならない」という偏見の裏付けです。だから(実際に店員にはそこまでの意識はないにしても)免許証をだしているのに関わらず、外登証で在留資格を確認したがるのです。この意識は確実に最近強くなりつつあります。これはまさに昨今の「外国人=犯罪」という偏見の故です。そして、実際にこの手のケースに遭遇し、イヤな思いをするのは本名を名乗っている在日コリアンが多く、これは在日コリアンが本名で生きることを阻害していると言えます。

 Cさんの願いの根幹は「もう在日への差別をなくしたい」というものでした。決して外登証をだすのがイヤだったということが第一義ではありません。できればカード加入し5%割引を受けたかったぐらいです。それでも差別をなくすためにと声を上げたのです。そんなCさんの思いに敬意を表したいと思います。また、その率直な思いはM側にも説得力があったようで、私たちの思いを快く受け入れてくれました。

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■人種差別撤廃委員会速報

 3月20日に人種差別撤廃委員会で日本政府に対する最終見解が採択されました。(原文英語、日本語訳:RAIK)
 この委員会に対しては、在日の人権問題で以前からRAIKを中心に私たちもカウンターレポートを提出していました。
 最終見解は思った通り、外国人問題への懸念が多く、今後の日本政府の対応が注目されます。(以下、最終見解)

人種差別撤廃委員会 第58会期 2001年3月6〜23日

CERD/C/58/Misc.17/Rev.3(将来的にはCERD/C/58/CRP..)
2001年3月20日 オリジナル:英語

人種差別撤廃委員会最終所見:日本

1.委員会は、1997年1月14日および1999年1月14日にそれぞれ提出が予定されていた日本の第1回および第2回定期報告書を、2001年3月8日および9日に開催された第1443および1444会合(CERD/C/SR.1443 and 1444)において検討した。2001年3月20日に開催された第1459会合において、以下の最終所見を採択した。

A.はじめに

2.締約国との建設的対話を開始する機会を得たことをとくに歓迎する。委員会は、幅広い政府省庁を代表する大代表団が出席したこと、および締約国が認めたように、NGOが第1回報告書の作成の過程に関与したことによっても力を得た。

3.委員会は、報告書の作成のためのガイドラインに従って作成され、締約国により提出された、詳細で包括的な報告書、および委員会の報告書の検討の後に委員が行った広範囲の質問に対する回答として、代表団が提供した口頭による追加情報を歓迎する。委員会はまた、報告書の検討後に提供された文書による追加回答をも歓迎する。

B. 肯定的な側面

4.委員会は、いくらかの種族的および民族的マイノリティの人権の促進ならびにその経済的、社会的および文化的発展の促進のために締約国が行った立法上および行政上の努力、とくに以下のものを歓迎する。
1)1997年の「人権擁護施策推進法」
2)1997年の「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」
3)部落民に対する差別の撤廃を目的とした、「同和対策事業特別措置法」に基づく一連の事業

5.委員会は、アイヌ民族(Ainu people)を独特の文化を享受する権利を持つ少数民族(a minority people)であると認定した、最近の判決を関心を持って注目する。

6.委員会は、とくに外務省のウェブサイトにおいて「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」を含む基本的な人権条約の全文を公表していることを含め、既存の人権基準についての意識喚起の努力を歓迎する。委員会はまた、諸条約の履行に関する締約国の報告書および国連の各履行監視機構の最終所見についても同様に公表していることをも歓迎する。

C. 懸念事項および勧告

7.人口の種族的構成の確定に関する諸問題についての締約国の見解を留意する一方で、委員会は、締約国の報告書にこのための情報が欠如していると考える。締約国が次回の報告書において、委員会の報告ガイドラインにおいて要求するような、人口構成の完全で詳細な情報(とくに、コリアン・マイノリティ、部落民、沖縄社会を含む、条約の適用対象となるすべての状況を反映した経済的および社会的指標に関する情報)を提供するよう勧告する。沖縄の住民は、独自の種族集団であると認められるよう求め、この島の状況が沖縄住民に対する差別行為をもたらしていると主張している。

8.条約第1条に規定されている人種差別の定義の解釈に関して、委員会は、締約国とは逆に、「世系(descent)」という文言が独自の意味をもち、人種や種族的出身、民族的出身と混同されてはならないと考える。従って、委員会は締約国に対して、部落社会を含むすべての集団が、差別に対する保護および条約第5条に規定されている市民的、政治的、経済的、社会的および文化的権利の完全な享受を締約国が確保するよう勧告する。

9.憲法第98条が締約国によって批准された諸条約が国内法の一部である旨を規定しているにもかかわらず、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」の規定が、国内裁判所によってほとんど援用されていないことについて、委員会は懸念をもって注目する。諸条約の規定の直接適用が、特定の事案において、問題となる規定の目的、意味および文言を考慮して判断されるとする締約国からの情報に鑑みて、国内法における「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する条約」およびその規定の地位に関する締約国からの情報を明確にするよう求める。

10.委員会は、この条約に関連する締約国の立法の唯一の条項が憲法第14条のみであることに懸念を表明する。この条約が自動執行性を有さないという事実を考慮し、委員会は、とくに条約第4条および第5条の規定に従い、人種差別を禁止するための特別な立法を制定することが必要であると信ずる。

11.委員会は、「日本国は・・・、日本国憲法の下における集会、結社及び表現の自由その他の権利の保障と抵触しない限度において、これらの規定に基づく義務を履行する」とする、条約第4条(a)および(b)に関して締約国が維持している留保に注目する。委員会は当該解釈が締約国の条約第44条に基づく義務と抵触することに懸念を表明する。委員会は、委員会の「一般的な性格を有する勧告ェ(32)」および同「ュ(42)」に締約国の注意を喚起する。それによれば、第4条のすべての規定が非自動執行的であることに鑑み、同条はその実施において裁量の余地を認めない規定であり、人種的優越または憎悪に基づくすべての思想のあらゆる流布の禁止は、意見および表現の自由への権利と両立する。

12.人種差別の禁止一般に関し、委員会は、さらに、人種差別がそれ自体刑法において明示的かつ十分に犯罪とされていないことを懸念する。委員会は締約国に対して、その国内法秩序において、条約の諸規定を完全に実現することを検討すること、ならびに人種差別を犯罪とすること、および、いかなる人種差別行為に対しても権限のある国内裁判所および他の国家機関を通じて、効果的な保護と救済措置を利用する機会を確保するよう勧告する。

13.委員会は、高い地位にある公務員による差別的な性格を有する発言、および、とくに、条約第4条(c)の違反の結果として、当局がとる行政上または法律上措置がとられていないこと、ならびに、当該行為が人種差別を扇動し助長する意図がある場合にのみ処罰され得るという解釈に懸念を持って注目する。締約国は、かかる事件の再発を防止するための適切な措置をとること、とくに、公務員、法執行官および行政官に対し、条約第7条に従い、人種差別につながる偏見と闘う目的で適切な訓練を行うよう要請される。

14.委員会は、コリアン(主に子どもや児童・生徒)に対する暴力行為およびこの点における当局の対応が不適切であるとする報告に懸念し、政府が当該行為を防止し、それに対抗するためのより断固とした措置をとるよう勧告する。

15.日本に居住する外国籍の子どもに関して、委員会は、初等教育および前期中等教育が義務教育となっていないことに注目する。さらに、委員会は締約国の次の立場に注目する。すなわち、「日本における初等教育の目的は日本人をその社会のメンバーとなるように教育することであるから、外国人の児童にかかる教育を受けるよう強制することは適切ではない」という立場である。委員会は、統合という目的を確保するために強制手段を用いることが全く不適切なものであるという考え方に同意する。しかしながら、第3条および第5条(e)(v)に関し、委員会は、この点に関して異なった取扱基準を設けることが、人種隔離ならびに教育、訓練および雇用についての権利の不平等な享受をもたらすおそれがあることに懸念を表明する。締約国が、人種、皮膚の色または民族的若しくは種族的出身に関する差別なく、第5条(e)が規定する関連する権利が保障されるように確保するよう勧告する。

16.委員会は、コリアン・マイノリティに影響を及ぼす差別に懸念を表明する。(朝鮮人学校を含む)インターナショナルスクールを卒業したマイノリティに属する生徒が日本の大学に入学するための制度的な障害のいくつかのものを取り除く努力が払われているものの、委員会は、とくに、朝鮮語による学習が認められていないこと、および在日コリアンの生徒が高等教育の利用の機会に関して不平等な取扱いを受けていることに懸念を表明する。締約国に対して、この点におけるマイノリティ(朝鮮人を含む)の差別的取扱いを撤廃し、国公立の学校におけるマイノリティの言語による教育を利用する機会を確保するため、適切な措置とるよう勧告する。

17.委員会は、締約国が先住民であるアイヌの権利をより一層促進するための措置をとるよう勧告する。この点に関し、委員会は、とくに、土地権の承認および保護、ならびにその喪失に対する現状回復および賠償を求める、先住民の権利に関する「一般的な性格を有する勧告ィィ。」(第51会期)に締約国の注意を喚起する。また、締約国に対して、先住民および種族民に関するILO第169号条約を批准し、またはそれを指針として用いるよう要請する。

18.委員会は、日本の国籍を申請するコリアンに対して、自己の名前を日本語の名前に変更することを求める行政上または法律上の義務はすでに存在していないことに注目しつつ、当局が申請者に対しかかる変更を強く求めていると報告されていること、および、コリアンが差別をおそれて、そのような変更を行わざるを得ないと感じていることに対して懸念を表明する。委員会は、個人の名前が文化的および種族的アイデンティティの基本的な側面であることを考慮し、締約国に対して、かかる慣行を防止するために必要な措置を取るよう勧告する。

19.委員会は、締約国が受け入れる難民の数が最近増加していることに注目しつつ、インドシナ難民と、その他の民族的出身を有する限定された数の難民に対して異なった取扱基準が適用されていることに懸念を表明する。インドシナ難民は、滞在施設、財政支援および国が資金を負担する日本語講座を利用しうる一方で、かかる支援は他の難民に対しては原則として適用されていない。委員会は、締約国に対して、このようなサービスをすべての難民に対して平等に保障するために必要な措置をとるよう勧告する。これに関し、さらに、締約国が、すべての庇護申請者がとくに十分な生活水準および医療についての権利を有するよう確保することについて、すべての難民に平等の資格を確保するために必要な措置をとることを勧告する。

20.委員会は、国家賠償法が相互主義に基づいてのみ救済を与えていることを懸念する。これは条約第6条に合致しない。

21.委員会は、締約国に対して、今後の報告書において、とくに、条約違反にとくに関係する判例(当該違反に対して裁判所が与えた適切な賠償に関する判例を含む)を提供することを求める。

22.委員会は、締約国が次回の報告書に、ジェンダーならびに民族的および種族的集団ごとの社会・経済的データ、およびジェンダー関連の人種差別(性的搾取および性的暴力を含む)を防止するためにとった措置に関する情報を含めるよう勧告する。

23.また、締約国が次回の報告書において次のものがもたらした影響に関する一層の情報を提供するよう求める。
1)1997年の「人権擁護施策推進法」および「人権擁護推進審議会」の活動および権限
2)1997年の「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」
3)「同和対策事業特別措置法」および同法の適用の終了後、すなわち2002年以降に、部落民に対する差別撤廃のために検討されている戦略

24.委員会は、締約国が条約第14条に基づく宣言を行っていないことに注目し、当該宣言を行う可能性を検討するよう勧告する。

25.委員会は、締約国が、第14回条約締約国会合が1992年1月15日に採択した、条約第8条第6項の改正を批准するよう勧告する。

26.委員会は、締約国の報告書の提出以降に今後も当該報告書を一般の人々が容易に入手できるようにすること、報告書に関する委員会の所見についても同様に公表するよう勧告する。

27.委員会は、締約国が2003年1月15日に提出する予定の第3回定期報告書を第4回報告書とともに提出すること、および本所見において提起されたすべての諸点に対処することを勧告する。

*最終的な形態の文書になる前に事務局などによる、内容の実質的変更を伴わない形式的な変更を受ける可能性のあることをお断りしておきます。

翻訳:反差別国際運動日本委員会
監訳:村上正直(大阪大学大学院国際公 共政策研究科助教授)
情報提供・英文タイピング:IMDRジュネーブ事務所 田中敦子

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■石さん・陳さん裁判、鄭商根さん裁判、姜富中さん裁判、最高裁敗訴判決出る

 去る4月5日に、石さん・陳さんの戦後補償裁判の最高裁敗訴判決が下りた。当日の午前9時30分に知らせがあり、10時30分に言い渡されるという、弁護士も原告も出廷できない状況でのことだった。民事訴訟法の旧法では、このような扱いになる。

 「在日の戦後補償を求める会」の弁護団、代表、事務局の数名で記者会見をセッテイングしたが、その場にも原告の石成基さん、遺族の陳慶一さんは出席できなかった。何とも腹立たしい思いになる。判決は、援護法の附則2項(戸籍条項)は憲法14条に違反しないと言いながら、補足意見がついた。

 今年の4月1日に施行された「平和条約国籍離脱者等である戦没者遺族等に対する弔慰金等の支給に関する法律」に触れて、「弔慰金等の支給は、人道的精神に基づくもので、国家補償の性格を有しないものとされており、(略)その性格も不明瞭で、大きな差別の解消に充分ものとは評価し難いものである。(略)人道的見地に立脚した明確な法的解決が望まれるところである」と指摘した。

 民事訴訟法が新法に変わり、鄭商根さん裁判と姜富中さん裁判の判決期日は、4月6日に知らせが入った。判決は4月13日で、同じ法廷、同じ裁判官であった。またもや敗訴。二つの判決文はほとんど同じで、4、5判決の趣旨を是認しながら、補足意見等の論旨を採用しなかった。「上告人のような在日韓国人については、その公務上の負傷叉は疾病等につき、(略)何らの補償もされないまま推移することとなった。(略)しかしながら軍人軍属等のような戦争犠牲ないし戦争損害に対する補償は、憲法の予想しないところであり、(略)立法府の裁量的判断にゆだねられたものと解される」と判断し、弔慰金法を肯定する内容となっている。

 ほとんど、司法の判断を回避した不当なものと言わざるを得ない。法廷で裁判官は、主文しか朗読しない。その冷たさに、姜富中さんは大声で怒りをあらわにした。その怒りには、これまでの人生と裁判闘争の重みがある。(ち)

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■1500円アップ!は10月 川崎市外国人高齢者、障害者福祉手当増額

 川崎市の来年度予算案が決定されました。以前お伝えした川崎市外国人高齢者、障害者福祉手当の増額(1500円アップ)は、4月以降でなく、10月以降でした。申し訳ありません。

 3月9日に市議会でこの件に関する審議があり、傍聴してきました。以下、市側の答弁です。
 「この手当は、戦前に渡日され市内にお住まいの外国人高齢者の方々の戦前・戦後の様々な労苦に報いるとともに、福祉の向上を図る目的といたしまして、誕生日が1929年8月15日以前で年齢が70歳以上の方を対象に、平成6年から支給しているもので、当初、月額1万円で開始し、順次増額を図り、現在2万円を支給しているところでございます。
 今回の増額は、川崎市外国人市民代表者会議の提言や介護保険制度の施行に伴う在日関係団体からの要望等を踏まえ、さらに、市民として豊かに暮らしていただくよう、これまでの歴史的経過を踏まえ外国人高齢者施策の充実を図ったものでございます。」

 以前にもお伝えしたように、私たちは、在日高齢者サークル「トラヂの会」、川崎市職員労働組合と、昨年、介護保険の保険料徴収が開始された月に、在日高齢者を介護保険から取りこぼすな、保険料が払えるよう福祉手当を増額しろという主旨で、10月19日に介護保険と在日1世という学習会を行いました。そこの集会の決議した申し入れ書を23日に川崎市に提出しました。その後、総連、民団が同様な申し入れを行いました。その意味で、当事者の取り組みの成果なのです。今回市会答弁でもこれらのことがふれられており、川崎市の増額の1500円は、介護保険料の基準額と同額であることからも、正にこのための増額と言えます。(S)

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■もっとお粗末! 市の外国人市民施策?

 先月号でお伝えした川崎市市民意識調査の調査対象を住民基本台帳からの抽出で、外国人市民を排除しているという件、2001年2月26日に川崎市に申し入れを行いましたが、大変お粗末な顛末でした。

 担当者との話しで明らかになったのは、外国人市民も91年(?)から対象となっており、同じ抽出率で外国人登録原票から調査対象に抽出されているとのことでした。(ウソをついてないか、厳正に調査しましたので、これは本当)

 では何故?。単なる報告書の記載ミスだったのです。なんというお粗末!。排除されていないのならいいと、今後、職員に外国人市民施策の徹底、調査事業等の点検等を申し入れてきました。(S)

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■アリラン祭に若者が集う!

 3月18日、川崎市労働会館で、第8回アリラン祭が開催されました。今年、会場には500人近い人たちが集い、大盛況となりました。

 「学校と地域を結ぶ民族文化祭」であるアリラン祭では、韓国・朝鮮の民族舞踊のプチェチュム(扇の舞)や民族楽器演奏の農楽、テコンドーの演技などが発表されました。また、在日外国人への差別をテーマにした創作劇や自作の歌の発表も行われました。

 その中心となっていたのは、地元の高校生です。在日韓国・朝鮮人生徒たち、そして日本人生徒たちや多様な民族的ル−ツを持つ生徒たちが、学校の枠を越えて、この場に集ってきました。

 今回は、1年前から準備を始め、本番までの交流会や練習の企画・運営は、高校生たちの自主的な活動の中からつくられてきました。その自主性の高まりや連帯感が、当日の舞台での演技の輝きにつながってい たようです。生き生きと表現する若者たちに、会場からは暖かい拍手が寄せられていました。(さ)

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■国籍取得法案がやってくる?!

 与党が国籍取得特例法案の要綱をまとめる新聞報道でご存じだと思いますが、与党の「国籍に関するプロジェクトチーム」が「特別永住者等の国籍取得の特例に関する法律案(仮称)要綱案」をまとめ、近く国会で提案される様です。要綱案は以下の通りです。

 第一 趣旨 この法律は、特別永住者等について、歴史的経緯及び日本社会における定住性にかんがみ、日本の国籍の取得に関し、国籍法の特例を定めるものとする。
 第二 定義 この法律において「特別永住者」とは、次ぎに揚げるものをいうものとする。
 1 特別永住者(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法[以下「入管特例法」という]の規定に基づき特別永住者として日本に永住することができる者をいう。
 2 特別永住者と婚姻し又は養子縁組し、その婚姻又は養子縁組の継続中に、当該特別永住者の国籍を取得したことにより日本国籍を喪失した者(日本に帰化した後日本国籍を失った者を除く。)であって、日本国籍を喪失したときから引き続き日本に在留する者
 第三 届けによる国籍の取得
 一 特別永住者等で日本に住所を有するものは、法務省令で定めるところにより、法務大臣に届け出ることによって、日本国籍を取得することができるものとする。
 二 一による届出をした者は、その届出の時に日本国籍を取得するものとする。
(略)
 第七 戸籍法の一部改正 この法律の制定に伴い、国籍取得の届出の規定について規定を整備するものとする。

 法案要綱は、届出制による日本国籍取得ができることとなりますが、これはいうまでもなく参政権法案の対抗措置です。国籍取得法案が成立すれば、「参政権を与えなくとも特別永住者には届出制で国籍を与えたし、他の外国人は帰化をすればいい」となり、「在日に選挙権を与えてもいいじゃないか」という世論に対抗できるという発想なのです。参政権より日本国籍をという主張は、参政権法案の参考人として招致された鄭大均氏等も主張しており、これが大きく影響しているようです。

 日本政府は、外国人に地方参政権を与えることはそれ程アレルギーをもっているのです。一方、日本国籍取得法案に合意し、参政権を法案を進めている公明党は、二案とも同時の成立といっていますが、本当にそう思っているなら、状況判断が甘すぎます。  この動向に早くも一部の在日等が反対の表明をしています。また参政権をすすめる市民運動グループも同様に警戒感を深めています。一方、在日の多くがこの法案成立を機に日本国籍へ流れることが指摘されており、この際、日本国籍を積極的に取得しようという声もあります。さて、民団、総連はいかなる対応となるのでしょうか。

さて、私たちはというと、来月号より「在日と国籍」というテーマで連載を行う予定です。乞うご期待!。

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