3月9日土曜日、横浜ランドマークタワー13階のフォーラム横浜で「市民が作るヨコハマ外国人市民会議」が行われた。主催者である多文化共生ネットワークの久保新一代表(関東学院大学教授)が「外国人市民施策を横浜市がやろうとしないのなら、むしろ市民が主体となって進めよう」と、今回の「市民会議」の意義を挨拶で述べた後、神奈川県外国籍県民会議前議長の金廣照(キム・カンジョ)さんを進行役に、各パネラーから意見・提言が表明された。
バングラディシュ出身のアブドラ・ラシッドさんは、人間が生きていくためには最低限の衣食住が必要だが、外国人は安定した職業に就くことが難しく、生活環境も不安定にならざるを得ないので公務員や企業などは人口比にみあった採用をしてほしいと訴えた。韓国出身の崔沫鎮さんは、社会に参加する者としてがんばっていくためにも、母国で取得した資格などが日本でも生かせるように考慮して欲しいと訴えた。
続いて中国出身の栗林恵平さんは、国民健康保険や国民年金の掛金(保険料)への負担を感じる人も多い。それに制度そのものがよく認知されていないのでもっと分かりやすく知らせることが必要だと指摘した。ベトナム出身のチャン・ティ・トゥイ・チャンさんは、ベトナム語の通訳がいる窓口が神奈川県下で泉区にしかない現状を指摘し、困ったときの相談など行政がもっと積極的な支援をしてくれることを期待すると訴えた。
またブラジル出身の豊住マルシアさんは、外国人の子どもがおかれている現状にふれ、子どもたちが疎外感を感じないよう、制度やコミュニティーの整備が必要であると訴えた。さらに在日韓国人の韓興鉄(ハン・フンチョル)さんは、日本で生まれ韓国で学生時代を過ごし、今は日本と韓国とをつなぐ仕事をしている体験から、日本の制度改正などを通じて、外国人の社会参加をもっと進めることが大事であると訴えた。最後に、お母さんがアメリカ人、お父さんが日本人の谷中修(やなか・おさむ)さんは、難しいことかもしれないが、まずは異なる文化に向き合うことがとても大切であると訴えた。
パネリストからの意見・提言が表明された後、会場からも発言があり、質問にも答える形で討議がなされた。そして、外国人市民会議の設置やアファーマティブ・アクションの採用、地方参政権の承認などいくつかの意見が、横浜市への提言としてまとめられた。また、「市民会議」集会のまとめとして横浜市立大学教授の倉持和夫さんからは、これから増えていく外国人市民と、まずはきちんと向き合うことが重要である、そういう意味では今日の「外国人市民会議」は始まりに過ぎないとの意見が出された。集会参加者も、外国人市民が日々の暮らしの中で実に多くの問題を抱えて苦労していることを知ることができた。今回出された提起を活かすためにも、もっと行政も市民もともに協力して、6万人の外国人市民の暮らしを積極的に支えていくことが重要だ。「外国人市民会議」は開かれた港都ヨコハマにこそ必要である。(大窪)
外国人を理由に賃貸契約を断ったルームグリーン、平和開発との第2回の話し合いが2月28日に川崎市ふれあい館で行われました。前回の話し合いでは、ルームグリーンが内部規程(以下、内規)で外国人個人の入居申し込みを断ってきた事実がわかりました。そして今回は、その内規がどうのような経緯で作られたか、それがどう変わったのか、今回の差別事件を機にどう反省し、今後どうしていくのか等が話される予定でしたが、S契約部長の「確かに断ってきたが、ルームグリーンなりに努力をしていた」ことのみを前面にした反省の感じられない回答にスムーズな話し合いにはなりませんでした。いったいルームグリーンは何を守っているのでしょうか。
話しは冒頭、内規についての話しがなされました。「(内規は)当初からありました。私どもの会社の体制が入居を当初決めるときに最終的の判断はオーナー様の方に委ねる形をとってましたので、その中で一部のオーナー様とか、そういうのでダメだってこともありましたので、その時期からあったんですけど、私どもの審査の流れで会社の何年かやっているうちに、当社の判断で入居を認めていくオーナーさん、そういうのができてきて、実際の判断を当社がするうえで一つの内規として、そこで区分けされました。」と答え、一部のオーナーの「外国人お断り」の方針をルームグリーンが会社の方針としたことが明らかにされました。ルームグリーンは、外国人の入居に対してどちらでもいいと思っているオーナーにも「不可にしときましょうね」として外国人を排除してきたのです。そして、その内規は、最初のうちは「口頭」としていましたが、物件ごとの内部書類に可・不可の欄をルームグリーンが作り、ルームグリーンは外国人の欄を一律に不可にしていたらしいのです。
その理由については、「まずオーナーさんの方の生活習慣とかのお話も前回あったんですけど、オーナーさんの意向で、色んな方います。その中でまず入居中の言葉の問題、生活習慣、そういうことと退去後の敷金の清算、取りづらいケースとか多々ありますので、私どもの方でそういう理由で区別していたと思います。」と答えましたが、ここに今回の問題の本質、ルームグリーンおよび不動産業界の差別体質があります。外国人と日本人のトラブルの件数について聞くと、ルームグリーンは「日本人が多い」「(外国人のトラブルは)少ないです」というのです。まあ実際に断っていましたから当たり前ですが。そして、「そういう意識付けが確かに私もこの会社の前から仲介業者にいました。断られるケース多々ありました。私は宅建業者にもいましたし、今は限られた立場ですけど、業界の中の基準があったと思います。」という通り、「どちらかというと、不動産業界でまことしやかに言われている、言葉、生活習慣、清算の問題、具体的にルームグリーンさんが具体的なトラブルがあるわけではない。」ということなのです。つまり、意識的か否かはともかく、それは全部予断と偏見なのです。それに基づいて、外国人への賃貸は危険であり、「危険負担を逃れるための区別」とし「外国人には貸しませんよ」としてきたのです。そしてそれが社員全員に徹底されていたわけで、実態は大変深刻です。
しかし、ルームグリーンは「確かに断ってきたのは事実ですけど」「差別ということをしたという認識を持ちました」としつつも、「私どもも、少しながらも改善をしてきたつもりなんですけど」と会社の努力を強調するのです。「いつ方針を変えたのかというのは私どもはそれも定かではないんですけど、現時点外国人の方の個人契約をしている物件もありましたので、4年前くらいからは当社は、当然物件によってですけど、受け入れしている物件は当然あります。〜ここ最近の物件というのは新しいオーナーさん、理解のあるオーナーさんもおりますので、当社の判断で入居させていただいている」と主張するのです。そして方針(外国人を断る)は変えたのかとの問いに「(4年前から努力をしているので)特に変えたつもりはない」と意味不明の回答をするのです。結局はこの期に及んでも、外国人を入れているケースもあり、我々は差別をしているのではなく、努力をしているのだと言いたげなのです。最終的にこちらの追求により「努力は取り下げます」と自らの非を認める様な態度を見せましたが、彼らは確実に何かを守ろうとしているです。
このようなルームグリーンの回答にいらいらしていると、なんと宅建業者に働きかける市の担当課から「(不動産屋さんも)断って行くところが無い。かわいそうだと思うと、入れてやる努力をする場合もあるんです。そういうところで少しづづオーナーさんとお話をして入っていただけるようななってきてる場合もある。そこに皆さん言ってるように民族差別しているんだという意識はない。」と、ますます混乱をさせる発言も飛び出て、場内のフラストレーションは爆発寸前な状況でした。
結局、こんな中でも参加者の粘り強い追及の中で少し全体の構造が分かったような気がします。ルームグリーンの扱う物件のうち約3割がいわゆる「丸投げ」といわれるルームグリーン独自で入居の判断できる物件で、これにはルームグリーンの判断で内規で国籍条項があるのです。そしてそれ以外の7割の物件は、詳細が明らかではありませんが、オーナー判断での入居で、これには駄目なケースといいケースがあるようです。推測ですが、この7割の物件で4年前から外国人の入居が若干あるのでしょう。これを彼らは努力というのです。
話しの中で、この事件以降、外国人と契約したのかとの質問に、最初はあると答えていましたが、よくよく聞くとそれはオーナー判断の7割の物件の方で、この3割の国籍条項は未だにそのままなのでしょう。今後、この3割の物件の国籍条項をはずすのかとの問いに、外国人不可の契約をしているので、オーナーさんのご理解をいただいて、1件1件はずさないと、内規は勝手にルームグリーンの判断ではずせないといいます。したがって、この事件発覚以後もルームグリーンの実態は何もかわっていないのです。本当に反省しているのでしょうか。よくある民事紛争事件でもないのにルームグリーンは自分本位の主張をしているようです。ルームグリーンの真摯な対応は見られません。
話し合いの最後にでた意見のようにルームグリーンは真摯にこの事件の自らの差別性を認めるべきです。「断ったときに、彼女がそのことでどういうふうに傷ついたかを想像したことだとか、痛みを考えていない。それがどういう問題を招いたかを考え直さないと」「自分たちの会社が外国人を可・不可っていう制度があったことにより、S(ルームグリーン担当者)さんの立場もあると思うけど、やっぱり制度の中から差別が生まれるってことを考えていただきたい」(日本人市民)「勉強していくかとの姿勢を会社全体で確認していただき、付き合っていただきたい」(川崎市)「私自身の問題でもあるが、ここにいる在日全ての問題だ。その思いをわかってほしい。今後、人数が多いとか、謝罪をしたとか、低レベルの話しを進めるのではなくて、きちんと自分のこととして考えて欲しい。相互理解のため向き合って話しあっていきましょう。隠し事のない、全てを話して欲しい。きちんと事実を伝えて下さい。」(当事者)と今一度この問題に真摯にぶつかって欲しいです。まだまだ話し合いはつづきます。(S)
「アリラン祭〜学校と地域を結ぶ民族文化祭」が3月17日午後、川崎市立労働会館で、約300名の参加者を集めて開かれました。アリラン祭は川崎南部にある高校の朝鮮問題研究会、朝鮮文化研究会の生徒たちによる合同の民族文化祭として1994年に始まり、今回が9回目の開催です。参加する生徒も横浜、横須賀などに及び、第5回からは川崎市教育委員会との共催事業にもなっています。
当日の舞台は、女子生徒によるイープクをオープニングに、桜本中学による農楽、ハナ高校生交流会報告、テコンドー、創作劇、体験発表、高校生による農楽と続き、最後に参加者自己紹介とアリラン祭テーマソングの合唱がありました。また、ホワイエには東桜本小学校と川崎朝鮮初中級学校の交流パネル、桜本小学校4年生の韓国・朝鮮についての調べもの学習の成果が展示発表されました。
体験発表では3人が舞台に立ちました。創作劇の脚本を担当した在日の男子生徒は、子どもの頃の差別体験を紹介しつつ、そのことが逆に自分を強くしていったと語りました。また、日本人の女子生徒は、テコンドーを通しての韓国との出会いが新しい出会いを生んでいったことを、在日の女子生徒は、差別は自分には関係ないと思っていたが、イープクの仲間たちと話し合う中で自らのアルバイト差別を語る自分を見つけていったことを話しました。アリラン祭が自分や社会を見つめ直し、生徒間の豊かな関係を創り出している場であることを再確認させられる思いがしました。
アリラン祭の取り組みが始まって10年になろうとしています。在日の生徒の参加が少ない、学校単位での取り組みが見られなくなったなど、アリラン祭の抱える課題は多々あると思います。しかし、アリラン祭が神奈川の学校現場に大きな財産を築き上げてきたのも事実です。「教育実践はゼロからの出発である」という原点に返りつつ、実践の再構築と今ある成果の有機的な結合をはかっていく必要があると思います。(み)
先月号で抗議声明を出した阿部市長の発言。その後の市議会答弁など、私たちが収拾した関連発言も含めてご紹介します。
●2002年2月6日、第15回「地方新時代」市町村シンポジュウム全体会にて
(司会)もう一つ、参加の問題を考えるときはですね、誰が参加するのか、特に最近は外国人のですね、国籍がない方でも住民で住んでらっしゃる、そういう人をどう扱うのかという問題がでていると思うんですけども、川崎はだいぶ進んで全国に先駆けていろいろなことをやっていますが、つまり住民とは何かというこういうカテゴリーに関わる話しですけども、その辺は阿部さんはどんなお考えでしょうか。
(市長)あの、あの、基本的にね、外国人、地方自治制度では、市民、住民というのは、国籍は関係ないわけですからね、だから、まちづくりなんかについては参加してもらってやっている。川崎市では外国人の市民会議をつくってね、そこでの意見を参考にして、それ政策に取り入れるということをやっているんですが、しかし、それは議会じゃありませんから、正式な決定権限があるわけじゃなくて、あくまでも参考意見ということになるわけですよね。あとね、参政権の問題は非常に難しいと思うんですよ。私は、やっぱり今の地方自治体が、国の仕事、国全体、国というのは、極端にいうと戦争をするための単位ですからね、だから国のね、国の権限を地方自治体が行使している間はね、やっぱり国の立場を尊重しなければいけないと思っているんですよ。でね、全く分権、地方自治が自分たちの地域を自分たちで決定できるような状態になっていればね、なっていれば、外国人であろうと、日本人であろうと、関係なく同じく参政権があっていいと思うんですが。自分たちがそれでいいといえばね。だから、地方自治体ごとに分権が進めば地方自治体ごとに判断できるようにすればいいんであって、ただ会員と準会員は違うということ、これはやっぱりきちんと区別しておかないといけないと思っています。正会員と準会員は違うということですよ。どんな会合でも。
●2002年3月市議会 民主・市民連合代表質問にて
質問趣旨:準会員発言に引きつけた市民投票条例における参加資格について
(市長)本制度の創設にあたりましては、ご指摘の投票資格をどのようなものにするかという点も含め、対象となる事業、発議の主体、市民投票の成立要件、投票結果の法的効果など、多岐にわたる論点がございます。多様な市民ニーズをより適切に市政運営に反映させるための市民投票制度を創設するものでございますが、全市域を対象とする選挙にあわせて実施するのが効率的であると考えておりますので、この点も踏まえて幅広く検討してまいります。なお、その際、ご指摘の米原町の住民投票制度も参考にしてまいりたいと考えております。次にこのたびの地方新時代市町村シンポジュウムでの発言でございますが、一連の議論の中で地方参政権について述べたものでこざいます。永住外国人に関する地方参政権に関しては、国会などでの議論の推移を見守っていきたいと考えておりますが、地方自治における外国籍者の権利につきましては、市民として受益する権利と参政権のように、公の支配に間接的にかかわる権利があると考えてますが、後者の権利につきましては、団体等における正会員ともいうべき、日本国籍者に考えられるべきではないか、との意見を述べたものでございます。なお、地方参政権に関する法律が制定されましたならば、それに従うの当然のことでございます。
●2002年市議会3月13日予算委員会飯塚議員質問
質問趣旨:共に生きるという点に立脚した地方参政権について
(市長)現在、定住外国人の地方参政権が、法的には国政のみならず、地方レベルでも認められない中で、私の基本的な考え方は、先の代表質問でお答えお答えいたしましたとおりであります。ただ一方で、ご指摘のように、本市をはじめ全国の多くの地方議会で「定住外国人の地方参政権の確立に向けた意見書」が採択されている(現実がある)ことも十分に認識しております。なお、本市は、この定住外国人問題につきましては、歴史的な経緯もあり「外国人市民代表者会議」という制度を条例化しております。この制度は、地方参政権のある、なしにかかわらず、定住外国人の方々はここ川崎の地域社会を構成するかけがえのない一員として、日本国籍を有する市民と一緒に、ともにまちづくりを担い、ともに生きていこうという趣旨のもとに創設されたものであり、この考え方は、今日のグローバリゼーションの時代にあって、きわめて大切な視点であり、今後ともこうしたふまえた地域社会づくりのまちづくりに努めていきたいと考えております。
4月8日、川崎市外国人市民代表者会議の1・2期委員長の李仁夏さんと3期委員長の中村ノーマンさんが市長と面会したそうです。この時、市長は、在日コリアンがかかえる歴史的背景に理解を示し、多文化共生のまちづくりについても意欲を示し、外国人市民施策に関わる総合的な計画の推進などについても前向きな認識を述べたそうです。そして外国人市民代表者会議の堅持、市職員の任用制限に関わる国籍条項の見直しなどについてもふれたそうです。
しかし「国家は戦争の単位」「準会員」の発言については、「わかりやすく私見を述べた」までと言い、発言の撤回等はなかったようです。
市長の背景にある思想は大変危険です。私たちはこのことをただすことは大変重要と考えます。しかし、市長の思想のみを問うことより、今後の川崎市政、外国人市民施策のよりよい方向性を担保することが最重要と考えています。特に彼の掲げる「市民投票条例」ならびに「区民会議」の参加要件、外国人市民代表者会議が提言した182職務の任用制限の見直し、外国人市民の関連条例策定など、今後どう川崎市で行われていくかが、焦点でそのための取組みを行っていく予定です。
さる4月10日に、参議院議員会館において「外国籍住民の社会参画と多文化共生をめざして〜地方参政権の実現を〜」の集会が行われた。「地方参政権を求める連絡会」事務局の予想を上回って、 150人程の参加者があり、議員は衆参合わせて11人の方々の参加があった。民主党、社民党、共産党、そして公明党の議員が次々と壇上に立ち、発言をされた。特に、公明党の冬柴鐵三衆議院議員は「98年の法案提出後、15時間しかこの問題は審議されていない。与党内の反体議員との懇談が、重要である。今後も、真摯に取り組んで行きたい」と発言。この間、トーンダウンしている公明党のやる気を払拭するかのような内容だった。また、民主党のツルネン・マルテイ参議院議員は、集会の最初から最後まで参加してくださり、「私は皆さんと共に、法案成立に向けて頑張りたい。民主党内のプロジェクトを活性化し、頑張って行きたい」と、力強く発言された。日本の政治史上、初めての元外国籍の国会議員として、様々なあつれきに屈しないよう、今後の活躍に期待したいと思った。
今年の1月21日、滋賀県米原町において「米原町の合併についての意思を問う住民投票例」が施行された。条例の「投票資格者:第5条(2)年齢満20年以上の永住外国人で引き続き3ヶ月以上米原町に住所を有するもの」によって、全国で初めて永住外国人に投票資格が与えられた。集会当日、壇上に立った民団滋賀県団長の安相鳳(アン・サンボン)さんは、「3月31日の投票日まで、様々な嫌がらせが続いた。けれども、村西俊雄町長の英断により、生まれて初めて一票を投じる事ができた。この流れが地方参政権獲得まで続くよう、今後もアピールしていきたい」と語った。
地方参政権問題は、今国会で審議されずに、渾沌としている状態である。だからこ
そ、今一度、仕切り直して今後の運動のあり方を考えていかなければならない。昨年
話題になった「国籍取得法案」は、いまだ法案提出されていない。明らかに対抗策としての法案である。でも、様々な角度から、外国籍住民の政治参加を考えて行く時代に入ったのではないだろうか。タブーなく、フリーに、オルタナテイブな道を模索していっても良いのではないだろうか。(ち)
4月13日、荒川で第6回民族差別と闘う実践交流集会が行われ、約60人が参加し、在日が抱える実態と今後の生き方について議論を交わしました。
集会は、午前中が1部として、「在日の精神保健をめぐって」と題して、鄭香均さんよりアルコール依存症の問題、在日の生活実態を照らし合わせた報告がなされ、その後に、鄭暎恵さんからカナダの特にマイノリティーのメンタルヘルスの取組みについての報告がありました。
それによれば、アルコール依存症は家族関係の病理と言われるらしく、その家族関係の問題、特に夫婦の関係を指摘し、この構造が在日の家族によく見られること、特に在日ー日本人の婚姻関係によくあると、ご自身の保健婦としての体験からお話しをしていました。
午後の第2部は、在日コリアンと国籍という題で議論を行いました。これは、一つは地方参政権法案に対して、国籍取得特例法案が保守陣営によって用意されていること。そしてもう一つは、この間、在日が帰化等による日本国籍に流れる速度が増しており、今後、在日が生き方が問われているとの背景があるためです。
さて、議論は、はじめとして、3人の問題提起を受けました。まず一人目は、田中宏さんで、日本国籍の取喪をめぐる系譜についての話しがありました。特に今年はサンフランシスコ平和条約から50年目の年であり、その平和条約と日本の国籍処理について、問題整理という意味での話しでした。そして、その次に李敬宰さんと呉崙柄さんから日本国籍が取得できるような運動をはじめようとの提起がありました。両者とも、国籍イコール民族の思想を脱却し、コリア系日本人として生きようと言い、子どもたちの実態と合わない国籍の保持はいかがなものか訴えました。李敬宰さんは在日社会の中の日本国籍イコール民族の裏切り者という考えをあらためられるべきと、在日社会の排他性も指摘していました。
その後、議論は皆さんが予想できるように、国籍取得に関する賛否両論が、時には理論的に、多くの時間が感情的に交わされました。もちろん、結論はでませんでした。しかし、裁量による帰化制度の問題、そして、在日の幅広い生き方の選択の一つとしての日本国籍取得については、許容しつつあると感じました。参加者には民族団体の方々もおり、これは決して一部の人たちの関心事でないことは感じました。
まあ、しかし、国籍を相対化しようとの議論はもう10数年も前からあります。しかし、やはり、差別をされてきた歴史等、在日社会の国籍に関わる呪縛は、重層的でこの議論の中でも、賛否両者の中に、その様々な国籍のこだわりがあり、とても相対的にとらえられているとは思えない状況です。
さて、この国籍問題、正直言えば、私もよく考えがまとまりませんが、ちょっとだけ論議に参加してきた思いを吐露すれば、何故、「国籍を〜にしよう」とこだわるであろうかという感です。もっと「国籍なんて〜」とファジーに考えられないのでしょうか。どっちでもいいのではないでしょうか。賛成派、反対派、その国籍のこだわりこそが、逆の意味で在日への差別思想の底流だったのではないでしょうか。またこの議論はその先がわからない議論です。取得しようとする声も、保持しようとする声も、その先が語られてないような気がします。どちらにしても、在日が年間1万人程、帰化許可を受け、日本国籍を取得する中、今後、何をもって在日と規程するのでしょうか。これからの若い世代に、私たちは何を語り継げるのでしょうか。とりあえず、報告ならない報告まで。(S)